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- 2012年10月29日
アボット ジャパン株式会社
エーザイ株式会社
アボット ジャパン株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:ゲリー・エム・ワイナー)とエーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役社長兼CEO:内藤晴夫)は、このたび、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ®皮下注40mgシリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ<遺伝子組換え>、以下「ヒュミラ®」)について、中等症又は重症の活動期にあるクローン病の寛解導入及び維持療法等(以下、「クローン病」)の適応症の承認条件となっていた使用成績調査(全例調査)解除の通達を厚生労働省から受けたと発表しました。
「ヒュミラ®」は、2010年10月に「クローン病」に係わる効能・効果が承認されました。その際の承認条件として、「製造販売後、一定数の症例に係るデータが蓄積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること」が付されていました。
今回の承認条件の解除は、厚生労働省に提出した704人のクローン病患者様での全例調査中間報告書をもとに「ヒュミラ®」の安全性および有効性が審査された結果に基づき、決定・通知されたものです。なお解析結果は、これまでに確立された「ヒュミラ®」の安全性および有効性を支持するものでした。
「ヒュミラ®」の臨床研究は広範に行われ、豊富な臨床データを有しており、現在、世界で60万人以上の患者様に投与されています。日本において「ヒュミラ®」は、アボット ジャパンが製造販売承認を取得し、アボット ジャパンとエーザイによる1ブランド1チャネル2プロモーション方式で共同プロモーションを行っており、販売はエーザイが担当しています。
両社は、当該調査で得られたエビデンスをもとに、引き続き適正使用の推進、情報提供に努め、患者様のQOL向上に貢献してまいります。
以上
[参考資料として、使用成績調査の解析結果、用語解説、エーザイおよびアボット社の取り組みについて添付しています]
本件に関する問い合わせ先
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エーザイ株式会社
PR部
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アボット ジャパン株式会社
広報部
<参考資料>
1. 使用成績調査の解析結果
厚生労働省に提出した本調査結果は、2010年10月27日から2011年12月19日までに確定した704人の患者様のデータについて解析を行ったものです。
有効性の評価はクローン病の活動性指数であるCrohn's Disease Activity Index(CDAI)を用いて、「ヒュミラ®」投与前および投与4週時、8週時、24週時で評価を行いました。本調査において新たに本剤の投与を受けた644人の患者様に関する解析では、投与前のCDAIは202.4±107.6(平均±SD)でしたが、「ヒュミラ®」投与4週時136.0±87.2、8週時136.5±91.6、24週時135.5±94.3と投与前に比べて統計的に有意な減少が認められ、「ヒュミラ®」の投与によるクローン病の疾患活動性の低下が確認されました。また、CDAIに基づく寛解率(CDAI<150)は、集計を行った全ての観察時で国内臨床試験時の結果を上回ることも確認されました。
副作用発現率は16.1%であり、主な副作用は「注射部位反応」「肺炎」「発疹」「発熱」「敗血症」「亜イレウス」「悪心」でした。また、重篤な副作用発現率は5.0%であり、「肺炎」「敗血症」「腸閉塞」「亜イレウス」などが報告されました。これら副作用の概要は、開発時の臨床試験で認められたものとほぼ同様でした。
2. 用語解説
1)クローン病
クローン病は主に小腸や大腸に潰瘍や炎症病変が発生し、下痢や腹痛を伴う原因不明の慢性の炎症性腸疾患で、厚生労働省の特定疾患に指定されています。最近10年、患者数は増加しており、2009年度末には約3万1千人の患者様が登録されています(難病情報センター資料:http://www.nanbyou.or.jp/entry/81)。男女比は2対1と男性に多く、年代別に見ると、発症のピークは10歳代後半~20歳代前半となっています。クローン病は腸管狭窄、腸閉塞や膿瘍(感染部位に膿がたまる状態)を伴い、肛門周囲に痩孔(腸管に孔が開いて腸管と腸管、あるいは腸管と皮膚がつながった状態)が見られるのが特徴です。栄養療法や薬物療法等で症状が抑えられない場合には、手術適応となる場合もあります。また、クローン病は活動期と寛解期を繰り返すことから、一旦、寛解期に入っても、再燃(再び消化管に炎症が生じる)や再発(新たな部位に炎症が生じる)を予防するために長期にわたる治療が必要になります。
2)TNFα
TNF(腫瘍壊死因子:Tumor Necrosis Factor)とは、腫瘍細胞に対する傷害活性を有する因子として発見された細胞間相互作用を媒介するサイトカインの一つです。TNFαは、マクロファージ、リンパ球、血管内皮細胞など種々の細胞によって産生され、炎症反応を惹き起こしたり、増強したり、炎症細胞を活性化したりします。一部の免疫疾患で過剰に産生され、炎症反応の中心的な役割を果たしている物質です。
3)モノクローナル抗体
単一株(モノクローン)の抗体産生細胞から得られた抗体で、抗原に対する結合親和性や特異性が均一の抗体です。
4)Crohn's Disease Activity Index(CDAI)
クローン病の症状の程度をはかる指標の一つで、水様便または軟便の1日排出回数、腹痛の重症度、全身健康度などの健康状態に関する8 項目をもとに算出します。値が小さいほど症状が軽く、大きいほど症状が強いとされ、CDAI が150未満になると症状がほとんどなくなった「寛解」、450以上を「劇症(極めて重症)」としています。
3. 「ヒュミラ®」(海外製品名:HUMIRA®)について
「ヒュミラ®」は、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体であり、炎症反応に関わる中心的なサイトカインであるTNFαを中和することにより、効果を発揮します。日本において関節リウマチ(2008年4月承認)、尋常性乾癬および関節症性乾癬(2010年1月同)、クローン病(2010年10月同)、強直性脊椎炎(2010年10月同)、若年性特発性関節炎(2011年7月同)、関節リウマチにおける関節の構造的損傷の防止(2012年8月同)の効能・効果の承認を取得しています。
4. アボットの免疫分野への取り組み
アボットは、免疫疾患に対する新規治療薬の創薬と開発に力を注いでおります。1989年に創設したアボット生物科学研究所(米国マサチューセッツ州ウースター)では、自己免疫疾患の新規治療法の開発に向け、世界最高レベルの創薬活動と基礎研究を行っています。
「ヒュミラ®」(海外製品名:HUMIRA®)に関する詳細や製品情報については、http://www.e-humira.jp/もしくはwww.HUMIRA.comをご覧ください。
5. エーザイの抗体医薬への取り組み
エーザイは、従来からの強みである低分子化合物に加えて、バイオロジクス(生物学的製剤)分野へ積極的に取り組んでいます。カン創薬ユニットでは、神戸のカン研究所と筑波研究所が連携して、セロミクスを強みとした新規創薬ターゲットの発見と、それを標的とした抗体医薬の創出に取り組んでいます。また、2007年4月に買収したモルフォテック社では、独自の技術である「Human Morphodoma®」、「Libradoma™」を活用することにより、がん・関節リウマチ・感染症などに対する抗体医薬の創出に取り組んでいます。さらに、スウェーデンのバイオアークテック・ニューロサイエンス社との提携によるアルツハイマー病に対する抗体医薬の開発や、日本でアボット ジャパンとヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ®」の開発・販売を進めるなど、抗体医薬を通して患者様とご家族の皆様のQOL向上に貢献することを目指しています。
6. アボットについて
アボット社は、広範囲のヘルスケアに基盤を置く世界的規模の会社であり、グループ総従業員数約91,000人を擁し、世界130カ国以上で営業活動を行っています。その事業内容は医療用医薬品、栄養剤、医療機器、診断薬、診断機器の分野における研究・開発、製造、マーケティングそして販売と多岐にわたっています。日本国内の従業員は、これらのビジネスに関する販売とマーケティングに従事しており、東京、福井、千葉に拠点を置いています。アボット ジャパンのプレスリリースはwww.abbott.co.jp、アボット本社のプレスリリースはhttp://www.abbott.com/をご参照ください。