欧州臨床腫瘍学会年次総会において「レンバチニブ」と「ペムブロリズマブ」の併用による固形がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験の結果を発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製のマルチキナーゼ阻害剤レンバチニブメシル酸塩(以下 レンバチニブ)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(NYSE:MRK、米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法による固形がんを対象とした臨床第Ⅰb相試験の結果について、欧州臨床腫瘍学会年次総会(European Society for Medical Oncology: ESMO2016、10月7日~11日)において発表したことをお知らせします。本併用療法の開発は、両社提携の元で実施しています。

本試験は、レンバチニブとペムブロリズマブの併用における有効性と安全性を評価する、多施設共同、非盲検臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験です。最大耐性量(MTD)の決定を目的とした第Ⅰb相パートでは、標準治療後に進行した、または他に適切な治療法がない固形がんの患者様13人(腎細胞がん8人、子宮内膜がん2人、非小細胞肺がん2人、メラノーマ1人)に対して、レンバチニブ(24mg/日または20mg/日)およびペムブロリズマブ(200mg/3週間)が投与されました。

2016年8月時点の第Ⅰb相パートの最新結果において、レンバチニブ24mg/ペムブロリズマブ投与群では、3例中2例で用量制限毒性(DLT)が報告されました。レンバチニブ20mg/ペムブロリズマブ投与群(10例)では、DLTは報告されず、本併用療法におけるMTDは、レンバチニブ20mg/日とペムブロリズマブ200mg/3週間として確認されました。また、副次評価項目の1つである奏効率は、69.2%(全13例の結果)でした。グレード3以上(有害事象共通用語基準)の有害事象は69.2%で観察され、また、有害事象による投与中断はありませんでした。高頻度に観察された有害事象(上位3つ)は、食欲減退、下痢、疲労でした。

エーザイ・オンコロジービジネスグループのチーフメディスンクリエーションオフィサーである大和隆志博士は「標準治療後に進行した、または他に適切な治療法がない患者様を対象とした本試験の結果は、今後のレンバチニブ/ペムブロリズマブの併用療法の臨床開発を進める上で、勇気づけられます。」と述べています。

現在、本試験は米国において臨床第Ⅱ相パートが進行中であり、日本における臨床第Ⅰb相試験についても、開始準備中です。

当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社はレンバチニブのさらなるエビデンスの創出に注力し、本剤の製品価値最大化を通じて、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. レンバチニブメシル酸塩(製品名:Lenvima®、Kisplyx® 以下 レンバチニブ)について

レンバチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。

現在、レンバチニブは、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州、韓国、カナダ、メキシコ等45カ国以上で承認を取得し、加えて、南アフリカ、マレーシアなど世界各国で申請中です。米国では「局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん」の適応で、日本では「根治切除不能な甲状腺癌」の適応で、欧州では「成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は転移性の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)」の適応で承認を取得しています。

レンバチニブは、2016年5月に、米国で「血管新生阻害薬の前治療歴を有する進行性腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法」の適応拡大について承認を取得しました。また、2016年8月に、欧州において「血管内皮増殖因子を標的とした薬剤の前治療歴を有する成人での進行性腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法」の適応について承認を取得しました。欧州での本適応については「Kisplyx」の製品名で発売しています。

本剤について、肝細胞がん(臨床第Ⅲ相試験)や子宮内膜がん(臨床第Ⅱ相試験)、胆道がん(臨床第Ⅱ相試験)、複数のがん種を対象としたペムブロリズマブとの併用療法(臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験)など複数の臨床試験が進行中です。さらに、ペムブロリズマブまたはエベロリムスとの併用による腎細胞がん(一次治療)の臨床第Ⅲ相試験も開始しました。

2. 臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験(111試験)について

本試験は、レンバチニブとペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性を評価する多施設共同、非盲検の臨床第Ⅰb/Ⅱ試験です。臨床第Ⅰb相パートでは、最大耐性量の決定を主要目的とし、標準治療後に進行した、または適切な治療法がない固形がんの患者様(13人)を対象に、レンバチニブは24mg/日(3人)または20mg/日(10人)の用量を経口投与し、ペムブロリズマブは3週ごと200mgを静脈内投与しました。副次評価項目として奏効率(objective response rate: ORR)、全生存期間、無増悪生存期間など関して評価しました。現在、米国で臨床第Ⅱ相パートが進行中です。