バイオジェン・アイデック・インクが開発中のアルツハイマー型認知症治療剤に関して当社が保有するオプション権について

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2014年3月5日に発表した、次世代アルツハイマー型認知症(AD)治療剤として開発中のBACE阻害剤 「E2609」および抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「BAN2401」に関するバイオジェン・アイデック・インク(本社:米国マサチューセッツ州、CEO:George A. Scangos、以下 バイオジェン・アイデック)との共同開発・共同販促契約の中で、当社が保有するオプション権の詳細についてお知らせいたします。このたびのお知らせは、バイオジェン・アイデックが米国時間2月4日付で公表する年次報告書(10-K)にあわせて行うものです。

本契約は、両社がE2609 とBAN2401 について、当社主導のもとでグローバルでの承認取得に向けた開発を進め、承認取得後は日米欧などの主要な地域において共同販促を行うものです。両社はE2609 とBAN2401 に係る研究開発費等の費用を折半し、共同販促に基づく売上高は当社に計上され、利益は両社で等しく分配します。また、当社は、バイオジェン・アイデックより契約一時金を取得したほか、今後共同開発の進捗、承認取得および売上高達成に応じたマイルストン支払いを受け取ります。なお、共同販促を行う地域以外においては当社が単独で販売し、バイオジェン・アイデックにロイヤルティを支払います。

一方、当社は、バイオジェン・アイデックがAD治療剤として開発している抗Aβ 抗体「BIIB037」および抗tau抗体に対して、共同開発および共同販促に係わるオプション権を保有しています。当社がこれらのオプション権を行使する場合、BIIB037および抗tau抗体について、両社は上記E2609とBAN2401の共同開発・共同販促契約の内容を反映した契約を別途締結いたします。当社が保有するBIIB037および抗tau抗体に関するオプション権は以下のとおりです。

1. BIIB037に対するオプション権

当社は、BIIB037について、以下の1)または2)の時点でオプション権を行使することができます。

  • 1)

    現在進行中のBIIB037の後期第I相(Phase Ib)試験およびBAN2401の第Ⅱ相(Phase Ⅱ)試験双方の完了後(以下 Post-Phase Ⅱ BIIB037 Option)

  • 2)

    BIIB037の第Ⅲ相試験終了後(以下 Post-Phase Ⅲ BIIB037 Option)

  • 1)
    Post-Phase Ⅱ BIIB037 Optionを行使する場合

    当社が、Post-Phase Ⅱ BIIB037 Optionを行使する場合にバイオジェン・アイデックに支払う対価は、BAN2401の開発状況によって異なります。オプション権行使時にBAN2401が第Ⅲ相(Phase Ⅲ)試験に進むことが決定されていた場合、当社はバイオジェン・アイデックに対しBIIB037の承認時に一回限りの支払いを行います。この場合、当社のオプション権行使以降、バイオジェン・アイデックは、契約上定められているBAN2401に関するマイルストンの支払いを免除されます。一方、オプション権行使時にBAN2401の開発を中止している場合には、当社はバイオジェン・アイデックに対しBIIB037の開発および商業化に関するマイルストンを支払います(以下 Post-Phase Ⅱ BIIB037 Milestone Payments)。

  • 2)
    Post-Phase Ⅲ BIIB037 Optionを行使する場合

    当社がPost-Phase Ⅲ BIIB037 Optionを行使する場合、当社はバイオジェン・アイデックに対し、当オプション権行使前にバイオジェン・アイデックに発生したBIIB037の第Ⅲ相試験の費用と商業化費用およびその金額に対する一定のマークアップ、ならびに当社がPost-Phase Ⅱ BIIB037 Optionを行使していたとしたらバイオジェン・アイデックに対し支払っていたであろうPost-Phase Ⅱ Milestone Paymentsのうち未だ支払っていないマイルストンを支払います。

    なお、バイオジェン・アイデックは、当社がPost-Phase Ⅱ BIIB037 Optionを行使しなかった場合、BAN2401についていったん提携を解消する権利を保有するとともに、第Ⅲ相試験終了後において上記BIIB037のPost-Phase Ⅲ Optionと同様の条件で提携を再開する権利を有しています。

2. 抗tau抗体に対するオプション権

当社は、バイオジェン・アイデックが開発する抗tau抗体について、第I相(Phase I)試験終了後にオプション権を行使することができます。もし、本オプション権を行使する場合、当社はバイオジェン・アイデックに対し契約一時金と抗tau抗体の開発と商業化に関するマイルストンを支払います。

当社は、神経変性疾患領域に強みを持つバイオジェン・アイデックとの連携により、次世代AD治療剤の創出力をさらに強化することで、有望な治療剤を一日でも早く世界の患者様にお届けし、そのベネフィット向上に貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. E2609 について

E2609 は、エーザイが次世代経口アルツハイマー型認知症治療剤として開発している自社創製のBACE阻害剤であり、アミロイド前駆体タンパク質のβ サイト切断酵素であるBACE を阻害することで、アミロイドβ (Aβ )を減少させます。Aβ の脳内の沈着はアルツハイマー型認知症の病因の一つと考えられており、Aβ を減少させることにより、症状改善だけでなく病態の進行を抑制するなどの疾患修飾作用も期待されています。E2609については、現在米国で臨床第Ⅱ相試験を実施しています。

2. BAN2401 について

BAN2401 は、アルツハイマー型認知症に対する免疫療法剤創製を目的としたバイオアークティック・ニューロサイエンス社(本社:スウェーデン、ストックホルム、以下 バイオアークティック)との共同研究から得られた、ヒト化モノクローナル抗体です。アルツハイマー型認知症を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有する可溶性のAβ 凝集体に選択的に結合して無毒化、脳内からこれを除去する世界で初めてのモノクローナル抗体です。本抗体による治療アプローチは、病態の進行を抑制するなどの疾患修飾作用が期待されています。エーザイは、本抗体について、2007 年12 月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー型認知症を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。現在、臨床第Ⅱ相試験を進行中です。

3. BIIB037 について

BIIB037 は、バイオジェン・アイデック社がNeurimmune 社よりライセンスを受けて開発している抗Aβ ヒトモノクローナル抗体です。BIIB037 はAD 患者の脳に形成された毒性の高いAβ 凝集体に結合し除去することで、病態の進行を抑制することが期待されています。現在、臨床第Ib 相試験を進行中です。

4. バイオジェン・アイデック・インク(Biogen Idec, Inc.)について

バイオジェン・アイデック・インク(本社:米国マサチューセッツ州)は、最先端の科学および医学を用いて神経変性疾患、血友病および自己免疫疾患に対する革新的な治療剤を創製、開発し、世界中の患者様にお届けしています。1978 年に設立されたバイオジェン・アイデック・インクは、独立したバイオテクノロジー企業として世界で最も古い歴史を誇ります。バイオジェン・アイデック・インクは多発性硬化症の治療剤を通して世界中の患者様をサポートしています。
バイオジェン・アイデック・インクの詳細情報は、http://www.biogenidec.comをご覧ください。