「レンビマ®」と「キイトルーダ®」との併用療法について
4がん腫に対する最新の研究成果を米国臨床腫瘍学会年次総会において発表

  • ●切除不能な肝細胞がん、および頭頸部扁平上皮がんに対する「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法による初めてのデータを発表(切除不能な肝細胞がんに対してはチロシンキナーゼ阻害剤と腫瘍免疫療法による初の全身併用療法をめざす)
    ●進行性腎細胞がん、および進行性子宮内膜がんに対する「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法の抗腫瘍効果と安全性に関するアップデートデータを発表 
    ●進行性腎細胞がんに対する「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法は、米国FDAよりブレークスルーセラピーに指定(2017年12月)
    ●進行性腎細胞がんおよび進行性子宮内膜がんに対する「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法の臨床第Ⅲ相試験が進行中


エーザイ株式会社
Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)は、このたび、エーザイ創製の経口キナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)とMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法について、4がん腫に対する臨床試験の最新データおよび解析結果を発表することをお知らせします。本最新データは、6月1~5日に米国シカゴで開催されている「第54回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology: ASCO)年次総会」において発表されます(4がん腫:切除不能肝細胞がん(抄録番号4076)、頭頸部扁平上皮がん(同6016)、進行性腎細胞がん(同4560)、進行性子宮内膜がん(同5596、5597))。「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法について、現時点で承認された適応はありません。

エーザイ オンコロジービジネスグループのチーフメディカルオフィサー兼チーフクリニカルオフィサーのAlton, Kremer, MD, PhDは、「私たちは、今回の「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法によるデータを受け、治療が難しく、新たな治療選択肢の登場が望まれている特定のがん腫に対する臨床試験および研究を通じ、がん患者様の様々なヘルスケアニーズ充足に向けたコミットメントをより一層強めたいと思います。私たちは、「レンビマ」と「キイトルーダ」併用療法に関する臨床試験を通じて観察された活性に関わる最新のデータ、および進行性子宮内膜がんに対する併用療法におけるトランスレーショナル研究の成果について紹介できることを嬉しく思っています。」と述べています。

Merck & Co, Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A. のシニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynes博士は、「ASCOで発表したデータについて、「レンビマ」と「キイトルーダ」併用療法の科学的根拠をサポートする奏効率と安全性プロファイルが引き続き得られたことに自信を深めています。これらの知見は、多くのがん腫に対する本併用療法の可能性を示すエビデンスをさらに強化するとともに、エーザイとの提携による戦略の重要性を示すものです。」と述べています。

1.切除不能な肝細胞がん患者様を対象としたレンバチニブとペムブロリズマブ併用による臨床第Ib相試験(116試験/KEYNOTE-524試験) 抄録番号:4076

本試験は、切除不能な肝細胞がんに対する「レンビマ」と「キイトルーダ」との併用療法に関する安全性と有効性を評価する、非盲検、単群、多施設共同臨床第Ⅰb相試験(116試験/KEYNOTE-524試験)です。「レンビマ」は体重によって12mg(60㎏以上)または8mg(60㎏未満)を1日1回経口投与し、「キイトルーダ」は3週ごと200mgを静脈内投与しました。切除不能な肝細胞がんのステージについては、BCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer)病期分類がステージB (肝動脈化学塞栓療法が不応であること)、またはステージC、Child-Pugh分類がクラスAおよびECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)の全身状態のステータスが1以下の患者様を対象としました。主要評価項目として安全性を、副次および探索的評価項目として、全生存期間(Overall Survival: OS)、mRECIST(固形がんに対する効果を判定する際に用いられる評価基準)に基づく奏効率(Objective Response Rate: ORR)、無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)および無増悪期間(Time To Progression: TTP)などを評価しました。完全奏効(Complete Response: CR)または部分奏効(Partial Response: PR)の確定は、最初に奏効が認められた時点から4週間以上経過した後の評価によってなされました。パート1では、適切な治療方法がない患者様を対象に、治療第1サイクルにおける、用量制限毒性を含む忍容性を評価しました。忍容性の確認後、パート2では、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様が登録されました。本拡大コホートにおいては、ORRおよび奏効期間(Duration of Response: DOR)をmRECISTにより評価しました。

本試験には2018年3月22日時点で30人の患者様が登録されています(パート1に6人、パート2に24人)。用量制限毒性は報告されませんでした。本試験において、有害事象により4人の患者様で投与が中断されました。本試験で報告された主な有害事象(上位4つ)は、食欲不振(53.3%)、高血圧(53.3%)、下痢(43.3%)、疲労(40.0%)でした。腫瘍の画像評価はmRECISTに基づき主治医により判定されました。また、データカットオフ時点におけるORR(最初の奏効を確認後少なくとも4週間経過後の二度目の画像診断が未実施のCRとPRの症例を含む)は42.3%(95%信頼区間:CI=23.4-63.1)でした。二度目の画像診断による確定ORRは26.9%(95%CI=11.6-47.8)でした。PFS(中央値)は9.7カ月(95%CI=5.55-推定不能)でした。最良総合効果(Best Overall Response: BOR)が病勢進行(Progressive Disease: PD)の症例は全く認められませんでした。23人の患者様(パート1に3人、パート2に20人)については、現在も治療継続中です。本試験における安全性と有効性に関する良好な結果に基づき、パート2拡張コホートにおいて、プロトコルを修正し、患者様登録を約94人に拡大しました。

 2.頭頸部扁平上皮がん、腎細胞がん、子宮内膜がんを対象としたレンバチニブとペムブロリズマブ併用による臨床第Ib/Ⅱ相試験(111試験/KEYNOTE-146試験)ならびにバイオマーカー研究および非臨床トランスレーショナル研究のレンバチニブとペムブロリズマブ併用療法の理論的根拠

本試験は、特定の固形がんの患者様を対象とした、「レンビマ」と「キイトルーダ」併用療法の安全性と有効性を評価する、多施設共同、非盲検、単群のバスケット型臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験(111試験/KEYNOTE-146試験)です。「レンビマ」は1日1回20mgを経口投与し、「キイトルーダ」は3週ごと200mgを静脈内投与しました。PD-L1の発現状態によらず患者様登録が行われました。第Ⅰb相パートでは、併用療法の最大耐性量の決定を主要目的とし、第Ⅱ相パートの主要評価項目は、腫瘍免疫療法の効果判定基準であるimmune-related RECIST(irRECIST)を用いた主治医判定により、投与後24週時点のORR(ORRweek24)を評価しました。副次評価項目は、ORR、PFS、そしてCRおよびPRの基準を満たした患者様に関してDORを評価しました。

1)頭頸部扁平上皮がん患者様を対象としたレンバチニブとペムブロリズマブ併用療法における臨床第Ib/II相試験 抄録番号:6016

今回の発表では、2017年12月1日のデータカットオフ時点における、測定可能で進行性の頭頸部扁平上皮がんとして診断され、かつ試験登録時のECOGステータスが1以下であった22人の患者様を解析対象として分析を行った結果について報告しました。90.9%の患者様は抗がん剤による前治療歴を有していました。
 データカットオフ時の画像判定について、irRECISTを用いて評価しました。主治医判定によるORRweek24は36.4%(95%CI = 17.2-59.3)でした。ORRは40.9%(95%CI = 20.7—63.6)であり(1例のCRならびに8例のPRから成る)、12カ月時点のPFSの割合は41.9%(95%CI=17.6-64.7)でした。BORがPDの症例は全く認められませんでした。
 薬剤投与群におけるグレード3または4の有害事象は72.7%の患者様に観察されました(グレード4は4.5%)。薬剤投与群において高頻度に観察された有害事象(上位6つ)は、疲労(50.0%)、高血圧(40.9%)、下痢(36.4%)、食欲減退(31.8%)、口腔咽頭痛(31.8%)、口内炎(31.8%)でした。
 本試験では有望な臨床活性が確認され、頭頸部扁平上皮がんに対する本併用療法のさらなる評価が支持される結果となりました。

2)腎細胞がん患者様を対象としたレンバチニブとペムブロリズマブ併用療法の最新結果 抄録番号:4560

本コホートでは、転移性の淡明細胞型腎細胞がんとしてirRECISTによって測定可能な病巣を有する患者様30人が登録されました。irRECIST評価基準下での主治医判定により評価することに加え、本アップデートにおいては、irRECISTおよびRECIST1.1評価基準による独立画像判定でも評価が行われました。2017年12月1日のデータカットオフ時点において、irRECIST評価基準による主治医判定では、ORRは70.0%(95%CI:50.6-85.3)でした(ESMO2017発表時のORRweek24は63.3%(95%CI:43.9-80.1)でした)。DOR(中央値)は18.4カ月(95%CI=10.3-推定不能)、PFS(中央値)は未だ算定できませんでした(95%CI=11.6-推定不能)。
 irRECISTによる独立画像判定では、ORRは66.7%(95%CI=47.2-82.7)、でした。DOR(中央値)は未だ算定できませんでした(95%CI=14.9-推定不能)。PFS(中央値)は18.0カ月でした(95%CI=10.2-推定不能)。RECIST1.1でのORRはirRECISTによる判定と同じであり、DOR(中央値)は16.6カ月(95%CI=8.9-推定不能)、PFS(中央値)は18.0カ月(95%CI=9.6-推定不能)でした。
 薬剤投与群におけるグレード3または4の有害事象は73.3%の患者様(22人)に観察されました。有害事象による投与中断については8人(26.7%)観察されました。本併用療法において高頻度に観察された有害事象(上位5つ)は、下痢(83.3%)、疲労(73.3%)、甲状腺機能低下(70.0%)、口内炎(63.3%)、悪心(60.0%)でした。
 進行性腎細胞がん(第一選択治療)を対象とした、「レンビマ」と「キイトルーダ」併用療法、「レンビマ」とエベロリムス併用療法、およびスニチニブ単剤療法を比較する臨床第Ⅲ相試験が実施中です。(詳細はCLEAR試験、 NCT02811861、 clinicaltrials.govをご覧ください)

3)進行性子宮内膜がん患者様を対象としたレンバチニブとペムブロリズマブ併用療法の最新結果 抄録番号:5596

2017年12月15日時点において、腫瘍組織学的に確認された子宮内膜がんの患者様53人を対象とし、irRECIST判定基準での有効性および安全性に関する解析を行いました。患者様登録は、マイクロサテライト不安定性 (Microsatellite instability: MSI)およびミスマッチ修復 (Mismatch Repair: MMR) 遺伝子の状態によらず、高頻度MSIの患者様4人(7.5%)、マイクロサテライト安定性 (MSS)の患者様45人(85%)、MSIの状態不明の患者様4人(7.5%)でした。主治医判定によるORRweek24およびORRはいずれも39.6%(95%CI=26.5-54.0)でした。奏効はMSIの状態によらず認められ、すなわち、MSSの患者様では、ORRが35.6%[45人中16人](95%CI=21.9-51.2)であり、高頻度MSIのがん患者様ではORRが50%[4人中2人](95%CI=6.8-93.2)でした。
 副次評価項目は、独立画像判定により抗腫瘍効果を評価しました。ORRweek24は45.3%(95%CI=31.6-59.6)、ORRは47.2%(95%CI=33.3-61.4)であり、22例のPRおよび3例のCRが観察されました。主治医判定によるDORが6カ月以上の患者様は83.0%(95%CI=55.9-94.2)であり、12カ月以上の患者様は64.5%(95%CI=32.8-84.2)でした。DORの中央値には未だ達していません(95%CI=7.4-推定不能)。独立画像判定で評価した12カ月以上のDORは79.3%(95%CI=48.5-92.9)となり、これも未だ中央値には達していません(95%CI=5.8-推定不能)。PFS(中央値)は、主治医判定において、7.4カ月(95%CI=5.0-推定不能)でした。ほとんどの患者様において、MSIの状態またはPD-L1の発現状態にかかわらず、標的病変のベースラインからの最大変化率として腫瘍縮小効果が観察されました。
 グレード3(有害事象共通用語規準)の有害事象は37人(70%)で観察されましたが、グレード4の有害事象は観察されませんでした。有害事象による投与中断については5人(9%)で観察されました。薬剤投与群において高頻度に観察された有害事象(上位7つ)は、高血圧(59%)、疲労(55%)、下痢(51%)、甲状腺機能低下(47%)、食欲減退(40%)、悪心(38%)、口内炎(34%)でした。
 進行性子宮内膜がんを対象とした、無作為化、並行群間、グローバル臨床第Ⅲ相試験は現在進行中です。(詳細は309試験 / KEYNOTE-775試験、NCT03517449、clinicaltrials.govをご覧ください)

4)バイオマーカー研究の結果(進行性子宮内膜がんの臨床血清サンプルに基づく)および非臨床トランスレーショナル研究によるレンバチニブとペムブロリズマブ併用療法の理論的根拠について 抄録番号:5597

今回の発表では、111試験/KEYNOTE-146試験における、探索的バイオマーカー研究の結果が示されました。「レンビマ」と「キイトルーダ」併用治療を受けた進行性子宮内膜がんの患者様37人を対象に、ベースライン(治療前)、治療第1サイクルの15日目(C1D15)、および第2サイクルの1日目(C2D1)に採取した血清サンプルについて、41の血清バイオマーカー候補からなる血管新生因子ならびに免疫関連因子パネルアッセイを用いて探索的な分析を行いました。その結果、進行性子宮内膜がんの患者様を対象とした解析より、治療前と比べて治療後ではインターフェロン-γおよびインターフェロン-γ誘導性ケモカインを含む幾つかの血清バイオマーカーのレベルが増加しており、C2D1においてはその変化と腫瘍の薬剤への反応性が関連していることが示唆されました。
 加えて、自社非臨床研究において、PD-1/PD-L1阻害剤との併用に対する明確な根拠となる、「レンビマ」による免疫調節作用と抗腫瘍作用について検討しました。動物モデルを用いた非臨床研究より、まず「レンビマ」単剤療法において、腫瘍に局在する腫瘍関連マクロファージの減少が示唆され、さらに、免疫調節に関連するインターフェロンシグナル伝達経路に本併用療法が作用することで、各単剤療法よりも抗腫瘍活性が増強している可能性が示唆されています。
 これらの結果により「レンビマ」とPD-1/PD-L1阻害剤の併用における作用メカニズムに関して新たな知見がもたらされ、「レンビマ」と「キイトルーダ」併用療法における抗腫瘍活性の理論的根拠が示唆されました。

 以 上 

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

    FAX:03-3811-3077

<参考資料>

 

1. 「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について
 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、エーザイ創製の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。

 現在、本剤は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など40カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。

 さらに、日本において「根治切除不能な肝細胞がん」の適応を取得しています。肝細胞がんに係る適応について、日本以外には、米国・欧州 (2017年7月)、中国(同年10月)、および台湾(同年12月)などにおいて承認申請中です。


2. 「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)について
  
 「キイトルーダ」は、T細胞に主に発現する受容体であるPD-1と、腫瘍細胞に発現するそのリガンドPD-L1およびPD-L2の相互作用を阻害する抗体です。「キイトルーダ」はPD-1に結合し、この受容体とリガンドとの結合を阻害することによって、T細胞に生じたPD-1経路を介する抗腫瘍活性の抑制を解除します。

  

3. エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について  
 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.はレンビマのグローバルな共同開発および共同販促をおこなう戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、レンビマについて、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における共同開発、共同販促を行います。併用療法については、既に実施している臨床試験に加え、6種のがん(子宮内膜がん、非小細胞肺がん、肝細胞がん、頭頸部がん、膀胱がん、メラノーマ)における11の適応取得を目的とした臨床試験、6種のがんに対するバスケット型臨床試験を共同して同時並行で実施すべく、準備を進めています。子宮内膜がんについて、現時点で、承認された「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法の適応はありません。