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- 2026年2月16日
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の新規選択的オレキシン2受容体作動薬E2086について、予定される効能又は効果であるナルコレプシーを対象として、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されたことをお知らせします。
ナルコレプシーは、慢性的な睡眠障害であり、日中の過度の眠気(EDS)を特徴としています。疲労、認知機能の問題、治療後も残存する症状などにより、疾患負担は大きいとされ1、アンメット・メディカル・ニーズが高い疾患です。日本におけるナルコレプシーの患者様数は、調査に用いられたデータにより異なりますが、2025年の報告では約4万6千人2と推定されています。ナルコレプシーは、カタプレキシー(情動脱力発作)を伴うタイプ1と、伴わないタイプ2の2つに分類されます。タイプ1の病因は、視床下部に存在するオレキシン産生ニューロンの自己免疫性破壊によるオレキシンの欠乏と考えられており、タイプ2の病因は未解明ですが、タイプ2においてもオレキシン神経伝達低下の可能性が示唆されています3。
オレキシンは、睡眠と覚醒の調節において重要な役割を果たす神経伝達物質です。オレキシン作動性神経の働きを抑制することで、覚醒状態から睡眠への自然な移行を促進する一方、オレキシン作動性神経を活性化することで、より安定した覚醒状態の維持が可能になると考えられています。当社は、オレキシン作動性神経抑制の観点からオレキシン受容体拮抗剤として不眠症治療薬「デエビゴ®」(一般名:レンボレキサント)を開発し、世界25以上の国と地域で承認を取得しています。E2086は、「デエビゴ」の開発を通じて獲得した独自のオレキシンプラットフォームを活用し、オレキシン作動性神経を活性化する選択的オレキシン2受容体作動薬として創製されました。E2086は、オレキシン受容体の活性を高めることによってナルコレプシーの病態に作用し、当事者様の症状を改善することが期待されています。E2086は、ナルコレプシータイプ1を対象とした臨床第Ib相試験において、患者様の日中の覚醒度を改善する可能性を示唆するデータを示し、世界睡眠学会(World Sleep 2025)において発表しています4。
当社は、神経領域を重点疾患領域と位置づけており、不眠症やナルコレプシーを含む睡眠・覚醒障害などのアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対して、革新的な治療薬を一日も早く創出し、当事者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。
以上
<参考資料>
1. 日本における希少疾病用医薬品の指定制度について
希少疾病用医薬品の指定制度は、医療上の必要性が高いにも関わらず、患者数が少なく、研究開発が進まない医薬品等の開発を支援することを目的としています。医薬品医療機器等法第77条の2に基づく指定要件として、対象患者数が国内において5万人未満であること、代替する適切な医薬品等がないこと、又は既存の医薬品等と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること、対象疾病に対して、当該医薬品等を使用する根拠があり、開発計画が妥当であることが定められています。具体的な支援内容としては、優先的な治験相談および優先審査の実施、申請手数料の減額、再審査期間の延長、試験研究費への助成金交付、税制措置上の優遇措置があります。
2. ナルコレプシーについて
ナルコレプシーは、慢性的な睡眠障害であり、カタプレキシー(情動脱力発作)を伴うタイプ1と、伴わないタイプ2の2つに分類されます。タイプ1の病因は、視床下部に存在するオレキシン産生ニューロンの自己免疫性破壊であると考えられており、このようなオレキシン欠乏症のある方は、オレキシン作動性ニューロンの消失および脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)中オレキシン濃度の低下を伴い、日中の過度の眠気(excessive daytime sleepiness:EDS)を示すことが知られています。タイプ2の病因は未解明ですが、タイプ2においてもオレキシンシ神経伝達低下の可能性が示唆されています3。
日本におけるナルコレプシーの患者様数は、調査に用いられたデータにより異なりますが、株式会社JMDCの保険者データベースを用いた調査によると、調査対象期間中に連続した2カ月以上の医療請求が発生した患者様を対象とした場合は約2万3千人と算出され5、12カ月間に2件以上の医療請求があった患者様を対象とした場合は約4万6千人と推定されます2。
3. E2086 について
E2086は、当社創製の新規選択的オレキシン2受容体作動薬です。前臨床試験において、覚醒時間の統計学的に有意な増加およびカタプレキシー発作率の有意な減少が示されています。また、ナルコレプシータイプ1の患者様を対象に実施した臨床第Ib相試験において、プラセボ又は既存薬(モダフィニル)に比較して、EDSを有意に抑制することが示されました4。
参考文献
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1
Maski. K, et.al. Listening to the Patient Voice in Narcolepsy: Diagnostic Delay, Disease Burden, and Treatment Efficacy. J. Clinical Sleep Medicine. 2017, 13 (3) p419-, https://jcsm.aasm.org/doi/pdf/10.5664/jcsm.6494
- 2
Kadotani H, Matsuo M, Tran L, Parsons VL, Maguire A, Crawford S, Ghosh S, Dave S. Epidemiology of narcolepsy and idiopathic hypersomnia in Japan: A retrospective analysis of health insurance claims from the Japan Medical Data Center. Sleep Med. 2025; 126: 25–31.
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3
Thannickal TC, Nienhuis R, Siegel JM. Localized loss of hypocretin (orexin) cells in narcolepsy without cataplexy. Sleep. 2009; 32: 993–8.
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4
World Sleep 2025における E2086口頭発表のハイライトー2025年9月11日 https://www.eisai.co.jp/ir/library/presentations/pdf/4523_250911.pdf
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5
Imanishi A, Kamada Y, Shibata K, Sakata Y, Munakata H, Ishii M. Prevalence, incidence, and medications of narcolepsy in Japan: a descriptive observational study using a health insurance claims database. Sleep Biol Rhythms. 2022; 20: 585–94.