英国NICEが抗がん剤「レンビマ®」を甲状腺がん治療薬として推奨

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗がん剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩、以下 レンバチニブ)が、英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence:NICE)により公表された最終評価報告(Final Appraisal Determination:FAD)1において、成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)に係る治療薬として推奨されたことをお知らせします。

本推奨により、「レンビマ」の本適応における使用に関して、英国国民保健サービス(National Health Service England:NHS England)から償還を受けることになります。

NICEの評価プロセスにおいて、レンバチニブは、プラセボと比較して無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)を統計学的に有意に改善するとともに、全生存期間(overall survival:OS)を延長させることが示されていると評価されました。その結果、レンバチニブが手術や放射性ヨウ素治療後の進行性又は再発の分化型甲状腺がんに対する数少ない治療オプションの一つであると結論付けられました。

レンバチニブは、欧州において2015年5月に「成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)」の適応で承認を取得し、2015年6月に英国で新発売されました。さらに、本剤は、欧州において2016年9月に「血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした薬剤の前治療歴を有する成人での進行性腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法」での適応拡大の承認を取得し、本適応症に関して「Kisplyx®」の製品名で発売しています。本剤は、腎細胞がんに係る治療薬として、2017年12月にNICEより推奨されています。

当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社はレンバチニブのさらなるエビデンスの創出およびアクセスの拡大に注力し、本剤の製品価値最大化を通じて、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1.レンバチニブメシル酸塩(一般名、製品名:「レンビマ」「Kisplyx」、以下 レンバチニブ)について

レンバチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。

現在、本剤は「レンビマ」の製品名で、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州、アジアなど50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など40カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx」の製品名で発売しています。

レンバチニブは、肝細胞がんに係る適応について、標準治療薬であるソラフェニブと有効性と安全性を比較する国際共同臨床第Ⅲ相試験(REFLECT/304試験)において、全生存期間について、ソラフェニブに対する統計学的な非劣性を証明し、主要評価項目を達成しました。レンバチニブの肝細胞がんに係る適応について、日本(2017年6月)、米国、欧州(同年7月)、中国(同年10月)、および台湾(同年12月)などにおいて承認申請を行いました。

さらに本剤については、腎細胞がん(一次治療)を対象とした、エベロリムスあるいはペムブロリズマブとの2つの併用療法に関して、臨床第Ⅲ相試験が進行中です。また、ペムブロリズマブとの併用による固形がん(子宮内膜がん、腎細胞がん、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)を対象とした臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験および肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅲb相試験が進行中です。また、日本において、ニボルマブとの併用による肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅲb相試験を開始しました。

2.新しいNICEの抗がん剤評価スキームについて

2009年に設立された旧Cancer Drugs Fund(CDF)は、新規抗がん剤への患者様アクセスを改善することを目的として、NICEにより「非推奨」とされた抗がん剤を中心に対象とする薬剤を評価後にリスト収載し、それらに対する費用を拠出してきました。しかしながら、財政負担の著しい増加に伴い、2016年7月29日より、新CDFを含むNICEの抗がん剤評価に関する新スキームの運用が開始されました。新たに承認を取得する全ての新規抗がん剤は、NICEにより評価されることとなり、旧CDFにリストされていた抗がん剤については、各社の判断で新スキームのもとでNICEの再評価を受けることができます。NICEによる評価は、最初に暫定的な評価案(Appraisal Consultation Document)として公表され、FADの公表を経て、最終ガイダンス(Final Guidance)として確定されます。「推奨」の場合には、NHS Englandから償還を受けることができますが、「非推奨」の場合には、Individual Funding Request(IFR)による一件審議となり、使用は大きく制限されます。推奨の可能性はあるもののエビデンスが不足していると判断された場合には「CDF下での限定的推奨」となり、最大2年間にわたりCDF下での暫定的なアクセスが確保されます。その後、新たに取得したエビデンスをもとにNICEによる再評価が実施され、最終的な「推奨」、「非推奨」の判断がなされます。

  • 1

    “Alternative treatments for people with thyroid cancer to be offered routinely on the NHS, says NICE”, https://www.nice.org.uk/news, accessed: February 15, 2018