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- 2024年7月23日
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2024年7月28日から8月1日に米国フィラデルフィアおよびバーチャルで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2024において、デュアルアクションを有する抗Aβプロトフィブリル*抗体レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」)の最新データを含む、当社のアルツハイマー病(AD)パイプラインの研究成果について、口頭発表4演題、ポスター発表15演題を発表することをお知らせします。また、レカネマブに関する2つのセッションを主催します。レカネマブは、プラークの速やかな除去作用に加えて毒性の高いプロトフィブリルにも選択的に結合するユニークなデュアル アクションを有しており、プラーク除去後も神経細胞傷害や神経細胞死を引き続き起こすプロトフィブリルを取り除き神経細胞の機能を持続的にサポートする唯一の治療薬です。
Perspectivesセッション:「早期ADに対するレカネマブの継続投与は現在のエビデンスベースで支持されるか?」
- 7月30日、16時15分から17時45分(米国東部夏時間)に開催される本セッションにおいて、当社は、以下の3つの重要なトピックについて最新のデータを発表します。
1)レカネマブの作用機序に関する現在のエビデンスは、継続投与の根拠となるか?
2)レカネマブ維持投与レジメンは、シミュレーションモデルにより裏付けられているか?
3)レカネマブの長期投与により治療ベネフィットが継続するエビデンスは存在するか? - Dennis Selkoe M.D.は、可溶性の凝集Aβ種であるオリゴマー、プロトフィブリル、ならびに拡散性フィブリルの毒性に焦点をあて、プラーク除去後も引き続き生成されるプロトフィブリルとオリゴマーに結合するレカネマブの作用機序に関する最新データをレビューします。また、臨床的およびバイオマーカーに対する有効性を維持するための継続治療について、メカニズムの観点からの正当性に関しても議論します。
- レカネマブの臨床第Ⅱ相201試験のコア試験終了後、非盲検長期継続投与試験(OLE)が開始されるまでの無投与期間(ギャップ期間)のデータから、レカネマブの継続投与の必要性が示唆されており、当社のYoufang Cao PhD.とLarisa Reyderman PhD.は、201試験と臨床第Ⅲ相Clarity AD試験の結果を統合した臨床薬理学のデータとそのモデリングの結果を発表します。
- Chris van Dyck M.D.は、本セッションのまとめとして、レカネマブの臨床第Ⅲ相Clarity ADのコア試験およびOLEにおける36カ月間の治療に関する最新結果を発表します。セッションの最後にADというアミロイドプラーク沈着前から始まりプラーク除去後も続く、進行性の神経変性疾患に対する継続治療のベネフィットについてパネルディスカッションが行われます。
Featured Researchセッション:「アミロイド除去を超えて:レカネマブ治療の長期投与によるイメージング、体液バイオマーカーに関する最新知見」
- 7月30日、14時から15時30分(米国東部夏時間)に開催される本セッションでは、デュアル アクションを有するレカネマブの長期治療による、イメージングと体液バイオマーカーに関する最新の知見を発表します。
- レカネマブのPKとアミロイドPETイメージングおよび全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBとの関係性を評価するPK/PDモデリングの最新結果と、Clarity AD試験のコア試験およびOLEにおけるタウPETの結果を、当社のBrian Willis PhD.とArnaud Charil PhD.が発表します。
- Nick Fox M.D.は、抗アミロイド療法により生じる脳容積変化とアミロイド除去との関係性について説明します。
- Charlotte Teunissen PhD.は、デュアル アクションを有するレカネマブの長期投与における血漿中の神経変性バイオマーカーのデータを示し、これらのバイオマーカーの変化から継続治療の必要性に関しても説明します。
エーザイのデピュティ・チーフクリニカルオフィサーであるMichael Irizarry博士は、「AAIC2024において、当社は、デュアル アクションを有するレカネマブの臨床第Ⅱ相、臨床第Ⅲ相試験とそれぞれのOLEから、レカネマブの継続投与による長期的な臨床的およびバイオマーカー上のベネフィットを検討した結果を発表する予定です。ADは持続的な神経毒性プロセスによって引き起こされる進行性の疾患です。早期かつ継続的な治療によりADの進行を遅らせることが可能であり、大変重要です。ADによる軽度認知障害(MCI)および軽度認知症は、より早期段階で診断、治療することで、当事者様が恩恵を受ける可能性がより高まります」と述べています。
エーザイの主なプレゼンテーション
■ Perspectivesセッション
早期ADに対するレカネマブの継続投与は現在のエビデンスベースで支持されるか?
7月30日(火)16時15分から17時45分(米国東部夏時間)
※左右にスクロールできます
セッションプログラム |
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レカネマブの作用機序に関する現在のエビデンスは、レカネマブ継続投与の根拠となるか? |
最新の臨床薬理学データとモデリングはレカネマブの継続投与をどのようにサポートするか? |
ADに対するレカネマブ維持投与レジメンは、神経力学的定量システム薬理学(QSP)モデルにより支持される。 |
レカネマブの長期投与によりベネフィットが継続するエビデンスは存在するか?
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質疑応答 |
レカネマブ治療によるアミロイド除去を超えた影響:長期投与におけるイメージング、体液バイオマーカーの最新知見
7月30日(火)14時から15時30分(米国東部夏時間)
※左右にスクロールできます
セッションプログラム |
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有効性のサロゲートマーカーとしてのアミロイドプラークの減少:セミ・メカニスティックモデルを用いたアミロイドPETとCDR-SBの変化の評価 |
レカネマブによるタウPETを指標とした脳内タウ蓄積の緩徐化 |
抗アミロイド療法試験における"逆説的"脳容積変化の理解 |
血漿中の神経変性バイオマーカーに対するレカネマブの長期投与効果 |
質疑応答 |
■ 口頭発表
※左右にスクロールできます
アセット/プロジェクト、
発表日時(米国東部夏時間) | トピック、アブストラクト番号 |
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レカネマブ
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レカネマブにより捕捉されるアミロイドβプロトフィブリルの神経変性をより強く反映するバイオマーカーとしての検討、他のプラーク関連バイオマーカーの違い
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レカネマブ
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レカネマブ、アミロイドにより誘発されるタウ病理、Clarity AD試験の脳脊髄液(CSF)中のMTBR-tau243
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E2027
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新規ホスホジエステラーゼ9(PDE9)阻害剤E2027(イルセノントリン)がアミロイド陽性および陰性レビー小体型認知症のCSFプロテオミクス・プロファイルに及ぼす影響
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AD一般 7月29日(月)8:00-8:10 |
米国の地域密着型施設における早期ADの診断と管理におけるアンメット・ニーズ
アブストラクト番号 #89135 |
■ ポスター発表
※左右にスクロールできます
アセット/プロジェクト、
発表日 | トピック、アブストラクト番号 |
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レカネマブ 7月28日(日) |
レカネマブ維持投与レジメンのモデルによる評価により、アミロイドプラークと疾患進行の継続的抑制の可能性
アブストラクト番号 #89308 |
E2814 7月30日(火) |
タウに結合したE2814の結晶構造
アブストラクト番号 #94773 |
E2511 7月28日(日) |
新規低分子化合物TrkAバイアスド・ポジティブ・アロステリック・モジュレーターE2511によるシナプスCSFバイオマーカーの調節に関する非臨床エビデンス
アブストラクト番号 #95071 |
E2025 7月28日(日) |
新規抗EphA4抗体E2025は、EphA4切断を促進し、ADトランスジェニックモデルにおけるタウ病理を抑制
アブストラクト番号 #94810 |
バイオマーカー 7月29日(月) |
早期ADにおける血漿pTau217を用いた局所脳タウ濃度の予測
アブストラクト番号 #95793 |
バイオマーカー 7月31日(水) |
実臨床における早期ADの確定診断ツールとしての血液バイオマーカーを評価する前向き多施設共同実施科学研究 アブストラクト番号 #88784 |
バイオマーカー 7月30日(火) |
米国のプライマリ・ケアにおけるADの早期発見の推進
アブストラクト番号 #86582 |
イメージング 7月31日(水) |
扁桃体と海馬内の特定基質の体積は脳Aβによって影響を受ける
アブストラクト番号 #92024 |
AD一般 7月28日(日) |
米国におけるADのヘルスケアコスト
アブストラクト番号 #86386 |
AD一般 7月29日(月) |
軽度認知障害の危険因子:電子カルテデータを用いて開発された予測モデル
アブストラクト番号 #85564 |
AD一般 7月29日(月) |
米国の地域密着型施設における早期ADの診断と管理の傾向
アブストラクト番号 #92630 |
AD一般 7月30日(火) |
軽度認知障害またはAD当事者における抗凝固療法の使用パターン アブストラクト番号 #86110 |
AD一般 7月30日(火) |
早期ADにおける疾患修飾のためのヘルスケアインフラの適応
アブストラクト番号 #94773 |
AD一般 7月31日(水) |
Critical Path for Alzheimer's Disease(CPAD)コンソーシアム:臨床試験デザインと情報に基づいた意思決定のためのデータ駆動型ソリューション
アブストラクトID #86145 |
AD一般 7月29日(月) |
早期ADの新しい治療法に対する当事者と医師の期待と展望:医師によるアンケート調査と当事者によるフォーカスグループインタビューの結果
アブストラクトID #86956 |
ポスターの閲覧時間は、発表日の15時30分から16時15分、休憩、昼食時間に設定されています。
* プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2。
以上
<参考資料>
1. レケンビ(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)について
「レケンビ」は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。「レケンビ」は米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエルで承認を取得しています。レカネマブについて、欧州(EU)など12の国と地域で承認申請を行っています。
「レケンビ」の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました3,4。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)であり、「レケンビ」はCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制しました。また、副次評価項目の一つである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者様が自立して生活する能力を介護者が評価するAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS MCI-ADL)においては、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められました。なお、「レケンビ」投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした。
2023年11月、エーザイは、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験OLEの24カ月データを発表し、「レケンビ」の投与を受けた当事者様が治療開始から24カ月後も引き続きベネフィットを示していることを示しました。Clarity AD試験の18カ月間のコア試験では、「レケンビ」投与群とプラセボ投与群の間で、CDR-SBを指標とした認知機能および日常生活機能の悪化を統計的に有意に抑制することが観察されました。コア試験後に続く、OLEの6カ月の時点において、「レケンビ」の投与を継続した群(早期開始群)とプラセボから「レケンビ」に切り替えた群(遅延開始群)の間のCDR-SBの差はOLEの間も維持され、「レケンビ」の投与により、早期開始群と遅延開始群で同様の疾患進行抑制を示しました。血液バイオマーカー(血漿中のAβ42/40比、ptau181、GFAP、NfL)の結果は遅延開始群においても改善の方向を示しました。
2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。
- 2. E2814について
E2814は抗MTBR(Microtubule binding region)タウ抗体です。E2814は、当社とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。E2814は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。E2814は、孤発性ADを含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発され、臨床第Ⅰ相試験を実施中です。また、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit:DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床第Ⅱ/Ⅲ相Tau NexGen試験も実施中です。
- 3. E2511について
E2511は、当社創製の新規低分子化合物で、神経成長因子(NGF)の細胞膜受容体tropomyosin receptor kinase A(TrkA)に直接結合し、ダメージを受けたコリン作動性神経の回復およびシナプス再形成を促すことを期待しています。臨床第Ⅰ相試験を実施中です。
- 4. E2025について
E2025は、当社創製のEphA4切断を促進する新規抗EphA4(エリスロポエチン産生肝細胞受容体A4)抗体です。E2025はグルタミン酸ニューロンのシナプスリモデリングを促進することを期待しています。臨床第Ⅰ相試験を実施中です。
- 5. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
- 6. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
参考文献
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1.
- Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
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2.
- Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
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3.
- Eisai presents full results of lecanemab Phase 3 confirmatory Clarity AD study for early Alzheimer's disease at Clinical Trials on Alzheimer's Disease (CTAD) conference. Available at: https://www.eisai.co.jp/news/2022/news202285.html
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4.van Dyck. C, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. The New England Journal of Medicine. DOI: 10.1056/NEJMoa2212948. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212948