肥満症治療剤「BELVIQ®」長期心血管疾患アウトカム試験結果について欧州心臓病学会において発表するとともにthe New England Journal of Medicineに掲載

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、肥満症治療剤lorcaserin hydrochloride(一般名、米国製品名「BELVIQ®」、以下 「BELVIQ」)に関する、市販後臨床試験として実施した心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA-TIMI 61試験)の結果について、ドイツ・ミュンヘンで開催されている欧州心臓病学会総会(ECS Congress 2018)において口頭発表するとともに、世界的に最も権威のある医学雑誌の一つである the New England Journal of Medicineに掲載されたことをお知らせします1。「BELVIQ」は、長期の心疾患アウトカム試験において、心血管イベントのリスクを増加させないことが確認された初めての体重管理を目的とする治療薬となります。

 

 本試験は、TIMI (Thrombolysis in Myocardial Infarction) Study Groupとの提携のもと、米国を含む8カ国、400施設以上で実施された、肥満症治療に関する最大規模の心血管疾患アウトカム試験です。また、本試験は、米国食品医薬品局(FDA)の要求に基づく市販後臨床試験として実施されました。本試験では、過体重および肥満の成人患者様で、心血管疾患をすでに有している、もしくは心血管疾患のリスク因子を伴う2型糖尿病を有する方、合計12,000人を対象に、「BELVIQ」10mg錠またはプラセボ錠を1日2回長期(中央値3.3年間)投与し、主要な安全性評価として、主要心血管イベント(MACE: Major Adverse Cardiovascular Events、心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生頻度を評価しました。

 本試験に登録された患者様の平均年齢は64歳、平均Body Mass Index(BMI)は、35 kg/m2でした。また、ベースライン(投与前時点)において、患者様の57%は2型糖尿病、90%は高血圧、94%は脂質異常、20%は慢性腎臓病、約75%がアテローム動脈硬化性心血管疾患でした。

 

 本試験終了時のMACEの発生数は「BELVIQ」投与群で364人/6,000人(発生率として2.0%/年)、プラセボ投与群で369人/6,000人(発生率として2.1%/年)であり、「BELVIQ」投与群は、プラセボ投与群と比較してMACEの発生頻度を増加させず(ハザード比 0.99、95%信頼区間:CI = 0.85-1.14,非劣性マージン:1.4)、主要な安全性評価の目的である統計学的非劣性を達成しました。主要な安全性評価目的を達成したことを受け、主要な有効性評価として、MACEに「入院を要する不安定狭心症もしくは心不全、または冠血行再建術」項目を加えたMACE+について評価しました。その結果MACE+の発生数は「BELVIQ」投与群で707人/6,000人(発生率として4.1%/年)、プラセボ投与群で727人/6,000人(発生率として4.2%/年)であり、統計学的優越性は示されませんでしたが(p = 0.55)、統計学的非劣性が確認されました(ハザード比 0.97、95%CI = 0.87-1.07,非劣性マージン:1.4)。

 

 また、探索的評価項目である有効性について、1年間投与による5%以上の体重減少は「BELVIQ」投与群では39%、プラセボ投与群では17%、10%以上の体重減少は、「BELVIQ」投与群では15%、プラセボ投与群では5%であり、それぞれ「BELVIQ」投与群がプラセボ投与群に比較して有意な体重減少を示しました(5%以上の体重減少: 名目p<0.001、10%以上の体重減少: 名目p<0.001)。

 ベースラインからの体重変化は、「BELVIQ」投与群では平均4.2kgの減少、プラセボ投与群で平均1.4kgの減少となり、「BELVIQ」投与群ではプラセボ投与群と比較して平均2.8kgの実質的体重減少をもたらしました(名目p<0.001)。

 

 さらに、併存疾患に対する標準治療に加え、「BELVIQ」投与(1年間)を行うことで、それぞれの併存疾患指標について、収縮期血圧(プラセボとの差: -0.9mmHg)、拡張期血圧(同: -0.8mmHg)、心拍数(同: -1.0拍/分)、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール(同: -1.2mg/dL)、中性脂肪(同: -11.7mg/dL)および非高比重リポ蛋白(非HDL)コレステロール(同: -2.6mg/dL)と改善が見られました。

 

 また、2型糖尿病患者ではヘモグロビンA1C(HBA1c)が減少し(ベースラインからのプラセボとの差: -0.3%)、糖尿病発症前段階からの糖尿病新規発病の割合が低下しました(発病率: 「BELVIQ」投与群:3.1%/年、プラセボ投与群:3.8%/年)。

 

 「BELVIQ」投与群とプラセボ投与群の間で重篤な有害事象の発生率に有意な差は見られませんでした(「BELVIQ」投与群31%、プラセボ投与群32%)。本試験における「BELVIQ」の全体的な安全性プロファイルは、承認されている米国の添付文書の内容と一貫性があり、最も多く報告された有害事象はめまい、疲労、頭痛、悪心、下痢でした。また、試験中止に至る有害事象は「BELVIQ」投与群でより多く発現し(「BELVIQ」投与群7.2%、プラセボ投与群3.7%)、めまい、疲労、頭痛、下痢、悪心が最も多く報告されました。

 

 本試験のさらなる解析結果についてはドイツ、ベルリンで開催される欧州糖尿病学会(European Association for Study of Diabetes)年次総会において10月4日(現地時間)に発表予定です。

 

 当社は、本試験で得られた「BELVIQ」の情報を通じて、引き続き、アンメット・メディカル・ニーズの充足と、患者様とそのご家族のベネフィット向上に貢献してまいります。

 

以上

 

<参考資料> 

1. Lorcaserin hydrochloride (一般名、米国製品名「BELVIQ」、1日1回製剤米国製品名「BELVIQ XR」)について 
 LorcaserinはArena Pharmaceuticals, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、CEO:Amit D. Munshi、以下 アリーナ社)創製の新規化合物であり、選択的に脳内のセロトニン2C受容体を刺激することにより摂食を抑制し、満腹感を促進すると考えられています。本剤は、米国において、Body Mass Index(BMI)が30 kg/m2以上、あるいは少なくとも1つ以上の体重に関連する合併症を有するBMIが27 kg/m2以上の成人患者様の体重管理を目的とした食事療法と運動療法に対する補助療法として、2012年6月に米国食品医薬品局(FDA)より承認され、米国麻薬取締局によるスケジューリング指定を経て、2013年6月に「BELVIQ」の製品名で発売されました。また、韓国においては、2015年から代理店より販売されています。2016年7月にメキシコにおいて、12月にはブラジルにおいて、米国と同様、肥満症に係る適応の承認を取得しています。

 さらに、2016年7月には、米国において、1日2回投与の「BELVIQ」錠剤に対して、患者様の服薬利便性の向上をめざして1日1回投与が可能となるよう設計された徐放性製剤「BELVIQ XR」の承認を取得しました。 
 加えて、当社は、2017年1月にアリーナ社より、「BELVIQ」の開発および販売に関するすべての権利を取得しました。 
 本剤の複数の臨床第Ⅲ相試験における主な有害事象は、糖尿病を合併しない肥満症では、頭痛、めまい、疲労、嘔吐、口内乾燥、便秘であり、糖尿病を有する肥満症では、低血糖症、頭痛、背部痛、咳嗽、疲労でした。米国における本剤の重要な安全性情報(ISI)を含む詳細は「BELVIQ」ウェブサイトをご参照ください。http://www.belviq.com(英語のみ)

  

2. 心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA-TIMI61試験)について 
 米国などで実施したCAMELLIA(Cardiovascular And Metabolic Effects of Lorcaserin In Overweight And Obese Patients)-TIMI 61試験は、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、臨床第Ⅲb/Ⅳ相試験であり、肥満症治療に関して最も規模の大きい試験です。本試験の主要目的は、主要心血管イベント(MACE: Major Adverse Cardiovascular Events、心血管死、心筋梗塞、脳卒中)による安全性の評価でした。主要目的を達成した場合に、主要有効性評価として、MACEに入院を要する不安定狭心症もしくは心不全、または冠血行再建術を加えたMACE+の評価を行うこととしていました。副次評価目的として、境界型糖尿病(2型糖尿病発症前で血糖パラメータが正常値を超えている)を有している、もしくは糖尿病を有していない患者様における2型糖尿病への移行の遅延または防止の可能性および2型糖尿病を有する患者様における血糖コントロールの改善を評価しました。

 

3. TIMI Study Groupについて  
 TIMI (Thrombolysis in Myocardial Infarction) Study Groupは、30年以上にわたり心血管系の臨床試験をリードしてきた米国ニューイングランド州のBrighamand and Women’s Hospital (BWH)に拠点を置く学術研究機関です。

 

4. The New England Journal of Medicineについて   
 The New England Journal of Medicine(NEJM)は、200年以上にわたる歴史を有し、世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の一つです。「2017 Journal Citation Reports®、Clarivate Analytics 2018」に基づく文献引用影響率(インパクトファクター)は、世界第一位です。

 

1  Bohula, E. A., Cardiovascular Safety of Lorcaserin in Overweight and Obese Patients, The New England Journal of Medicine, 2018