抗がん剤「タスフィゴ®錠35mg」(一般名:タスルグラチニブコハク酸塩)
日本においてFGFR2 融合遺伝子を有する胆道がんに係る効能・効果で製造販売承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、エーザイ創製の線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)選択的チロシンキナーゼ阻害剤「タスフィゴ®錠35mg」(一般名:タスルグラチニブコハク酸塩)について、日本において、「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌」の効能・効果で製造販売承認を取得したことをお知らせします。本剤は、日本において、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されており、2023年12月に製造販売承認申請を行っていました。

 

 本承認は、当社が日本および中国で実施した多施設共同、非盲検、単群の臨床第Ⅱ相試験(201試験)などの結果に基づいています。201試験では、ゲムシタビンをベースとした併用化学療法の前治療歴のある切除不能進行又は転移性のFGFR2融合遺伝子を有する胆管がん患者様63人が登録され、主要評価項目として奏効率(Objective Response Rate: ORR)、副次評価項目として安全性などが評価されました1。本試験における「タスフィゴ」の独立画像判定によるORRは、30.2%(90%信頼区間(CI):20.7-41.0)であり、事前に設定したORRの閾値(15%)を統計学的に有意に上回り、主要評価項目を達成しました。本試験で認められた「タスフィゴ」の主な有害事象(Treatment-emergent adverse events、発現率25%以上)は高リン血症(81.0%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(44.4%)、下痢(36.5%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加(31.7%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(28.6%)、口内炎(25.4%)でした。

 

 日本における胆道がんの患者様数は約2.2万人と推計され2,3、5年相対生存率が約25%と膵臓がんに次いで予後の悪い難治がんであり2、他のがんと比較して薬物療法の選択肢も限られ、アンメット・メディカル・ニーズの非常に高い疾患です。FGFR2融合遺伝子は、胆道がんの15~30%を占める肝内胆管がんの約14%に認められています4。遺伝子融合をはじめとするFGFRの遺伝子異常は、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性などに深く関与していることが知られており、胆道がんのほかにも様々ながんで認められていることから、有望な治療標的として注目されています。「タスフィゴ」は、FGFR1、2、3を選択的に阻害し、そのシグナルを遮断することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています5,6。非臨床研究においては、日本人の胆道がんを対象とした大規模なゲノム解析により国立がん研究センター研究所(所在地:東京都)が同定したFGFR2融合遺伝子を発現させた細胞株において、「タスフィゴ」の抗腫瘍効果が確認されています。なお、本適応に係るFGFR2融合遺伝子を検出するコンパニオン診断薬として日本ステリ株式会社(本社:東京都)の「AmoyDx® FGFR2 Gene Break-apart FISHプローブキット」が2024年8月に承認されています7

 

 当社は、日本において「タスフィゴ」をFGFR2融合遺伝子を有する胆道がん治療の新たな選択肢としてお届けすることで、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

   

以上

   

<参考資料>

1. 製品概要

製品名:タスフィゴ®錠35mg

一般名:タスルグラチニブコハク酸塩

効能又は効果:がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん

用法及び用量:通常、成人にはタスルグラチニブとして1日1回140mgを空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

 

2.「タスフィゴ®錠35mg」(一般名:タスルグラチニブコハク酸塩、開発品コード:E7090)について

 「タスフィゴ」は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)であるFGFR1、FGFR2、FGFR3に対して選択的阻害活性を示す経口投与可能な、当社筑波研究所創製の新規チロシンキナーゼ阻害剤です。本剤は、従来のFGFR阻害剤と異なり、ジメトキシフェニル基を持たない基本構造を有し、速度論的解析実験からFGFRに素早く、強力に結合し、かつ高い選択性を示す結合様式(タイプV)によるキナーゼ阻害作用により、抗腫瘍効果を現すことが推察されています5,6

 胆道がん適応に関する非臨床研究においては、国立がん研究センター研究所提供のFGFR2融合遺伝子FGFR2-AHCYL1FGFR2-KCTD1、FGFR2-BICC1またはFGFR2-TXLNAを発現させた細胞株NIH/3T3を使用しました。これらのモデルの足場非依存的増殖およびマウス皮下移植腫瘍増殖に対する「タスフィゴ」の作用を評価することで、FGFR2融合遺伝子陽性がんに対する「タスフィゴ」の抗腫瘍効果を確認しました6

日本において、エストロゲン受容体陽性HER2陰性の乳がん患者様を対象とした臨床第Ⅰ相試験が進行中です。

        

  1. Furuse J. et al. Pivotal single-arm, phase 2 trial of tasurgratinib for patients with fibroblast growth factor receptor (FGFR)-2 gene fusion-positive cholangiocarcinoma (CCA). 2024 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium; Abstract No. 471. https://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.2024.42.3_suppl.471
  2. 最新がん統計, 国立がん研究センター がん登録・統計
  3. 第23回全国原発性肝癌追跡調査報告(2014~2015)2023.
  4. Arai Y. et al., Fibroblast growth factor receptor 2 tyrosine kinase fusions define a unique molecular subtype of cholangiocarcinoma, Hepatology, 2014, 59, 1427-1434.
  5. Miyano SW. et al., E7090, a Novel Selective Inhibitor of Fibroblast Growth Factor Receptors, Displays Potent Antitumor Activity and Prolongs Survival in Preclinical Models, Molecular Cancer Therapeutics, 2016, 15, 2630-2639.
  6. Kawano S. et al., Antitumor Activity of Tasurgratinib as an Orally Available FGFR1-3 Inhibitor in Cholangiocarcinoma Models With FGFR2-fusion, Anticancer Research, 2024, 44, 2393-2406.
  7. AmoyDx® FGFR2 Break-apart FISH Probe Kit Approved as Companion Diagnostic for Eisai’s Tasurgratinib in Japan. Available at: https://www.amoydiagnostics.com/about/press-releases/245 Last accessed: September 2024.