抗がん剤「Halaven™」がカナダで承認取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、このたび、カナダにおける医薬品販売会社「エーザイ・リミテッド」(以下「エーザイ・カナダ」)が、当社が創製・開発した「Halaven™」(一般名:エリブリンメシル酸塩)について、「アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種類のがん化学療法による前治療歴のある転移性乳がん」に係る効能・効果でカナダ保健省(Health Canada)の承認を取得した、と発表しました。エーザイ・カナダは今後、本剤の上市に向けて準備を進め、2011年度中に販売を開始する予定です。

本剤は、前治療歴のある転移性乳がんの患者様において、単剤で統計学的に有意に全生存期間を延長した世界で初めてのがん化学療法剤です。2010年3月に日本、米国、欧州(EU)で同時申請を達成し、2010年11月に世界で初めて米国で承認を取得しました。現在、今回のカナダでの承認を含め、シンガポール、欧州(EU)、日本、スイスなど世界35カ国で承認されています。(2011年12月時点)

カナダでは、欧米諸国同様、乳がんは女性のがんの中で最も多く見られるがんの一つとされており、毎年約2万3,000人の女性が新たに乳がん罹患し、約5,000人が乳がんによって命を落としているとされています。

エーザイ・カナダは、エーザイ初のカナダ市場における医薬品拠点として、2010年4月に設立されました。同社は本年、本格的に業務を開始し、これまでにてんかん治療剤「Banzel™」やインプラント型脳腫瘍治療剤「Gliadel®」をカナダにおいて発売しています。来年以降も、AMPA受容体拮抗剤「ペランパネル(一般名)」を始め、当社の注力する領域であるがん領域や神経領域の製品について、販売承認申請手続きを進め、カナダ市場における製品ラインアップの拡充を図ります。

本剤のカナダでの承認取得により、当社は、ヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業として、カナダにおいて一日も早く本剤をお届けし、患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

[参考資料として、「Halaven™」の概要、当社のウィメンズ・オンコロジーの取り組み
およびカナダの医薬品市場について添付しております]

<参考資料>

1. Halaven™ について

「Halaven」(エリブリンメシル酸塩)は、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらにチューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。本剤の合成はきわめて難度が高く、その全合成のステップ数は62工程あります。また分子量は826であり、不斉炭素19個を含むため、理論的に立体異性体の数は2の19乗個、すなわち524,000 個の可能性があり、その制御が困難を極めます。しかし、当社の技術力により、そのすべての反応を立体選択的にコントロールし商業的に合成することが可能になりました。

本剤は、2010年11月米国、2011年2月シンガポール、2011年3月欧州、2011年4月に日本でそれぞれ承認を取得し、2011年12月現在までで承認取得国数はカナダを含めて全35カ国となりました。さらにアジア、ニューマーケットなどの国々における開発や、より治療歴の少ない乳がん、非小細胞肺がん、肉腫など、他のがん種についても単剤での後期臨床試験が進行中です。

2. ウィメンズ・オンコロジーの取り組み

女性のがんによる死亡率は年々拡大しており、世界で毎年約300万人の女性ががんで亡くなられています(WHO統計)。

エーザイは、がんと共に生きる女性を支援し、そのQuality of Life(QOL)を向上させることはきわめて意義の高いことであると考えています。当社は、「ウィメンズ・オンコロジー」をコンセプトとした、女性の視点を大切にしたがん領域における取り組みを進めることにより、がんと向き合う女性の想いにより添い、希望をお届けし、QOLを向上することに貢献してまいります。

今後、「Halaven」の適応拡大、製剤開発により乳がん患者様への貢献を拡大するとともに、卵巣がんをターゲットとしたモノクローナル抗体 farletuzumab、甲状腺がんや子宮内膜がんをターゲットとしたlenvatinibなどの開発により、がんと闘う女性に一日でも早く革新的な新薬をお届けすることが我々の使命であると考えています。そして、世界中の一人ひとりの患者様に当社の製品をお届けできるようアクセス・プログラムを実現するとともに、総合的なヘルスケアシステムの改善に全力を尽くしてまいります。

3. カナダ医薬品市場について

カナダは、人口約3,400万人、実質GDP成長率は3.3%と安定的に高い国です。2010年の医薬品市場は216億米ドル(約1兆6,400億円)の売上規模を誇る、世界9位、米州2位の市場であり、成長率は3%となっています。

カナダでは、欧米諸国同様、乳がんは女性のがんの中で最も罹患率の高いがんの一つとされています。毎年約2万3,000人の女性が新たに乳がん罹患し、約5,000人が乳がんによって命を落としているとされています。