MORPHOTEK, INC. がTRANSMOLECULAR, INC. のがん領域創薬研究資産を取得Morphotekの抗体創薬技術基盤を補完するプラットフォーム技術

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、米国エーザイ・インクの子会社であるMorphotek, Inc.がTransMolecular, Inc. (本社:米国、代表者:Robert Radie、“TMI社”) の有するプラットフォーム技術を取得した、と発表しました。TMI社はペンシルバニア州King of Prussiaに本社を置くバイオテクノロジー企業で、がん細胞のターゲティングを可能とするペプチド(Tumor Targeting Peptide: TTP)技術基盤を開発、保有しています。この技術を応用することにより、TTPと共有結合した同位体ヌクレオチド、トキシン、ナノ粒子、光感受性色素を全身投与で、がん細胞だけに移行させ、薬効発現、イメージングなどを可能にします。本契約締結により当社は、TTP技術のすべての領域と診断への使用に関する権利を獲得します。

このリガンド結合TTPの有用性はすでに多くの前臨床研究、臨床試験において証明されており、TMI社から診断・治療を適応とした結合TTPとして特許出願中です。結合TTPは血液脳関門を透過するため、末梢のみならず中枢神経のがん細胞にも選択的に移行することが検証されています。また、前臨床、臨床で安全性と有効性が評価された、多くの有用な細胞障害性、細胞増殖抑制性の低分子化合物をTTPのリガンドとして結合させることも可能です。

TMI社のTTP技術は、新規抗がん活性化合物を探索、同定する過程でサソリの毒成分から発見されたペプチドに端を発しています。このペプチドは、細胞表面に存在するアネキシンA2複合体に結合し細胞内に取り込まれ、活性化された上皮細胞の増殖を抑制します。アネキシンA2は正常細胞に比べて悪性化したがん細胞で過剰発現しており、その結果として、本ペプチドにはがん細胞選択的な取り込みが認められることが判明しました1), 2)

TMI社のがんターゲティング・プラットフォーム技術基盤の取得は、対象疾患を細胞の分子レベルで標的とする選択的な治療薬の開発に向けた革新的なステップになります。

当社は、がん研究における意義ある革新をめざしており、前臨床探索研究ならびに臨床開発研究において、低分子有機化合物と生物学的薬剤からなる多岐にわたるがん化学療法剤、ならびに支持療法剤を創出するグローバル事業基盤を確立しています。これらの取り組みにより、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献し、当社のヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念を実現してまいります。

以上

[参考資料として、TransMolecular, Inc., Morphotek, Inc., 当社のがん領域の取り組みについて添付しています]

<参考資料>

1. TransMolecular, Inc. について

TransMolecular, Inc.は1996年に米国マサチューセッツ州に創設されたベンチャー企業で、神経膠腫、転移性脳腫瘍、およびがんに関する治療法の発見、開発、商業化にフォーカスしています。抗がん作用を有するサソリ毒から発見されたポリペプチドTM601(TTPの1つ)を開発しています。

2. Morphotek, Inc. について

Morphotek Inc.はエーザイ・インクの子会社で、新規性の高い遺伝子の革新的技術を用いてタンパク質と抗体製品の開発を専門とするバイオ製薬企業です。現在、自社の技術基盤を活用したがんの治療、炎症、および感染症治療用タンパク質の開発と製造のプラットフォームに注力しています。

3. 当社のがん領域の取り組みについて

当社のオンコロジー研究機能は、1) Oncology PCU (Product Creation Unit)、2) Morphotek, Inc. 3) H3 Biomedicine, Inc. などから構成されます。

当社のオンコロジー研究機能
  1. 1)
    C. A. Grimes et al, TM-601 targets human cancer cells via a phosphatidylinositol phosphate in lamellipodia
    J Clin Oncol (Meeting Abstracts) June 2005 vol. 23 no. 16_suppl 9556.
  2. 2)
    Kamala Kesavan et al, Annexin A2 Is a Molecular Target for TM601, a Peptide with Tumor-targeting and Anti-angiogenic Effects, Journal of Biological Chemistry, 285, 4366-4374.