肥満症治療剤「BELVIQ®」大規模な心血管疾患アウトカム試験にて良好なトップライン結果を取得

  • ●過体重および肥満患者様12,000人において心血管イベントのリスクが増加しないことを確認
  • ●投与前において2型糖尿病を発症していない患者様の2型糖尿病への移行を抑制
  • ●複数の心血管リスク因子(血圧、脂質、血糖、腎機能)を軽減

 

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、肥満症治療剤lorcaserin hydrochloride(一般名、米国製品名「BELVIQ®」、以下 BELVIQ)について、安全性評価を主要目的とする市販後臨床試験として患者様12,000人を対象に実施した心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA-TIMI 61試験)のトップライン結果を取得しましたのでお知らせします。BELVIQは、米国において、成人患者様*の体重管理を目的とした食事療法と運動療法に対する補助療法として、2012年6月に米国食品医薬品局(FDA)より承認され、2013年6月に発売されました。

 

 本試験は、TIMI (Thrombolysis in Myocardial Infarction) Study Groupとの提携のもと、米国を含む8カ国、400施設以上で実施された、肥満症治療に関する最大規模の心血管疾患アウトカム試験です。本試験では、主要安全性評価目的として、過体重および肥満の成人患者様で、心血管疾患をすでに有している、もしくは心血管疾患のリスク因子を伴う2型糖尿病を有する方を対象に、BELVIQ 10mg錠1錠を1日2回長期投与し、主要心血管イベント(MACE: Major Adverse Cardiovascular Events、心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生頻度を評価しました。

 

 本試験の結果、BELVIQの長期投与群は、プラセボ投与群と比較してMACEの発生頻度が増加しないことが確認され、主要安全性評価目的を達成しました。BELVIQは、体重管理を目的とする治療薬として、長期にわたる心血管疾患アウトカム試験において安全性目的を達成した、最初の薬剤となります。

 

 本試験において、主要安全性評価目的を達成したことを受け、「入院を要する不安定狭心症もしくは心不全、または冠血行再建術」をMACEに加えたMACE+の発生頻度についても主要有効性評価目的として評価しました。BELVIQ投与群におけるMACE+の発生頻度は、プラセボ投与群と比較して統計学的優越性は示しませんでしたが、統計学的非劣性が確認されました。

 

 一方、本試験においては他に、複数の心血管リスク因子に対するBELVIQの効果についても評価しました。BELVIQ群は血圧、脂質、血糖、腎機能に関する値について有意な改善を示すとともに、2型糖尿病を発症していない患者様における2型糖尿病への移行の抑制も確認されました。さらに、BELVIQ群は、2型糖尿病および閉塞性睡眠時無呼吸症を有する部分集団において、プラセボ群と比較して長期的な体重減少を示しました。

 

 なお、本試験を通して確認されたBELVIQの安全性プロファイルは、承認取得時と同様であり、最も多く報告されている有害事象は、めまい、尿路感染症および疲労でした。

 

 エーザイ・ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.は、「肥満症は世界的にも大きな問題であり、心臓病や高血圧、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症など深刻な疾患の発症リスクと関連があります。この強固なグローバル試験の結果は、医療従事者や特に心血管疾患や肥満症に伴う合併症を有する患者様に重要な情報をもたらし、新たな治療の選択肢につながると考えています」と述べています。

 

 Brigham and Women’s Hospital、TIMI Study Group のChairmanであるMarc Sabatine, M.D., M.P.H.は、「今回のCAMELLIA-TIMI 61試験は、心血管イベント発生のリスクが高い患者様における、心血管代謝に対するBELVIQの安全性と有効性を厳密に評価する試験です。私たちは、関連学会において本試験結果の詳細を発表することを楽しみにしています」と述べています。

 

 本試験の詳細な解析結果については、2018年8月25日~29日にドイツ、ミュンヘンで開催される欧州心臓病学会(European Society of Cardiology Congress 2018)において8月26日(現地時間)に、10月1日~5日にドイツ、ベルリンで開催される欧州糖尿病学会(European Association for Study of Diabetes 2018)において10月4日(現地時間)に発表予定です。

 

 本試験の結果を受け、当社は、今後、添付文書の改訂等についてFDAと協議していきます。当社は、本試験で得られた「BELVIQ」の情報を通じて、引き続き、アンメット・メディカル・ニーズの充足と、患者様とそのご家族のベネフィット向上に貢献してまいります。

 

*Body Mass Index(BMI)が30 kg/m2以上、あるいは少なくとも1つ以上の体重に関連する合併症を有するBMIが27 kg/m2以上の成人患者様

  

以上

<参考資料>

1. Lorcaserin hydrochloride (一般名、米国製品名「BELVIQ」、1日1回製剤米国製品名「BELVIQ XR」)について

LorcaserinはArena Pharmaceuticals, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、CEO:Amit D. Munshi、以下 アリーナ社)創製の新規化合物であり、選択的に脳内のセロトニン2C受容体を刺激することにより摂食を抑制し、満腹感を促進すると考えられています。本剤は、米国において、Body Mass Index(BMI)が30 kg/m2以上、あるいは少なくとも1つ以上の体重に関連する合併症を有するBMIが27 kg/m2以上の成人患者様の体重管理を目的とした食事療法と運動療法に対する補助療法として、2012年6月に米国食品医薬品局(FDA)より承認され、米国麻薬取締局によるスケジューリング指定を経て、2013年6月に「BELVIQ」の製品名で発売されました。また、韓国においては、2015年から代理店より販売されています。2016年7月にメキシコにおいて、12月にはブラジルにおいて、米国と同様、肥満症に係る適応の承認を取得しています。 

さらに、2016年7月には、米国において、1日2回投与の「BELVIQ」錠剤に対して、患者様の服薬利便性の向上をめざして1日1回投与が可能となるよう設計された徐放性製剤「BELVIQ XR」の承認を取得しました。
 加えて、当社は、2017年1月にアリーナ社より、「BELVIQ」の開発および販売に関するすべての権利を取得しました。
 本剤の複数の臨床第Ⅲ相試験における主な有害事象は、糖尿病を合併しない肥満症では、頭痛、めまい、疲労、嘔吐、口内乾燥、便秘であり、糖尿病を有する肥満症では、低血糖症、頭痛、背部痛、咳嗽、疲労でした。米国における本剤の重要な安全性情報(ISI)を含む詳細はBELVIQウェブサイトをご参照ください。https://www.belviq.com(英語のみ)

2. 心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA-TIMI61試験)について

米国などで実施したCAMELLIA(Cardiovascular And Metabolic Effects of Lorcaserin In Overweight And Obese Patients)-TIMI 61試験は、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、臨床第Ⅲb/Ⅳ相試験であり、肥満症治療に関して最も規模の大きい試験です。本試験の主要目的は、主要心血管イベント(MACE: Major Adverse Cardiovascular Events、心血管死、心筋梗塞、脳卒中)による安全性の評価でした。主要目的を達成した場合に、主要有効性評価として、MACEに入院を要する不安定狭心症もしくは心不全、または冠血行再建術を加えたMACE+の評価を行うこととしていました。副次評価目的として、境界型糖尿病(2型糖尿病発症前で血糖パラメータが正常値を超えている)を有している、もしくは糖尿病を有していない患者様における2型糖尿病への移行の遅延または防止の可能性および2型糖尿病を有する患者様における血糖コントロールの改善を評価しました。

3. TIMI Study Groupについて

TIMI (Thrombolysis in Myocardial Infarction) Study Groupは、30年以上にわたり心血管系の臨床試験をリードしてきた米国ニューイングランド州のBrigham and Women’s Hospital (BWH)に拠点を置く学術研究機関です。