レカネマブの継続治療、皮下注射初期投与、および実臨床使用経験のデータを第18回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)において発表当社のアルツハイマー病に対する充実した臨床パイプラインからの最新知見:レカネマブの長期治療と治療を10年間継続した場合に推定される進行抑制効果の検討、皮下注射による初期投与の安全性、期待されるベネフィットと長期治療の可能性
レカネマブが可溶性アミロイドβプロトフィブリルに与える影響やALZ-NETレジストリを含む実臨床研究から得られた知見を発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2025年12月1日から12月4日に米国・サンディエゴおよびバーチャルで開催される第18回アルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer’s Disease Conference:CTAD)において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル*抗体レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」)を含む、当社のアルツハイマー病(AD)パイプラインおよび研究の成果として、8件の口頭発表および19件のポスター発表を行うとともに、1件のシンポジウムを主催することをお知らせします。

 

主な口頭発表

  • 継続治療:12月2日(火)午後5時05分および12月3日(水)午後2時40分:レカネマブ継続投与のベネフィットと臨床第Ⅲ相試験データに基づき治療を10年間継続した場合に推定される進行抑制効果の新たな解析結果を発表します。(LB12、LB21)
  • 皮下注射初期投与:12月3日(水)午後3時10分から3時50分(米国太平洋時間)に開催されるlate-breaking symposium「早期ADに対するレカネマブ皮下注射による投与開始:新たな選択肢による当事者様ケアの最適化」では、皮下注射による初期投与で期待されるベネフィットに加え、薬物動態および安全性に関する知見を紹介します。(LB Symposium2)
  • 実臨床における使用経験:12月4日(木)午前11時40分:日本で実施中の特定使用成績調査(全例調査)の中間解析について発表を行います。(OC30)
  • Etalanetug (E2814):12月1日(月)午後4時35分および12月3日(水)午後2時25分に行われるlate-breaking口頭発表では、ADにおけるetalanetugの臨床試験の進捗を報告し、DIAD(顕性遺伝アルツハイマー病)における新規血漿タウバイオマーカーへの影響と血液ベースのスクリーニングアルゴリズムの活用についても取り上げます。(LB3、LB20)
  • 作用機序関連:12月2日(火)午後1時40分に予定されている口頭発表では、Clarity AD試験におけるレカネマブ投与が可溶性Aβプロトフィブリルに与える影響について発表します。(OC5) 

主なポスター発表

  • 実臨床における使用経験:12月1日(月)午後3時00分から12月2日(火)午後5時30分に開催されるポスターセッションでは、ALZ-NETレジストリを用いたレカネマブの試験におけるベースライン特性および安全性に関する速報の概要を発表します。(P055)

  エーザイのチーフクリニカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.は、「レカネマブの長期データと実臨床における経験が蓄積されるにつれ、継続治療により疾患の進行を抑制する作用が判明しつつあります。レカネマブはプロトフィブリルとアミロイドプラークの双方をターゲットとするAD治療薬で、疾患の根本的なプロセスに継続的に働きかけることができます。さらに、私たちは、新規投与方法、プレクリニカルAD段階の当事者様に対する試験、異なる治療ターゲットの評価を進めており、ADへの理解を深め、当事者様とそのご家族の皆様のニーズにより応える新たなオプションを届けるという当社の一貫した取り組みを示しています」と述べています。

 

その他の口頭発表 

バイオマーカーおよび画像診断

セッション日時タイトル、アブストラクト番号

12月3日(水)午前9時55分

内因性MTBR-tau243と血漿pTau217の組み合わせによる、アミロイド陽性早期ADにおける局所タウPET負荷の定量的予測精度の向上(OC11

 

プレクリニカルAD

セッション日時タイトル、アブストラクト番号

12月4日(木)午前11時00分

プレクリニカルADにおける計測可能かつ効率的な適格被験者の絞り込み:AHEAD 3-45モデル(Symposium 5

 

その他のポスター発表 

レカネマブ

ポスター発表日タイトル、アブストラクト番号

12月1日(月)- 12月2日(火)

プレクリニカルAD試験の被験者組み入れパターンの解析(P006)

12月1日(月)- 12月2日(火)

レカネマブによる早期ADの症状維持と改善:米国多施設による後ろ向きリアルワールド研究のサブ解析 (P049)

12月1日(月)- 12月2日(火)

ベースライン時のアミロイド蓄積量が低い当事者様に対するレカネマブの長期ベネフィット:推定される進行抑制効果 (P052)

12月1日(月)- 12月2日(火)

米国における早期AD当事者様へのレカネマブオートインジェクターによる皮下注射に対する当事者様、ケアパートナーおよび医療従事者の受容性 (P053)

12月1日(月)- 12月2日(火)

New England Alzheimer’s Disease Centerにおける実臨床でのレカネマブによるAD治療の有効性、安全性、および当事者様報告の結果 (P072)

12月1日(月)- 12月2日(火)

レカネマブとドナネマブによるアミロイド関連画像異常(ARIA)リスクの比較および潜在的影響 (P096)

12月3日(水)

Neuroclin Glasgowで実施したAHEAD 3-45試験のC2N適格性、ApoE遺伝子型の特定、アミロイド確認結果 (P256)

12月3日(水)

ApoE4非保有者とヘテロ接合体保有者におけるADの進行に対するレカネマブによる長期治療効果のシミュレーション (P278)

12月3日(水)

神経力学的定量システム薬理学(QSP)モデルによるClarity AD試験の48カ月のデータに基づくレカネマブ継続投与のベネフィットの向上 (P279)

12月4日(木)

AD治療センターにおけるレカネマブ皮下注射の臨床アウトカムと当事者様の経験 (P342)

12月4日(木)

米国の早期AD当事者様に対するレカネマブ皮下注射と静注内投与の社会的コストと効率の比較 (P361)

 

Elatanetug (E2814)

ポスター発表日タイトル、アブストラクト番号

12月4日(木)

病的タウ伝播の動物モデルにおけるetalanetugマウス型抗体のエフェクター機能が有効性に与える影響(P390)

 

バイオマーカーおよび画像診断

ポスター発表日タイトル、アブストラクト番号

12月1日(月)- 12月2日(火)

PrismGuide APOE遺伝型判定キットの分析的および臨床的検証:臨床第Ⅲ相Clarity AD試験の被験者サンプルを用いた解析(P092)

Sysmex社との共同研究

12月3日(水)

プラットフォーム横断的なCSFプロテオミクスが示す再現性の高いバイオマーカーおよびADでのアミロイドとタウを超えた新たなメカニズム (P276)

 

リスク因子、診断、および早期AD治療

ポスター発表日タイトル、アブストラクト番号

12月1日(月)- 12月2日(火)

医療提供者の視点から見たARIA管理の負担に関するデルファイ専門家パネル調査 (P103)

12月3日(水)

ADによる軽度認知障害および認知症当事者様における機能低下と全死因死亡率との関連:実臨床における検討 (P304)

12月4日(木)

日本におけるADの介護負担および経済的な負担 (P377)

12月4日(木)

中国におけるADに対する抗アミロイド療法の治療体制およびケア提供に関する医師の認識 (P379)

 

 ポスターの閲覧時間:12月1日(月)の午後3時00分から12月2日(火)の午後5時30分、12月3日(水)は午前7時15分から午後5時30分、12月4日(木)は午前7時15分から午後5時00分です。

 

*プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を遅らせる可能性があると考えられています2

 

<参考資料>

    1. 1.    レケンビについて

     「レケンビ」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。

     「レケンビ」は、ADによる軽度認知障害または軽度認知症に係る適応で、日本、米国、欧州(EU)、中国、韓国、台湾、サウジアラビアなど51の国と地域で承認を取得し、9カ国で申請を行っています。18カ月間の隔週投与による初期治療後の4週に1回のIV維持投与について、米国、中国等において承認を取得し、4つの国と地域で申請中です。米国において、2025年8月に皮下注射製剤「LEQEMBI IQLIK」による維持投与の承認を取得し、2025年9月に「LEQEMBI IQLIK」による初期治療からの投与を可能とする段階的申請も開始しました。

     

     2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する顕性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

     

    1. 2.    エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

     エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

     

    1. 3.    エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
       2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

     

    参考文献

    1. 1.    Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021; 12:3451. doi: 10.1038/s41467-021-23507-z.
    2. 2.    Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer’s Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.