「レンビマ®」(レンバチニブ)の全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験結果を第53回米国臨床腫瘍学会年次総会にて口頭発表ソラフェニブとの比較において主要評価項目達成し、副次評価項目を統計学的有意に改善

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗がん剤レンバチニブメシル酸塩(製品名:「レンビマ®」「Kisplyx®」 、以下 レンバチニブ)に関して、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんにおけるソラフェニブを対照薬とした臨床第Ⅲ相試験(304試験)結果が、米国シカゴで開催されている第53回米国臨床腫瘍学会年次総会にて、口頭発表されましたのでお知らせします。本試験において、レンバチニブは、全生存期間(Overall Survival:OS)において、ソラフェニブに対して全身化学療法として初めて統計学的な非劣性を証明し、主要評価項目を達成しました。また、副次評価項目である無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)、無増悪期間(Time To Progression:TTP)の中央値、および奏効率(Objective Response Rate:ORR)を、ソラフェニブに対してそれぞれ2倍以上にするなど、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。

本試験における主要評価項目であるOSは、レンバチニブ群で13.6カ月(中央値)であり、ソラフェニブ群の12.3カ月(同)に比較して、統計学的に非劣性が証明され(ハザード比0.92(95%信頼区間:CI = 0.79-1.06))、主要評価項目を達成しました。

副次評価項目において、PFS(中央値)は、レンバチニブ群で7.4カ月、ソラフェニブ群で3.7カ月でした(ハザード比0.66(95%CI = 0.57-0.77)、P<0.00001)。また、TTP(中央値)は、レンバチニブ群で8.9カ月、ソラフェニブ群で3.7カ月(ハザード比0.63(95%CI = 0.53-0.73)、P<0.00001)、ORRは、レンバチニブ群で24%、ソラフェニブ群で9%(P<0.00001)でした。これら3つの評価項目について、レンバチニブ群はソラフェニブ群に比較して、統計学的に有意な改善を示しました。

また、EORTC QLQ-C30質問票による全般的なクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の評価において、レンバチニブ群はソラフェニブ群と比較して、痛みや下痢などのQOLの悪化を遅延することがわかりました(名目P値<0.05)。

なお、本試験のレンバチニブ投与群で確認された有害事象(上位5つ)は、高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、疲労であり、これまでにレンバチニブの投与で認められた安全性プロファイルと同様でした。

当社は本試験結果に基づき、レンバチニブの肝細胞がんに対する適応について、日本、米国、欧州においては2017年度上期中、中国においては2017年度中に、承認申請する予定です。

肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で年間75万人が肝がんのために亡くなっています1。また、年間新規患者数78万人の約80%が、中国と日本を含むアジア地域に集中しています1。肝細胞がんは、原発性肝がん全体の約85∼90%を占めています。早期段階の肝細胞がんの治療法には、外科手術、ラジオ波焼灼法、エタノール注入療法、化学塞栓療法など多くの治療選択肢がありますが、切除不能な肝細胞がんの場合は、治療薬が限られており、予後が極めて悪く、アンメット・メディカル・ニーズが高い疾患です。

当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社は、引き続きレンバチニブを患者様価値増大に結びつけるべくエビデンスの創出に邁進し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. レンバチニブメシル酸塩(一般名、以下 レンバチニブ、商品名:レンビマ®/Kisplyx®)について

レンバチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。

現在、レンバチニブは、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州などでは、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での本適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。

さらに本剤については、腎細胞がん(一次治療)を対象とした、エベロリムスあるいはペムブロリズマブとの2つの併用療法に関して、臨床第Ⅲ相試験を開始し、進行中です。また、ペムブロリズマブとの併用による固形がん(非小細胞肺がん、腎細胞がん、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、メラノーマ)を対象とした臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験が進行中です。また肝細胞がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験が進行中です。

2. 304試験について

304試験は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様954人を対象とした、レンバチニブと標準治療薬であるソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。本試験には、954人の患者様が各投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、レンバチニブ群(478人)では、体重によって1日1回12mgまたは8mgが投与され、ソラフェニブ群(476人)では1回400mgを1日2回投与されました。投与は病勢進行あるいは忍容できない有害事象の発現まで継続されました。

本試験は、主要評価項目をOSとし、非劣性の検証を目的に実施しました。また、副次評価項目として、PFS、TTP、ORR、QOLなどを評価しました。

3. 肝細胞がんについて

肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で毎年78万人が新たに肝がんと診断され、75万人の死亡が報告されています1。地域差も大きく、中国、日本を含むアジアに新規患者様の約80%が集中しています1。肝細胞がんは、肝がんにおいて最も発生頻度が高く、原発性肝がん全体の約85∼90%を占めています。肝細胞がんは慢性肝疾患、特に肝硬変と関連しており、発生原因として、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスが挙げられますが、最近の調査では非B型非C型肝細胞がんの増加が報告されています。肝細胞がんの第一治療選択は外科手術ですが、根治切除後の再発や診断時にはすでに進行性で転移が見られるため手術に適さない場合も多くあります。全身化学療法歴のない適応で承認されている薬剤は、ソラフェニブのみで、アンメット・メディカル・ニーズが高い疾患の一つです。

4. EORTC QLQ-C30について

欧州がん治療研究機構(EORTC)により開発された、QOLを評価するためにがん領域で広く使用されている質問票です。