米国研究子会社「H3 Biomedicine Inc.」が英国Horizon 社と、がん患者様遺伝子情報に基づく がん標的分子の同定とバリデーションにおける共同研究契約締結

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、米国研究子会社「H3 Biomedicine Inc.」(所在地:マサチューセッツ州、社長:Markus Warmuth、以下、「H3 Biomedicine」)が、個別化医療の研究ツールを提供する世界有数のベンチャー企業であるHorizon Discovery Limited(所在地:英国、社長:Darrin M Disley、以下、「Horizon社」)と、新規抗がん剤標的候補分子の同定とバリデーション(妥当性の検証)に関する共同研究契約を締結した、と発表しました。

H3 Biomedicineは、次世代の有機合成化学と腫瘍生物学の力を結集して、がん患者様の遺伝子情報に基づく挑戦的ながん治療薬の開発に挑んでいます。本契約により、H3 Biomedicineは ヒューマンバイオロジーに基づく標的候補分子の発見に向けた早期探索研究を行い、Horizon社は同社が持つユニークな3つのコア技術、1) リコンビナント アデノ随伴ウィルス(recombinant Adeno-Associated Virus、rAAV)を介した遺伝子操作(GENESISTM)による精密なFunctional Genomics(遺伝子のノックイン/ノックアウト)、2) 400を超えるヒト由来同質遺伝子細胞株(変異株と正常株)のセット(X-MANTM)、3) 広範な細胞ベースのアッセイ系の構築および薬剤のプロファイリング技術、を用いて、H3 Biomedicineが取り組む標的分子のバリデーションや化合物のスクリーニングを支援します。両社の共同研究によって、新規標的候補分子の創薬における妥当性に関する最終判断を迅速に行うことをめざします。

個別化医療をめざした新薬創出の成功の鍵は、疾患の根本原因に深く関連する創薬標的分子のバリデーションを確実に行うことと、治療効果が高いと期待される患者様集団を明確に同定することです。優れたコア技術を有するHorizon社との共同研究契約によって、H3 Biomedicineは高い治療効果を発揮する革新的な薬剤の開発に向けた最も妥当な創薬標的候補分子の同定が可能となり、個別化医療の実現に向けて一歩前進しました。

本契約において、H3 BiomedicineはHorizon社の既存の知的財産を除き、全ての標的分子開発プログラムについての資産と知的財産を獲得する独占的オプション権を保持します。Horizon社はH3 Biomedicineがオプション権を行使しない全ての標的分子開発プログラムの商業化権を有します。また、H3 BiomedicineはHorizon社に対して、契約一時金、前臨床および臨床におけるマイルストーンペイメントを支払います。

当社は、H3 Biomedicineが掲げる挑戦的な遺伝子科学に基づいた創薬ビジョンを共有し、従来よりもはるかに確度高く、有用性の高い革新的ながん治療薬の早期創出を実現し、がんと共に生きる患者様にグローバルに貢献してまいります。

以上

GENESISTMおよびX-MANTMはHorizon Discovery Limitedの登録商標です。

[参考資料として、Horizon Discovery Limited、H3 Biomedicine、エーザイの抗がん剤開発の特徴、を添付しています。]

<参考資料>

1. Horizon Discovery Limitedについて

Horizon Discovery Limited(以下、Horizon社)は、個別化医療に向けた研究ツールを提供する世界有数のベンチャー企業です。Horizon社の特許技術であるGENESISTMは、世界で最も正確な遺伝子操作技術であり、同社はこのGENESISを活用して、ヒトあるいは哺乳類細胞様の遺伝子配列を、迅速かつ確実に、そして不必要なジェノタイプやフェノタイプを導入することなく変化させることができます。

Horizon社はGENESISを利用して400を超えるX-MANTM細胞株を構築しましたが、これらは患者様のがん細胞の遺伝子特性が反映されている世界初のヒト細胞株のソースであり、がん患者様に見られる疾患原因遺伝子変異の正確なモデルとなります。本モデルは、個別の遺伝子変異が薬剤活性に与える影響や患者様の薬剤に対する反応性、耐性についての研究に活用されており、特定の薬剤に対して高い効果を示す患者様集団を予測することが可能となっています。Horizon社は個別化医療に貢献していくことをめざしています。また、GENESISとX-MAN関連の製品やサービスも提供しており、バイオ医薬品のプロセス最適化、新薬研究開発、臨床診断技術の開発なども行っています。

2. H3 Biomedicineについて

H3 Biomedicineは、個別化医療を志向した、がん治療薬の創出と開発に特化したバイオファーマです。H3 Biomedicineは、がんの根本原因に関連する遺伝子情報をもとに、特定のがんに高い有効性が期待される創薬ターゲットに対する薬剤の開発をめざします。

1) 会社概要

会社名 : H3 Biomedicine Inc.
所在地 : 米国マサチューセッツ州ケンブリッジ
社長 : Markus Warmuth
事業内容 : 医薬品の研究開発
資本金 : 100万米国ドル
設立日 : 2010年12月13日
ホームページ www.H3biomedicine.com

2) 創薬戦略について

H3 Biomedicineの創薬アプローチには二つの原則があります。一つは、がん患者様の個々の遺伝子情報に着目し、バイオインフォマティクス技術を駆使してがんの根本原因に関連する遺伝子の候補を同定することです。同定された遺伝子の機能の検証を行った上で、がん治療のための標的分子を選定し、最適な評価系の確立を行います。二つ目の原則は、得られた標的分子が、従来の創薬方法論ではアプローチが困難と考えられてきたものであっても、それらが病因に関与する重要な標的である限り、断固として追求することです。その実現のために、多様性指向型合成(天然物を構造モチーフとして、構造的に多様性に富んだ低分子群を系統的かつ簡便に構築する合成技術)と呼ばれる次世代合成技術を活用し、化学構造の複雑さと合成の行いやすさのバランスをとりつつ、骨格と立体構造の多様性を確保するユニークな化合物ライブラリーを創製します。また、遺伝子情報をプロスペクティブに用いて、バイオマーカー研究を効果的に進め、がん患者様の個別化医療を志向するとともに、全開発期間の短縮をはかり、がんと闘う患者様に一日でも早く革新的な治療薬をお届けすることをめざします。

H3 Biomedicineの創薬戦略

3.エーザイの抗がん剤開発の特徴

当社は、オンコロジー領域を最重点領域と位置付け、1)多様なプロダクトクリエーション活動、2)ウィメンズオンコロジーへのコミットメント、3)イーストアジアの重視を3つの特徴として掲げています。プロダクトクリエーションにおいては、天然物由来、抗体医薬、低分子、ゲノムベースの4つの切り口を重視しています。H3 Biomedicineは、最先端がん遺伝子科学に基づいた、天然物由来、抗体医薬、低分子によるがん治療薬開発を加速し、その成功確度を向上させます。ウィメンズオンコロジーの分野では、ハラヴェンの適応拡大(フェーズⅢ:より前治療歴の少ない乳がん等)、farletuzumab(フェーズⅢ:卵巣がん)、lenvatinib(フェーズⅢ:甲状腺がん、フェーズⅡ:子宮内膜がん)に注力します。イーストアジアに向けては、肝細胞がん、非小細胞肺がん等の治療薬の開発を加速してまいります。