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- 2018年6月13日
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、当社の研究子会社である株式会社カン研究所(本社:兵庫県、以下 カン研究所)を代表とする研究プロジェクト「新規の核酸合成とデリバリー技術を用いた核酸創薬研究」について、カン研究所と6つの共同研究機関*との間で産学官共同研究開発契約を締結しましたのでお知らせします。本研究プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に採択されています。当社は、産学官の連携によるイノベーションの創出を重要な取り組みと考え、現在、複数のプロジェクトを進めており、今回のプロジェクトでは、産学官連携による日本発の核酸医薬品創出をめざします。
核酸医薬品は、遺伝情報をつかさどるデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)あるいは化学修飾された核酸を基本骨格とした、低分子医薬品と同様に化学合成で製造する医薬品です。従来の医薬品では標的とすることが難しかった細胞内分子(遺伝子)に対して高い特異性をもって直接作用することが可能であり、多くの疾患領域での創薬が期待されている一方、毒性回避技術や核酸の標的細胞に対するデリバリー技術の確立が必要とされています。
本研究プロジェクトでは、当社を中心に開発した革新的核酸デリバリー技術に、大阪大学が開発した人工核酸合成技術、医薬基盤・健康・栄養研究所のスクリーニング技術、株式会社ジーンデザインの保有する核酸製造技術を結集し、独自の核酸医薬創出プラットフォームの構築と、そのプラットフォームを用いた安全性と有効性に優れた難治性のがんなどに対する核酸医薬品候補の創出をめざします。当社とカン研究所および東京女子医科大学、新潟大学と国立がん研究センター東病院が協働して非臨床試験ならびに臨床試験を実施します。
当社が参画する産学官連携の主な取り組みとして、慶應義塾大学と共同で設立した産医連携拠点「エーザイ・慶應義塾大学 認知症イノベーションラボ(EKID)」(所在: 同大学信濃町キャンパス内)において、認知症の次世代治療薬・予防薬の開発につながる新規創薬標的候補の同定と検証をめざすプロジェクトが、同じくAMEDによるCiCLE事業に採択されています。また、当社の消化器事業子会社であるEAファーマ株式会社を代表とするクローン病を対象とした日本発バイオ医薬品と新規薬効予測マーカー開発の取り組みについても、同CiCLE事業に採択されています。さらに、筑波大学とEAファーマ株式会社による低分子化合物とバイオマーカーを用いた炎症性腸疾患の治療に対する取り組みが、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の助成による産学共同実用化開発事業(NexTEP)に採択されています。
当社は、産学官連携に基づく新たなイノベーションを創出し、アンメット・メディカル・ニーズを充足することにより、患者様とそのご家族のベネフィット向上へ貢献してまいります。
*共同研究機関:
国立大学法人大阪大学(所在地:大阪府)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(所在地:大阪府)
株式会社ジーンデザイン(本社:大阪府)
東京女子医科大学(所在地:東京都)
国立大学法人新潟大学(所在地:新潟県)
国立がん研究センター東病院(所在地:千葉県)
以上
<参考資料>
1. CiCLEについて
AMEDによるCiCLEは、産学官連携により、我が国の力を結集し、医療現場ニーズに的確に対応する研究開発の実施や創薬等の実用化の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成、医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が強力に促進される環境の創出を推進することを目的とした事業です。
2. 核酸医薬品について
核酸医薬品は、遺伝情報をつかさどるデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)あるいは化学修飾された核酸を基本骨格とし、低分子医薬品と同様に化学合成で製造する医薬品です。従来の医薬品では標的とすることが難しかった細胞内分子(遺伝子)に対して高い特性をもって直接作用することが可能です。一方、様々な核酸医薬品をより多く開発するためには、毒性回避技術や核酸の標的細胞に対するデリバリー技術の確立が必要とされています。
核酸医薬品では、構造や標的、作用機序の違いから様々な分類がされており、RNAを標的とするアンチセンス医薬および細胞外タンパク質と結合して機能を阻害するアプタマー医薬において、承認済(日本を含む)の医薬品があります。
3. 株式会社カン研究所について
株式会社カン研究所は、エーザイ株式会社の100%出資により設立された研究開発子会社です。真にオリジナルなサイエンスからアンメット・メディカル・ニーズを充足するため、新しい疾患治療コンセプトに基づく創薬をめざす研究グループです。神経変性疾患、がんの再発・転移、難治性免疫疾患を重点領域として、「創薬に繋がる統合細胞生物学研究(Integrative Cell Biology for Medicine)」を強みに、疾患の原因となる細胞の特異性・分子の局在に着目することで疾患メカニズムと治療法の探索をめざす創薬研究活動に取り組んでいます。2006年より神戸医療産業都市に進出、2014年に新本社研究所を新設し、社内外の研究グループ・研究者等とのオープンイノベーションを展開しています。カン研究所は、世界初の抗フラクタルカイン抗体E6011を創出し、現在、関節リウマチやクローン病などを対象とした臨床試験を実施中です。