「ロゼバラミン®筋注用25mg」(一般名:メコバラミン)について、
日本において筋萎縮性側索硬化症用剤として製造販売承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン®筋注用25㎎」(一般名:メコバラミン)について、日本において「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」の効能・効果で、製造販売承認を取得したことをお知らせします。本剤は、2022年5月に希少疾病用医薬品に指定され、2024年1月に承認申請を行い、今回の承認取得に至りました。

 

 本承認は、国立大学法人徳島大学(以下、徳島大学)の梶龍兒特任教授(主任研究者)、徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床神経科学分野 和泉唯信教授(治験調整医師)、および千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学 桑原聡教授(治験調整医師)らの研究チームが医師主導治験として実施した、ALS患者様130人を対象とした多施設共同、プラセボ対照、二重盲検、無作為化臨床第Ⅲ相試験(The Japan Early-Stage Trial of Ultrahigh-Dose Methylcobalamin for ALS: 以下、JETALS)の結果に基づいています。

 JETALSの結果、メコバラミン50mg群は、主要評価項目である観察期終了時から治療期16週時の改訂ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)合計点数の変化量において、プラセボ群に対して統計学的に有意な低下抑制を示しました(約43%の低下抑制、p=0.01)1。副作用の発現頻度はプラセボ群で1.6%、メコバラミン50mg群で7.7%でした。メコバラミン50mg群で認められた副作用は、便秘、注射部位疼痛、発熱、心電図QT延長及び発疹が各1.5%でした2

 

 ALSは、運動ニューロンの障害により重篤な筋萎縮と筋力低下をきたす進行性の難治性神経変性疾患です。呼吸筋の麻痺による呼吸不全が主たる死亡原因で、人工呼吸器を装着しなければ発症後約2~5年以内に死に至る疾患です3。日本における患者数は約1万人と推定されています3。現在、確立された根治療法はなく、国内外で承認されている治療薬も限られており、アンメット・メディカル・ニーズが極めて高い難病です。

 

 当社は、神経領域を重点疾患領域と位置づけており、ヒューマン・ヘルスケア企業として、ALS患者様へ「ロゼバラミン」を新たな治療の選択肢としてお届けすることで、患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

 

以上

<参考資料>

1.   製品概要

1)製品名

ロゼバラミン®筋注用25㎎

 

2)一般名

メコバラミン

 

3)効能又は効果

筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制

 

4)用法及び用量

通常、成人には、メコバラミンとして50mgを1日1回、週2回、筋肉内に注射する。

 

2.   「ロゼバラミン」(一般名:メコバラミン、開発品コード:E0203)について

 メコバラミンは、「メチコバール®注射液500µg」として末梢性神経障害およびビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血の適応で承認・販売されています。また、「メチコバール®錠250µg」、「メチコバール®錠500µg」、「メチコバール®細粒0.1%」が末梢性神経障害の適応を有しています。メコバラミンの筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)の病態に対する作用機序については解明されていませんが、非臨床研究の結果から、神経保護作用、神経軸索再生作用により有効性を示す可能性が示唆されています。1990年代より厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業の神経変性疾患に関する研究班において、ALSに対する高用量メコバラミンの臨床研究が実施されました。「メチコバール」としての承認用量の50倍~100倍量である1回25mg~50mgのメコバラミンの筋肉内投与による短期および長期試験において、高用量メコバラミンがALSに対して臨床効果を示す可能性が示唆されたことを受け、当社は2006年より臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験(761試験)を実施しました。2015年5月、761試験の結果を基に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に新薬承認申請を行いましたが、追加試験が必要との判断により、2016年3月に新薬承認申請を取り下げました。その後、医師主導治験として実施された臨床第Ⅲ相試験・JETALSにおいて良好な試験結果が得られたことを受けて、当社は徳島大学と協議の上、2024年1月に日本におけるALSに対する承認申請を行い、今回の承認取得に至りました。

 

3.   臨床第Ⅲ相試験・JETALSについて

 本試験は、多施設共同、プラセボ対照、二重盲検、無作為化臨床第Ⅲ相試験として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に対する、高用量メチルコバラミン(メコバラミン)の有効性、安全性を検証する目的で実施された「高用量メチルコバラミンの筋萎縮性側索硬化症に対する第Ⅲ相試験」(Japan Early-stage Trial of Ultrahigh-Dose Methylcobalamin for ALS: 以下、JETALS)の医師主導治験です1

    罹病期間1年以内で、Updated Awaji基準において、definite、probable、probable-laboratory supportedに該当し、ALS重症度基準1度又は2度、投与前12週間で改訂ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)合計点数が1点又は2点低下し、努力性肺活量(%FVC)が60%を超える、ALS患者様130人を対象に、メコバラミン50mg又はプラセボを週2回、16週間筋肉内投与しました2。主要評価項目である観察期終了時から治療期16週時のALSFRS-R合計点数の変化量は、メコバラミン50mg群で-2.7[95%信頼区間(CI): -3.9, -1.5]、プラセボ群で-4.6[95%CI: -5.8, -3.4]であり、変化量の差は2.0(95%CI: 0.4, 3.5; p=0.012)となり、メコバラミン50mgのプラセボに対する優越性が検証されました2。副作用の発現頻度はプラセボ群で1.6%(64例中1例)、メコバラミン50mg群で7.7%(65例中5例)でした。メコバラミン50mg群で認められた副作用は、便秘、注射部位疼痛、発熱、心電図QT延長及び発疹が各1.5%(65例中1例)でした2

 

 

1. Oki R, et al. Efficacy and safety of ultrahigh-dose methylcobalamin in early-stage amyotrophic lateral sclerosis a randomized clinical trial.JAMA Neurol.   2022;79(6):575-583.

2. 添付文書に基づく記載内容です。

3. 難病情報センター 筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2)

    https://www.nanbyou.or.jp/entry/52. Last accessed: September 2024