スコットランドの医療技術評価機関がAMPA受容体拮抗剤「Fycompa®」をてんかん治療薬としてスコットランド国民医療サービスの下で使用することを承認

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、スコットランドの医療技術評価機関であるスコットランド医薬品コンソーシアム(Scottish Medicines Consortium: SMC)が、AMPA受容体拮抗剤「Fycompa®」(一般名:ペランパネル)について、難治性の部分てんかん患者様に対するセカンドラインの併用療法として、スコットランド国民医療サービス(National Health Service Scotland: NHS Scotland)の下での使用を承認したことを、お知らせします。今回のSMCによる承認は、本剤に対する世界で初めての医療技術評価(Health Technology Assessment: HTA)の結果となります。

今回の医療技術評価は、欧州承認申請で用いた3つのプラセボ対照二重盲検比較試験の結果、および薬剤費、入院・通院・救急医療の費用を含めた総コストに関する他剤との比較分析をもとに、有効性、安全性、医療経済の観点から実施されました。当該評価において、本剤は、難治性部分てんかん患者様において、プラセボに比較して優れたてんかん発作抑制効果が認められ、また、当社が提案した患者アクセススキームが費用効果的であると判断され、今回の承認となりました。

スコットランドでは、てんかんは最も多い神経性疾患の一つとなっており、その患者数は約54,000人と推定され、増加傾向にあります。また、部分てんかんでは、約3割の患者様が既存治療薬では発作を十分コントロールできていないことから、有効な新薬が強く望まれています。今回のSMC による承認により、スコットランドのてんかん患者様が新規メカニズムを有する本剤に、NHS Scotlandの下でアクセスすることが可能となります。

本剤は、当社が創製した、ファースト・イン・クラスの非競合AMPA型グルタミン酸受容体拮抗剤です。てんかん発作は神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、シナプス後AMPA受容体のグルタミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制することで、てんかん発作の抑制効果を発揮します。本剤は、成人のみならず12歳以上の青年期から幅広い年齢層の患者様への適応が認められています。さらに、1日1回の経口投与の服用であり、患者様の服用時の負担の軽減と服薬コンプライアンスの向上も期待できます。

本剤は、2012年7月に欧州委員会から世界で初めて承認を取得し、既に英国を含む欧州各国で順次発売を開始しています。米国においては、同年10月に米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得し、米国麻薬取締局(U.S. Drug Enforcement Administration:DEA)による、規制物質法に基づくスケジュール審査完了後に発売予定です。

当社は、てんかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、引き続き貢献してまいります。

以上

[参考資料として、スコットランド医薬品コンソーシアム、ペランパネルの臨床第Ⅲ相試験について添付しています]

<参考資料>

1. スコットランド医薬品コンソーシアム(Scottish Medicines Consortium: SMC)について

SMCは、新たに承認された新薬や剤形、適応について、医療上のベネフィットと価格の公正性の観点から評価を行い、スコットランド国民医療サービス(National Health Service Scotland: NHS Scotland)の下で使用することを承認すべきかどうかについて、NHS Scotland に対して勧告する独立組織です。SMCは、NHS関係者を始め、医師、薬剤師、医療経済学者、産業団体、一般等から構成されます。

2. ペランパネルの臨床第Ⅲ相試験について

ペランパネルの部分てんかんの申請用試験は3つの臨床第Ⅲ相試験(304、305、および306試験)から成り、計1,480人の青年期を含む12歳以上の部分てんかん患者様が本試験に参加されました。306試験は、最小有効量を把握することを主目的として、「プラセボ、2mg、4mg、8mg」の4群で実施されました。また、304試験と305試験は、投与量範囲の決定を主目的とし、「プラセボ、8mg、12mg」の3群で実施されました。

いずれの試験も、グローバル、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、用量漸増試験として実施され、「部分発作回数変化率(percentage change in seizure frequency)」、「50%レスポンダーレート(50% responder rate、部分発作回数が観察期間と比べて50%以上改善した症例の割合)」、「複雑部分発作および二次性全般化発作減少率(percentage reduction of complex partial plus secondarily generalized seizures)」、および「用量反応性(evaluation for dose response)」を評価項目としていました。また、EMAの主要評価項目には「50%レスポンダーレート」が、米国FDAの主要評価項目には「部分発作回数変化率(中央値)」が設定されました。各試験の全症例を対象とした結果は下記の通りです。

1)306試験

  • 「50%レスポンダーレート」:プラセボ投与群の17.9%に対し、ペランパネルの2mg投与群で20.6%(p=0.4863)、4mg投与群で28.5%(p=0.0132)、8mg投与群で34.9%(p=0.0003)
  • 「発作回数変化率(中央値)」:プラセボ投与群の-10.7%に対し、ペランパネルの2mg投与群で-13.6%(p=0.4197)、4mg投与群で-23.3%(p=0.0026)、8mg投与群で-30.8%(p<0.0001)
  • 「主な有害事象」:めまい、頭痛、眠気

2)305試験

  • 「50%レスポンダーレート」:プラセボ投与群の14.7%に対し、ペランパネルの8mg投与群で33.3%(p=0.0018)、12mg投与群で33.9%(p=0.0006)
  • 「発作回数変化率(中央値)」:プラセボ投与群の-9.7%に対して、ペランパネルの8mg投与群で-30.5%(p=0.0008)、12mg投与群で-17.6%(p=0.0105)
  • 「主な有害事象」:めまい、けん怠感、頭痛、眠気

3)304試験

  • 「50%レスポンダーレート」:プラセボ投与群の26.4%に対し、ペランパネルの8mg投与群で37.6%(p=0.0760)、12mg投与群で36.1%(p=0.0914)
  • 「発作回数変化率(中央値)」:プラセボ投与群の-21.0%に対して、ペランパネルの8mg投与群で-26.3%(p=0.0261)、12mg投与群で-34.5%(p=0.0158)
  • 「主な有害事象」:めまい、眠気、神経過敏、頭痛、転倒、運動失調