エーザイとMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.
「レンビマ®」(レンバチニブ)について、切除不能な肝細胞がんに対する一次治療薬として米国FDAより承認を取得

エーザイ株式会社
Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)は、このたび、マルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、単剤における「切除不能な肝細胞がん」に対する一次治療薬として、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)より承認を取得したことをお知らせします。本承認は、「レンビマ」の肝細胞がんに係る適応として、2018年3月の日本での承認に続き2番目の承認取得です。また、米国において、切除不能な肝細胞がんの全身化学療法の一次治療薬として、約10年ぶりの新たな治療薬の創出となります。

 本承認は、「レンビマ」の全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様を対象とした、臨床第Ⅲ相試験(REFLECT試験/304試験)の結果に基づいています。本試験において、「レンビマ」は、全生存期間(Overall Survival:OS)*1について、ソラフェニブに対して統計学的に非劣性を証明しました。また、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)*2および奏効率(Objective Response Rate:   ORR)*3について、ソラフェニブに対して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。

 REFLECT試験におけるOSについて、「レンビマ」は、ソラフェニブに対して統計学的な非劣性を証明し、主要評価項目を達成しました。OS(中央値)について、「レンビマ」群は13.6カ月に対し、ソラフェニブ群は12.3カ月でした(ハザード比 0.92(95%信頼区間:CI = 0.79-1.06))。本解析は、OSイベントが「レンビマ」群351人、ソラフェニブ群350人に達した時点で実施されました。また、有効性に関する副次評価項目に関しては、独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、PFS(中央値)は「レンビマ」群7.3カ月、ソラフェニブ群3.6カ月(ハザード比 0.64 (95%CI = 0.55-0.75)、P<0.001)であり、またORRは「レンビマ」群41%に対し、ソラフェニブ群12%(P<0.001)となり、「レンビマ」はソラフェニブに対し、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。

 米国の添付文書に記載された、本試験の「レンビマ」投与群で高頻度に確認された有害事象(20%以上)は、高血圧、疲労、下痢、食欲減退、関節痛、体重減少、腹痛、手掌・足底発赤知覚不全症候群、蛋白尿、発声障害、出血、甲状腺機能低下、悪心でした。重篤な有害事象(2%以上)は、肝性脳症(5%)、肝不全(3%)、腹水(3%)、食欲減退(2%)でした。 
 ソラフェニブ投与群で高頻度に確認された有害事象(20%以上)は、手掌・足底発赤知覚不全症候群、下痢、疲労、高血圧、腹痛、食欲減退、発疹、体重減少、関節痛でした。また、重篤な有害事象(2%以上)は、腹水(2%)、腹痛(2%)でした。

Memorial Sloan Kettering Cancer Centerのmedical oncologistであるDr. Ghassan Abou-Alfaは、「切除不能な肝細胞がんは、過去10年以上にわたり、一次療法としての全身化学療法の選択肢が限られており、治療が難しい疾患でした。REFLECT試験は、切除不能な肝細胞がんを対象とした実薬対照試験として、ポジティブな結果を示した初めての臨床第Ⅲ相試験です。REFLECT試験において得られた有効性と安全性に関する情報は、肝細胞がんの患者様とそのご家族に加え、肝細胞がんの治療に携わっている腫瘍専門医や医療従事者の皆様にとって、重要な知見となることでしょう。」と述べています。

 肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で年間約75万人が亡くなり、毎年約78万人が肝がんと診断されています。肝細胞がんは肝がん全体の85~90%を占めており、切除不能な肝細胞がんは、治療方法が限られており、予後が極めて悪く、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患です。

 米国において、マルチキナーゼ阻害剤の「レンビマ」は、2015年2月に「局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん」に係る適応で最初に承認され、2016年5月にはエベロリムスとの併用療法により、「血管新生阻害薬の前治療歴を有する進行性腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法」の適応で承認を取得しました。エーザイとMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.は、2018年6月に「レンビマ」の米国での共同販促を開始しています。
 「レンビマ」は全世界50カ国以上で承認されており、今までに1万人を超える患者様に、「レンビマ」が処方されています。また、日本では2018年3月の肝細胞がんに係る適応での承認取得以来、本適応で約3,000人の患者様に「レンビマ」が処方されました。

*1全生存期間(OS): 死因ががんによるものかに関わらず、がんの治療が行われた時点から、あらゆる死因による死亡までの期間
*2無増悪生存期間(PFS): がんの治療が行われた時点から、あらゆるイベントによる死亡または腫瘍の増悪が、客観的に確認されるまでの期間
*3奏効率(ORR): 固形がんの抗腫瘍効果の画像評価において、完全奏効(腫瘍が完全に消失した状態)と部分奏効(腫瘍の大きさの和が30%以上縮小した状態)を合わせた割合

 以上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

    FAX:03-3811-3077

<参考資料> 

1. 「レンビマ®」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について
 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 現在、本剤は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など45カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。

 また、肝細胞がんに係る適応について、米国のほか、日本で承認を取得しています。欧州 (2017年7月)、中国(同年10月)、および台湾(同年12月)などにおいて承認申請中です。

 切除不能な肝細胞がんの患者様に対して「レンビマ」は、成人には体重にあわせて、体重60 kg 以上の場合は12 mg、体重60 kg 未満の場合は8 mg が投与されます。なお、推奨投与量および用量の増減については添付文書に記載されています。

     

2. エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について  
 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.はレンビマのグローバルな共同開発および共同販促をおこなう戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、レンビマについて、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における共同開発、共同販促を行います。併用療法については、既に実施している臨床試験に加え、6種のがん(子宮内膜がん、非小細胞肺がん、肝細胞がん、頭頸部がん、膀胱がん、メラノーマ)における11の適応取得を目的とした臨床試験、複数のがんに対するバスケット型臨床試験を共同して同時並行で実施します。

 

3. REFLECT(304)試験について    
 REFLECT試験は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様954人を対象とした、「レンビマ」と標準治療薬であるソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。本試験は20カ国、154施設で実施されました。本試験では、954人の患者様が各投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、「レンビマ」群(478人)では、体重によって1日1回12mg(60㎏以上)または8mg(60㎏未満)が投与され、ソラフェニブ群(476人)では1回400mgを1日2回投与されました。投与は病勢進行あるいは忍容できない有害事象の発現まで継続されました。本試験は、主要評価項目をOSとし、非劣性の検証を目的に実施しました。 

 また、盲検下での独立画像判定において、副次評価項目であるPFSおよびORRについて、「レンビマ」群の優越性が示され、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が認められました。
 PFS(中央値)について、盲検下での独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、「レンビマ」群7.3カ月、ソラフェニブ群3.6カ月(ハザード比 0.64 (95%CI = 0.55-0.75)、P<0.001)でした。RECIST1.1による評価において、「レンビマ」群7.3カ月、ソラフェニブ群3.6カ月(ハザード比 0.65 (95%CI = 0.56-0.77)、P<0.001)と、「レンビマ」群はソラフェニブ群に対してPFS(中央値)を2倍に延長しました。
 ORRについて、盲検下での独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、「レンビマ」群41%(95%CI = 36-45)(完全奏効2.1%(n=10)、部分奏効38.5%(n=184))に対しソラフェニブ群12%(95%CI = 10-16)(完全奏効0.8%(n=4)、部分奏効11.6%(n=55))であり、「レンビマ」群はソラフェニブ群に対してORRを約3.5倍近く改善しました。RECIST1.1による評価では、「レンビマ」群19%(95%CI = 15-22)に対しソラフェニブ群7%(95%CI = 4-9)でした。
 さらにTTP(中央値)について、、盲検下での独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、「レンビマ」群7.4カ月、ソラフェニブ群3.7カ月(ハザード比 0.60 (95%CI = 0.51-0.71)、P<0.0001)であり、RECIST1.1による評価において、「レンビマ」群7.4カ月、ソラフェニブ群3.7カ月(ハザード比 0.61 (95%CI = 0.51-0.72)、P<0.0001)であり、「レンビマ」群はソラフェニブ群に対してPFS(中央値)を2倍に延長しました。
 REFLECT試験の詳細については、The Lancet 2018, 391 (10126), 1163-1173 (電子版2018年2月9日掲載) に報告しています。

  

4. 肝細胞がんについて    
 肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で年間約75万人が亡くなり、毎年約78万人が肝がんと診断されています。地域差も大きく、中国、日本を含むアジアに新規患者様の約80%が集中しています。肝細胞がんは、肝がんにおいて最も発生頻度が高く、肝がん全体の85~90%を占めています。肝細胞がんは慢性肝疾患、特に肝硬変と関連しており、発生原因として、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスが挙げられますが、最近の調査では非B型非C型肝細胞がんの増加が報告されています。肝細胞がんの第一治療選択は外科手術ですが、肝臓移植、外科的切除、腫瘍アブレーション(ラジオ波焼灼法または凍結療法など)を含む根治的な治療介入、または肝動脈化学塞栓療法(TACE)に適さない切除不能な肝細胞がんの場合は、治療薬が限られており、予後が極めて悪いことが知られています。

 

 

 

1  GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/