「レンビマ®」(レンバチニブ)と「キイトルーダ®」(ペムブロリズマブ)に化学療法を加えた併用療法に関する、胃食道腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相LEAP-015試験の状況について

エーザイ株式会社

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA

  

 エーザイ株式会社(本社 東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(北米以外ではMSD)は、このたび、エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)に化学療法を加えた併用療法について、局所進行切除不能または転移性ヒト上皮増殖因子受容体2型(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2: HER2)陰性胃食道腺がんの一次治療を対象とする臨床第Ⅲ相LEAP-015試験の状況をお知らせします。

 

 「レンビマ」と「キイトルーダ」に化学療法を加えた併用療法は、本試験の中間解析において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)と、重要な副次評価項目である奏効率(Overall Response Rate: ORR)について、標準療法の化学療法と比較して統計学的に有意な改善を示しました。試験は継続され、その後の最終解析において、もう一つの主要評価項目である全生存期間(Overall Survival: OS)が未達となりました。なお、本併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されているものと同様でした。引き続き、本試験データに関するすべての評価を進め、その結果については今後の学会で発表していきます。

 

 MSD研究開発本部グローバル臨床開発のバイスプレジデントであるGregory Lubiniecki博士は、「局所進行切除不能または転移性胃食道腺がんは、依然として治療が難しい疾患であり、世界でのがんによる死亡の主な原因となっています。これらの研究結果は、本併用療法に関する我々の理解を深め、より多くのがん患者さんの予後を改善するために努力する私たちの将来の研究に役立ちます」と述べています。

 

 Eisai Inc.のシニアバイスプレジデントであるオンコロジーグローバル臨床開発リードCorina Dutcus M.D.は、「胃がんや胃食道がんは、不均質な腫瘍であり予後不良のため、依然として課題を抱えています。LEAP-015試験では、レンビマとキイトルーダに化学療法を加えた併用療法は、これらの患者様において、全生存期間の統計学的に有意な延長は示せませんでしたが、無増悪生存期間や奏効率を改善したことは意味のある結果であると受け止めています。これらの結果は、複雑な本疾患に関するサイエンティフィックコミュニティの理解を深め、オンコロジー研究における貴重な知見の蓄積につながります。本研究に参加し多大なる貢献をいただいた患者様、介護者様、および治験責任医師の皆様に深く感謝します」と述べています。

 

 「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、日米欧をはじめとする世界各国において、進行腎細胞がんおよび進行子宮内膜がん(日本においては子宮体がん)に係る適応で承認を取得しています。両社は、LEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを通じて、本併用療法の肝細胞がん、食道がんにおける複数の臨床試験を実施中です。

 

 今回のLEAP-015試験の結果は、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法の現在承認されている適応症、ならびに他の進行中のLEAP臨床プログラムの試験に影響を与えるものではありません。

 

以上

  

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • Merck & Co., Inc. Rahway, NJ, USA

    Media Relations

    Julie Cunningham: +1-(617) 519-6264

    John Infanti: +1-(609) 500-4714

  

<参考資料>

LEAP-015試験について

 本試験(ClinicalTrials.gov, NCT04662710)は、局所進行切除不能または転移性胃食道腺がんの一次治療として、「レンビマ」と「キイトルーダ」に化学療法を加えた併用療法を対照薬の化学療法と比較して評価する、無作為化、非盲検の臨床第Ⅲ相試験です。本試験は、安全性評価パート(パート1)とメインパート(パート2)で構成されています。パート2において、主要評価項目は、腫瘍のPD-L1 Combined Positive Score (CPS)が1以上の患者様およびすべての患者様を対象とした、OSおよびRECISTv1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準)に基づく独立中央画像判定によるPFSでした。副次評価項目には、腫瘍のPD-L1 CPSが1以上の患者様およびすべての患者様を対象とした、RECISTv1.1に基づく独立中央画像判定による奏効率および奏効期間、および安全性でした。パート2において、880名の患者様は、下記のように1:1で無作為に割り付けられました。

  • レンビマ+キイトルーダ+化学療法:
    ・ 導入療法期: 約12週
     ✓ 「レンビマ」(8 mg、1日1回経口投与)+「キイトルーダ」(400 mg、6週ごと静脈内投与)を2サイクル +化学療法(CAPOXまたはmFOLFOX6)
     ✓  CAPOX:カペシタビン(1000 mg/m2、3週ごと1日目から14日目に1日2回経口投与)+オキサリプラチン(130 mg/m2、3週ごと静脈内投与)を4サイクル
    または
     ✓ mFOLFOX6:5-フルオロウラシル(5-FU)(400 mg/m2 、急速静脈内投与、その後 2週ごと2400 mg/m2を持続静脈内投与)+ロイコボリン(400 mg/m2、2週ごと持続点滴静脈内投与)またはレボロイコボリン(200 mg/m2、2週ごと持続点滴静脈内投与)+オキサリプラチン(85 mg/m2、2週ごと静脈内投与)を6サイクル
      
    ・ 維持療法期:
     ✓ 「レンビマ」(20 mg、1日1回経口投与)+「キイトルーダ」(400 mg、6週ごと静脈内投与)を最大で16サイクル
  • 化学療法(CAPOXレジメンまたはmFOLFOX6レジメンのどちらか一方を上記方法で投与、最大のサイクル数は、各国/地域の基準に従うものとする) 

胃がんについて

 胃がんは長年にわたってゆっくりと進行する傾向があり、ほとんど初期症状がなく、その結果、ほとんどの場合、進行した段階まで発見されず1,2、患者様の70%以上が進行期にあります3。多くの胃がんは腺がん(90~95%)であり、粘膜として知られる胃の最内層の細胞から発生します1。胃がんは患者様数が世界で5番目に多いがんで、がんによる死亡原因の第5位であり、2022年には世界で約 96万9千人が新たに診断され、約66万人が亡くなったと推定されています4。日本では、2022年に約12万6千人が新たに診断され、約4万4千人が亡くなったと推定されています5。米国では、2024年に約2万7千人が診断され、約1万1千人が亡くなられると推定されています6。米国における進行胃がんと診断された患者様の5年生存率はわずか7%です7

  

食道がんについて

 食道がんは患者様数が世界で11番目に多いがんであり、がんによる死亡原因の第7位です4。2022 年には世界で約51万1千人が新たに診断され、約 44万5千人が亡くなったと推定されています4。日本では、2022年に約2万人が新たに診断され、約1万2千人が亡くなったと推定されています5。米国では、2024年に約2万2千人が診断され、約1万6千人が亡くなられると推定されています8。米国における進行食道がんと診断された患者様の5年生存率はわずか6%です9。腺細胞(粘液を作る細胞)で発生するがんは腺がんと呼ばれ、しばしば食道の下3分の1(胸部食道下部)で見つかります10。腺がんは米国で最も一般的な食道がんであり、世界の他の地域でもその発生率が急速に増加しています11,12

 

「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性を示しました。「レンビマ」が取得している適応は以下のとおりです。

 

甲状腺がん

  • 単剤療法の適応(日本、米国、欧州、中国、アジアなどで承認を取得)
    日本:根治切除不能な甲状腺癌
    米国:局所再発、転移性、または進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん
    欧州:成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)

肝細胞がん

  • 単剤療法の適応(日本、米国、欧州、中国、アジアなどで承認を取得)
    日本:切除不能な肝細胞癌
    米国:切除不能な肝細胞がんに対する一次治療
    欧州:進行性または切除不能な肝細胞がんの成人患者に対する一次治療

胸腺がん

  • 単剤療法の適応(日本で承認を取得)
    日本:切除不能な胸腺癌

腎細胞がん(欧州では、「Kisplyx®」の製品名で発売)

  • エベロリムスとの併用療法の適応(米国、欧州、アジアなどで承認を取得)

    米国:1レジメンの血管新生阻害薬の前治療歴を有する成人での進行腎細胞がん
    欧州:1レジメンの血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした薬剤の前治療歴を有する成人での進行腎細胞がん

  • 「キイトルーダ」との併用療法の適応(日本、米国、欧州、アジアなどで承認を取得)

    日本:根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
    米国:成人の進行腎細胞がんに対する一次治療
    欧州:成人の進行腎細胞がんに対する一次治療

 子宮内膜がん

  • 「キイトルーダ」との併用療法の適応(日本、米国、欧州、アジアなどで承認を取得)
    日本:がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌
    米国:治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がん
    欧州:治療ラインに関わらず、プラチナ製剤を含む前治療中またはその後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な成人の進行性または再発性子宮内膜がん

「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)について

 「キイトルーダ」は、自己の免疫力を高め、がん細胞を見つけて攻撃するのを助ける抗programmed death receptor-1(PD-1)抗体です。「キイトルーダ」はPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体です。Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAは業界最大のがん免疫療法臨床研究プログラムを行っており、現在1,600を超える「キイトルーダ」の臨床試験を実施し、幅広い種類のがんや治療セッティングを検討しています。「キイトルーダ」の臨床プログラムでは、さまざまながんにおける「キイトルーダ」の役割や、「キイトルーダ」による治療効果が得られる可能性を予測する因子について模索しており、さまざまなバイオマーカーの模索も行っています。

 

エーザイとMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAによる戦略的提携について

 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)は、「レンビマ」のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ」との併用療法における共同開発、共同製造、共同販促を行います。

 両社は、LEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを通じて、本併用療法の肝細胞がん、食道がんにおける複数の臨床試験を実施中です。

 

エーザイのがん領域の取り組みについて

 エーザイは、「がん領域」を戦略的重要領域の一つとし、Deep Human Biology Learning創薬体制のもと、ヒューマン・バイオロジーに基づき、「微小環境」「タンパク質恒常性」「細胞系譜や細胞分化」などの創薬領域(ドメイン)における抗がん剤の研究開発にフォーカスしています。これらのドメインから新たな標的や作用機序を有する革新的新薬を創出し、がんの治癒の実現に向けて貢献することをめざしています。

 

エーザイについて

 エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

 

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAのがん領域における取り組み

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAでは、日々、科学的知見に基づき、どのような段階のがんであっても患者さんを救うことができる革新的な新薬の発見に取り組んでいます。オンコロジーのリーディングカンパニーとして、当社は25以上の新規メカニズムからなる多様なパイプラインに支えられながら、科学的な機会と医療ニーズが集束する研究を追求しています。30以上のがん種にまたがる最大級の臨床開発プログラムにより、当社は、オンコロジーの未来を形づくる画期的なサイエンスの発展に努めています。臨床試験への参加、スクリーニング、治療に対する障壁に対処することで、私たちは緊急性をもって格差の縮小に取り組み、患者さんが質の高いがん医療を受けられるよう支援しています。私たちの揺るぎないコミットメントこそが、より多くのがん患者さんの生命を救うという目標の実現に近づくことになるのです。詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。

 

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAについて

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外の国と地域ではMSD)は、最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善するというパーパスのもとに結束しています。130年以上にわたり、重要な医薬品やワクチンの発見を通して人類に希望をもたらしてきました。私たちは、世界トップクラスの研究開発型バイオ医薬品企業を目指し、人類や動物の疾患予防や治療に寄与する革新的なヘルスケア・ソリューションを提供するために、研究開発の最前線で活動しています。私たちは、多様かつ包括的な職場環境を醸成し、世界中の人々と地域社会に、安全で持続可能かつ健康な未来をもたらすため、責任ある経営を日々続けています。詳細については当社ウェブサイトやMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAのX(旧Twitter)FacebookInstagramYouTubeLinkedInをご参照ください。

 

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの将来に関する記述

 このニュースリリースには、米国の1995年私的証券訴訟改革法(the Private Securities Litigation Reform Act of 1995)の免責条項で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの記述は、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの経営陣の現時点での信条と期待に基づくもので、相当のリスクと不確実性が含まれています。新薬パイプラインに対する承認取得またはその製品化による収益を保証するものではありません。予測が正確性に欠けていた場合またはリスクもしくは不確実性が現実化した場合、実際の成果が、将来に関する記述で述べたものと異なる場合も生じます。

 リスクと不確実性には、業界の一般的な状況および競争環境、金利および為替レートの変動などの一般的な経済要因、医薬品業界の規制やヘルスケア関連の米国法および国際法が及ぼす影響、ヘルスケア費用抑制の世界的な傾向、競合他社による技術的進歩や新製品開発および特許取得、承認申請などの新薬開発特有の問題、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAによる将来の市況予測の正確性、製造上の問題または遅延、国際経済および政府の信用リスクなどの金融不安、画期的製品に対するMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの特許権やその他の保護の有効性への依存、特許訴訟や規制措置の対象となる可能性等がありますが、これらに限定されるものではありません。

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAは、新たな情報、新たな出来事、その他いかなる状況が加わった場合でも、将来に関する記述の更新を行う義務は負いません。将来に関する記述の記載と大きく異なる成果を招くおそれがあるこの他の要因については、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAに関するForm 10-Kの2023年度年次報告書および米国証券取引委員会(SEC)のインターネットサイト(www.sec.gov)で入手できるSECに対するその他の書類で確認できます。