製剤開発デジタルトランスフォーメーション(DX)

1プロネスデータの収集 2機械学習、AIの利用 3シミュレーションの活用 4仮想現実の活用 5製剤DX人財の育成

製剤開発では、有効成分の効果を最大化し、副作用を最小化すると同時に小さなお子様からご高齢者に至る多様な人々が服用または使用しやすいユニバーサルなカタチを提供したいと考えています。一日も早く価値ある製剤を患者様にお届けできるようにこれまでの開発方法を絶えず見直し、AIやIoTなどのデジタル技術も駆使して、最短で最高品質の製剤を提供できるように取り組んでいます。

製剤製造プロセスDX

高品質な医薬品(製剤)を低コストで迅速に開発することは、より多くの患者様にお薬を届けるために大変重要なことです。そこで、私たちは高品質な製剤を提供するために、製剤を製造しながら同時に品質を予測するためのデジタル技術を磨いてきました。例えば、錠剤や顆粒に特別な光を照射して、その反射した光を機械学習モデルで解析することによって、錠剤や顆粒に含まれている有効成分の濃度や水分などを予測することができます。また、これまで五つの独立していた装置を一つにつなげた連続生産機を導入し、原料の粉を投入したら顆粒がでてくる工程をつくりあげて製剤開発を加速させています。さらに、連続生産機を用いることで、商業生産に向けて通常必要となるスケールアップ実験が最小限にできるため、開発コストを大きく削減することが可能です。この連続生産機を利用した製剤として、川島工園(岐阜県)にてタズベリク®錠(一般名:タゼメトスタット)が国内企業初の製造販売承認を受けています。加えて、この経口製剤の連続生産機や新注射剤棟/研究棟(名称:Eisai Medicine Innovation Technology Solutions、以下 EMITS)に導入された注射剤製造ラインのデータをリアルタイムで収集し、閲覧できるシステムも導入しており、製造時のトラブルなどを早期に検出したり、未然に防いだりするための取り組みを進めています。

タズベリク錠を製造している連続生産機(左)とEMITSに導入した注射剤製造ライン(右上/右下)

製剤処方設計DX

普段の生活で医師にかかり処方される製剤(錠剤、カプセル、顆粒など)は、有効成分の他にも複数の医薬品添加物が含まれています。製剤処方の設計では、有効成分および医薬品添加物の種類や割合における無限の組み合わせの中から最適なものを選ぶことになります。製剤処方は、効き目や副作用、保管した際の品質に影響するためとても重要です。
私たちは、製剤処方が体内での有効成分の吸収に与える影響をデジタル技術で予測しながら製剤処方の最適化をしています。このような予測の精度を上げるために、ヒトの胃や小腸などを模倣することのできる特別な装置を利用して有効成分が体内で溶けたり、また、溶けていたものが再び析出したりする現象についても研究を行っています。その他にも効率的に「ベスト」に近づくためにベイズ最適化といった機械学習手法も積極的に取り入れています。ベイズ最適化とは、手元にあるデータからより良い結果が得られる可能性が高い条件を提案する手法で、提案と実験のサイクルをまわすことで効率的にベストに近づけます。このように、経験と歴史に裏付けられた匠の知識に加えて、ヒューマンバイアスのないベイズ最適化をハイブリッドさせることで、一日も早く患者様にお薬をお届けすることを目指しています。