臨床開発とリアルワールドデータの活用

臨床開発は、新薬の安全性や効果を検証するための重要な研究プロセスです。このプロセスを通じて、薬が実際に患者様にとって有効であり、安全であることを確認します。臨床開発は通常、以下の段階に分かれます。

   

第I相試験 :少数の健康なボランティアに対して薬の安全性を確認します。

第II相試験 :少数の患者様に対して薬の効果と安全性を確認します。

第III相試験:多数の患者様に対して薬の効果と安全性を確認し、最終的なデータを収集します。

第IV相試験:薬が市場に出た後も、長期的な効果と安全性に関する知見を得ます。

  

近年では、リアルワールドデータと呼ばれる医療データを活用した臨床試験の設計が注目されています。リアルワールドデータには、病院での治療記録や処方記録、検査データなどが匿名化された形で含まれており、これを解析することで、実際に行われている治療や患者様の憂慮解消につながる治療法のヒントを見つけることができます。

肝細胞がんのリアルワールドデータの解析の例

リアルワールドデータには、実際に行われた治療の記録がデータベースとして保存されています。この情報を臨床開発に活用するためには、データサイエンスの技術を使って、わかりやすく可視化することが重要です。例えば以下のように、肝細胞がん治療の流れを可視化することで、理解しやすくなります。このように、リアルワールドデータの解析結果と医療専門家の知識・経験を組み合わせることで、より患者様に貢献できる質の高い臨床試験の設計を実現していきます。
肝細胞がん患者様の治療フローのサンキーダイヤグラム(工程間の流量やデータのフローを表現するグラフ)。色は、治療の種類、フローの幅は患者様の割合を示す。TACE:肝動脈化学塞栓療法、TAE:肝動脈化学塞栓療法、RFA:ラジオ波焼灼療法、PEI:経皮エタノール注入、HAIC:肝動脈注入化学療法

    

文献

  • 1) Akada et al. Database analysis of patients with hepatocellular carcinoma and treatment flow in early and advanced stages. Pharmacol Res Perspectives. (2019)