抗てんかん剤「Fycompa®」、米国において小児てんかんに係る適応で承認申請を提出

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗てんかん剤「Fycompa®」(一般名:ペランパネル、日本製品名「フィコンパ®」)について、米国食品医薬品局(FDA)に対して、小児てんかんに係る適応拡大の追加申請を行ったことをお知らせします。

 本申請は、米国において、すでに承認されている12歳以上のてんかん患者様への単剤療法ならびに併用療法における部分発作(二次性全般化発作を含む)の適応の対象を、2歳以上の小児患者様まで拡大することをめざすものです。さらに本申請では、これまでに取得したデータから、2歳以上の小児患者様の強直間代発作に係る適応拡大の可能性についても追求します。

 

 「Fycompa」は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)ならびに強直間代発作に対する併用療法として、世界55カ国以上で承認を取得しています。また、米国では、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法での承認を取得しています。

 

 本申請は、臨床第Ⅲ相試験(311試験)の中間解析結果および臨床第Ⅱ相試験試験(232試験)の結果に基づいています。両試験では、「Fycompa」併用療法における安全性および有効性が、小児てんかんの患者様でも同様に得られることが示唆されました。

 311試験では、コントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかんの患者様(4歳以上12歳未満)を対象とし、他剤併用時における「Fycompa」の安全性、忍容性および暴露量と有効性の関係を評価しました。232試験では、小児てんかんの患者様(2歳以上12歳未満)を対象とし、他剤併用時における「Fycompa」の薬物動態、有効性および長期安全性を評価しました。

 

 なお、「Fycompa」の小児てんかんに係る適応については、FDAから小児臨床試験実施要請書(Written Request)を受理しており、本申請が受理されると、優先審査に指定される可能性があります。

 

 「Fycompa」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤であり、1日1回投与の錠剤です。本剤は、グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を高選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制します。

 

 てんかんの患者様数は、米国が約290万人、日本が約100万人、欧州が約600万人、世界中で約6,000万人と報告されています。てんかんは、年齢層に関係なく発症する可能性がありますが、特に小児と高齢者で発症率が高いといわれています。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず1、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 当社は、てんかん領域を重点疾患領域と位置づけ、「Fycompa」をグローバルにお届けするとともに、てんかんの患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

 

1. 「Fycompa」(一般名:ペランパネル、日本製品名「フィコンパ」)について

 「Fycompa」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。「Fycompa」は1日1回就寝前に経口投与するタイプの錠剤です。さらに、新たな剤形として経口懸濁液の承認を米国で取得し、販売しています。

 本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、日本、米国、欧州、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は、全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、日本、米国、欧州、アジアなど45カ国以上で承認を取得しています。また、米国においては、単剤療法として、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に係る適応での承認も取得しています。

 本剤について、部分発作または強直間代発作を有する小児てんかん患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験、レノックス・ガストー症候群に伴うてんかん発作を有する患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験を実施しています。また、日本では、部分発作を有する12歳以上の未治療のてんかん患者様を対象とした単剤療法の臨床第Ⅲ相試験を実施しています。

 

 米国での「Fycompa」の重要な安全性情報を含む本剤に関する詳細はウェブサイトをご参照ください。

    https://fycompa.com/

 

2. 311試験の概要

 311試験は、グローバル(米国、欧州、日本、アジア)で実施中の、コントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかん患者様(4 歳以上12 歳未満)約160人を対象とした、多施設共同、非盲検、単群試験です(ただし日本においては、部分発作の患者様のみを対象)。他剤併用時における「Fycompa」経口懸濁剤の安全性、忍容性および暴露量と有効性の関係を評価します。

 「Fycompa」を1日1回2~16mgまで経口にて漸増投与し、23週間の治療期終了後、継続期にて長期の安全性を確認します。なお、日本では部分発作を有する小児てんかん患者様を対象とし、「Fycompa」を1日1回2~12mgまで経口にて漸増投与します。311試験で認められた有害事象(頻度10%以上)は、傾眠、鼻咽頭炎、浮動性めまい、易刺激性でした。

 

3. 232試験の概要

 232試験は、グローバル(米国、欧州)で実施された、小児てんかん患者様(2 歳以上12 歳未満)63人を対象とした、多施設共同、非盲検、継続投与試験です。他剤併用時における「Fycompa」経口懸濁剤の薬物動態、安全性、忍容性および有効性を評価しました。「Fycompa」を1日1回0.015mg/kgから最大0.18mg/kgまで経口にて漸増投与し、11週間の治療期終了後、継続期(41週間)にて長期の安全性を確認しました。232試験で認められた有害事象(頻度10%以上)は、発熱、疲労、嘔吐、易刺激性、傾眠、浮動性めまい、上気道感染症でした。

 

4. てんかんについて

 てんかんの患者様数は、米国で約290万人、日本で約100万人、欧州で約600万人、世界中で約6,000万人と報告されています。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず1、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約 4割を占める全般てんかんに大別されます。部分てんかんの発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般てんかんの発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

 全般てんかん患者様の強直間代発作は全般てんかんにおける最も一般的かつ重篤な発作型の一つであり、全般てんかんの約6割、てんかん全体においても約2割を占めます2

 強直間代発作は、突然の転倒による重篤なけがの恐れがあるほか、その発作頻度は「てんかん患者の予期せぬ突然死(SUDEP: Sudden Unexpected Death in Epilepsy)」の最も重要な危険因子とされ3、 てんかんの中でも極めて重篤な発作型の一つです。強直間代発作は、多くの患者様でなんらの予告症状なしに意識喪失を生じ、急激な強直性筋収縮による転倒に次いで、間代性けいれんを経て、筋弛緩し、意識障害に至る重篤な経過をたどることから、日常生活上の支障が大きいことが知られています。発作は数分で治まり、しばらく意識不鮮明やもうろう状態あるいは睡眠に移行した後、正常に戻るのが一般的な経過です。

 

  • 1

    “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed May 24, 2016, http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109

  • 2

    Hauser WA, et al. Epilepsia, 34(3):453-468,1993

  • 3

    Shorvon S, Tomson T. “Sudden unexpected death in epilepsy.” Lancet, 2011; 378:2028-2038

      •