抗アミロイドβ抗体レカネマブの創薬研究が「第9回バイオインダストリー大賞」を受賞

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、当社とBioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)が創製した早期アルツハイマー病(早期AD*)を適応とする、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)モノクローナル抗体レカネマブ(製品名:「レケンビ®」)の創薬研究が、一般財団法人バイオインダストリー協会より「第9回 バイオインダストリー大賞」を受賞したことをお知らせします。

 

 同賞は、バイオインダストリーの発展に大きく貢献した、または今後の発展に貢献すると期待される業績を表彰するもので、今年で9回目となります。今回の受賞は、「1992年に提唱されたADの原因と進行メカニズムの代表的な仮説であるアミロイドカスケード仮説に沿って、アークティックミューテーションを起点に、特に神経毒性の強いAβプロトフィブリルをターゲットに鋭意開発を進めたレカネマブの成功は、日本発の世界に打って出る創薬研究の成果であり、国内外のバイオインダストリーの発展への貢献が期待される」と評価されました。

 

 ADは進行性の重篤な疾患であり、当事者様だけでなく、ケアパートナー、そして社会にも大きな影響を及ぼすグローバルなヘルスケア課題です。当社は、企業理念である「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」のもと、当事者様とそのご家族に寄り添いながら、認知症領域における約40年にわたる創薬活動に加えて、医療関係者をはじめ、学会、当事者様団体、ケアセンター、健診企業、診断企業など、さまざまなステークホルダーズと協働し、ADの啓発、早期診断・治療の実現をめざす認知症エコシステムの構築を推進し、その難題にチャレンジしてきました。当社は、「レケンビ」をより多くの必要とする早期AD当事者様にお届けするとともに、認知症エコシステムの構築を加速させ、引き続き認知症の諸課題に対するポジティブなインパクトを創出してまいります。

 

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェン・インク社(米国)が共同商業化・共同販促を行います。

 

 * アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害または軽度認知症の総称

    

【受賞テーマ】

新規アルツハイマー病治療薬、抗アミロイドβ抗体レカネマブの開発

 

【受賞者】

木村 禎治(エーザイ株式会社 上席執行役員 グローバルADオフィス ヘッド)

Lars Lannfelt(ウプサラ大学 名誉教授)

加藤 弘之(エーザイ株式会社 取締役)

小山 彰比古(エーザイ株式会社 理事 DHBL クリニカルリサーチ デジタルイノベーション ヘッド)

小川 智雄(エーザイ株式会社 執行役員 メディカル本部 本部長)

 

以上

 

 

<参考資料>

  1. 1. レカネマブについて

 レカネマブは、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります2。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています3

 

 レカネマブは、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾等、45の国と地域で承認を取得しており、11カ国で申請中です。2025年1月、米国において、静注(IV)維持投与に関する生物製剤一部変更申請(sBLA)が承認され、レカネマブは18カ月間の隔週投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回の維持投与レジメンへの移行を検討するか、もしくは10mg/kgの隔週投与レジメンを継続することができるようになりました。皮下注射製剤維持投与について、2025年1月に生物製剤承認申請(BLA)が米国食品医薬品(FDA)に受理され、PDUFAアクションデートは2025年8月31日に設定されました。

 

 2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

 

  1. 2. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

 

  1. 3. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

  1. 1. Sehlin D, Englund H, Simu B, Karlsson M, Ingelsson M, Nikolajeff F, Lannfelt L, Pettersson FE. Large aggregates are the major soluble Aβ species in AD brain fractionated with density gradient ultracentrifugation. PLoS One. 2012;7(2):e32014. doi: 10.1371/journal.pone.0032014. Epub 2012 Feb 15. PMID: 22355408; PMCID: PMC3280222.
  2. 2. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
  3. 3. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.