筑波大学とエーザイがバイオマーカーを用いた炎症性腸疾患の新薬開発において産学共同開発を開始

エーザイ株式会社
国立大学法人 筑波大学

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫、以下 エーザイ)と国立大学法人筑波大学(茨城県、学長:永田恭介、以下 筑波大学)は、独立行政法人科学技術振興機構(以下 JST)の産学共同実用化開発事業(以下 NexTEP)に採択されたプロジェクトについて、共同で開発を進めていくことを合意しましたのでお知らせいたします。NexTEPは、大学等の研究成果に基づくシーズについて、アカデミアと企業が共同開発し、実用化に結びつけるプロジェクトをJSTが支援する制度です。

今回、NexTEPで採択されたプロジェクトでは、いまだアンメット・メディカル・ニーズが高い炎症性腸疾患に対する新たな治療法として、エーザイが創出した低分子化合物E6007の開発を進めます。E6007は、インテグリン活性化阻害による白血球全般の接着・浸潤を抑制する新規作用機序を有しており、抗炎症作用が期待されます。また、筑波大学生命環境系(生命領域学際研究[TARA]センター)深水昭吉教授の研究グループが開発したインテグリン活性化の新たな検出法をバイオマーカーとして臨床開発に組み込むことで、早期のPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)の達成および承認取得をめざします。

筑波大学の深水教授は、「JSTにご支援いただく本プロジェクトを通じて、炎症性腸疾患に有効な治療薬および診断法の実用化に貢献したいと思います。また、このような共同開発をきっかけに、企業と筑波大学の実質的な産学連携がさらに進展することを望みます。」と述べています。

エーザイプロダクトクリエーションシステムズ ジャパン/アジアクリニカルリサーチ創薬ユニットの井池輝繁プレジデントは、「当社では、筑波大学と互いの特長を生かした基礎・探索研究の連携を継続的に行なってきました。本プロジェクトを産官学連携の良き成功例とすべく、日本発の新薬として患者様に一日も早くお届けできるよう取り組んでまいります。」と述べています。

以上

[参考資料として、産学共同実用化開発事業、採択課題、炎症性腸疾患についてを添付しています]

本件に関する報道関係お問い合わせ先

<参考資料>

1. 産学共同実用化開発事業(NexTEP)について

NexTEPは、大学等の研究成果に基づくシーズについて、アカデミアと企業が共同開発し、実用化に結びつけることを支援するJSTによる技術移転支援事業です。実用化を後押しすることで、民間の需要を喚起し、日本経済の持続的成長に繋げることをめざしています。

NexTEP概要: http://www.jst.go.jp/jitsuyoka/index.html

2. 採択課題について

※左右にスクロールできます

課題名: 低分子化合物とバイオマーカーを用いた炎症性腸疾患の治療
新技術の代表研究者: 筑波大学 生命環境系(生命領域学際研究[TARA]センター)
深水 昭吉教授
開発実施企業: エーザイ株式会社
研究概要: インテグリンは、細胞表面の原形質膜にあるタンパク質で、細胞接着分子ファミリーの一つです。エーザイでは、新たなインテグリン阻害のメカニズムの研究において、リンパ球、好中球双方の接着および浸潤の抑制が可能で、経口有効性を発揮する候補化合物としてE6007を創出しました。また、筑波大学深水研究室では、インテグリン活性化を可視化し、検出する新たな技術を開発しました。エーザイと筑波大学は、E6007による新たな炎症性腸疾患治療剤、特に、潰瘍性大腸炎治療剤の創出をめざして開発を進めるとともに、インテグリン活性化検出法の治療有効性の指標(バイオマーカー)としての可能性を追求し、早期のPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)の達成および承認取得をめざします。

3. 炎症性腸疾患について

炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病に代表される、大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称です。両疾患ともに、国の難病対策として臨床研究分野の調査対象疾患になっており、平成24年度特定疾患医療受給者証交付件数からは、日本の潰瘍性大腸炎の患者数は14万3千人以上、クローン病の患者数は3万6千人以上と推計されており、年々増加しています。