第17回アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD™ 2023)において、レカネマブの安全性プロファイル、臨床結果、QOLの評価など、アルツハイマー病の研究に関する最新情報を発表レカネマブの早期アルツハイマー病を対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験における、抗血小板薬または抗凝固薬使用時のARIA発現、およびARIA-H単独の発現についての研究を発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗Aβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名、米国ブランド名「LEQEMBITM」)をはじめとする当社のアルツハイマー病(AD)ポートフォリオに関する最新研究成果について、口頭発表7演題を含む合計11演題を、3月28日から4月1日までスウェーデン・ヨーテボリおよびバーチャルで開催される「第17回アルツハイマー・パーキンソン病学会(International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases and related neurological disorders:AD/PD™ 2023)において発表することをお知らせします。レカネマブについては、大規模臨床第Ⅲ相Clarity AD検証試験の結果から、アミロイド関連画像異常(ARIA)の管理とモニタリング、および健康関連QOL指標(HRQoL)に関する研究などの新しい知見を発表します。また、進化を続けるAD治療をテーマに、エーザイ・シンポジウム「Patient Clinical Care Pathway in AD:Dialogue Amongst Experts」を開催します。

 

 エーザイのAlzheimer's Disease and Brain Health、Deputy Chief Clinical OfficerであるMichael Irizarry M.D.は、「レカネマブが健康関連QOLなどの臨床結果や安全性に与える影響は、実臨床におけるマネージメントにおいて示唆に富むものです。我々は、継続的な研究を通じて、ペイシャントジャーニーを改善しAD事者様の生活の質の向上に貢献したいと考えています。AD/PD2023では、レカネマブのClarity AD試験からの知見に加え、次世代の臨床ケアと診断パスウェイ、疾患の影響を受けるユニークな集団の調査、治療薬開発の加速など、アルツハイマー病と脳の健康に関する今後の重要な課題について、サイエンス・コミュニティと共有できることを楽しみにしています」と述べています。

 

レカネマブとADに関する主要なプレゼンテーション

  • Clarity AD試験におけるARIAに関する2演題の口頭発表(3月30日(木))
    • - ARIAを経験した被験者における抗血小板薬および抗凝固薬の使用を評価した解析結果
    • - Clarity AD試験におけるARIA-H単独事象(ARIA-Eを発現していない被験者でのARIA-Hの発現)の解析結果
  • Clarity AD試験データを用いて複数の指標により評価した介護者負担と健康関連QOL(Health Related Quality of Life)の研究に関する口頭結果(3月30日(木))
  • Aβプロトフィブリルの特性、レカネマブのユニークな結合特性とAβクリアランスのメカニズムに関する研究(3月31日(金))
  • 次世代のAD臨床ケアと診断パスウェイのデザイン:個々のAD当事者様のペイシェントジャーニーに向けた臨床的評価、生物学的評価、ならびにデジタルによる評価を組み合わせた新たなパスウェイ(3月31日(金))

エーザイ・シンポジウム Patient Clinical Care Pathway in AD:Dialogue Amongst Experts

 本シンポジウムでは、AD分野の著名な臨床専門家であるAlireza Atri博士、Sharon Cohen博士、Lutz Frölich博士により、ADの現状、進化する診断ワークフロー、適格な当事者様の特定、当事者様のニーズへの対応に関する議論を行います。本シンポジウムは、AD当事者様の臨床管理に関するガイダンスを提供するとともに、医師と当事者様の効果的なコミュニケーションを促進することを目的としています。(3月29日(水))

 

    

AD/PD 2023における当社の開発品と研究に関する発表

 

■口頭発表

※左右にスクロールできます

開発品・セッション・トピック・
予定日時(中央ヨーロッパ夏時間)
発表演題
レカネマブ
オンサイト・シンポジウム:
ADにおけるAβ標的治療法01
3月30日(木)セッション:13:50 – 15:50
発表:14:50 – 15:05

レカネマブ臨床第Ⅲ相Clarity AD試験:早期ADにおける抗血小板薬または抗凝固薬の併用時のARIA

レカネマブ
オンサイト・シンポジウム:
ADにおけるAβ標的治療法01
3月30日(木)セッション:13:50 – 15:50
発表:15:05 – 15:20
早期ADを対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験におけるレカネマブ投与当事者様のARIA-H単独の発現について
レカネマブ
オンサイト・シンポジウム:
ADにおけるAβとタウ標的治療法
3月30日(木)セッション:18:35 – 19:35
発表:19:05 – 19:20
レカネマブ Clarity AD:早期ADを対象とした無作為化二重盲検臨床第Ⅲ相試験のQoL評価結果
レカネマブ
オンサイト・シンポジウム:
ADにおけるAβ標的治療法02
3月31日(金)セッション:13:50 – 15:50
発表:14:35 – 14:50
レカネマブのAβプロトフィブリル選択的抗体作用機序とAD脳内における標的プロトフィブリルの特性について
レカネマブ
オンサイト・シンポジウム:臨床試験デザイン
3月31日(金)セッション:16:20 - 18:20
発表:17:35 - 17:50
プレクリニカルADにおけるアミロイド、タウと認知機能の悪化について

AD一般
オンサイト・シンポジウム:臨床試験デザイン
3月31日(金)セッション:16:20 – 18:20
発表:18:05 – 18:20

次世代のADの臨床ケア・診断パスウェイのデザイン
AD一般
オンデマンド・口頭発表:OD127、#2283
3月30日(木)セッション:7:00 – 8:30
経験的に導き出された構造的脳内ネットワークのハブによるMCIのアミロイド陽性被験者における進行予後の向上

 

■ポスター発表

※左右にスクロールできます

開発品・セッション・トピック・ポスター番号発表演題
AD一般
ポスタートピック:A05.I.、遺伝学、疫学:
その他
P0523、#604
米国における代表的実臨床データベースを用いたADの連続する病勢進行における移行確率の推計
AD一般
ポスタートピック:A05.I.、遺伝学、疫学:
その他
P0524、#609
米国におけるADの病勢進行に応じた自己負担額と間接費の評価
AD一般
ポスタートピック:K01.J.、認知症と
認知機能障害:その他
P1151、#1122
電子カルテのキーワードによるAD当事者様の特定を改善するための深層学習型自然言語処理アルゴリズム
AD一般
ポスタートピック:A03.N.、医薬品開発、
臨床試験:規制
P0325、#231
Critical Path for Alzheimer's Disease (CPAD) コンソーシアムにおけるpre-competitiveなデータ共有とコラボレーションによる医薬品開発の加速

 

■エーザイ・シンポジウム

※左右にスクロールできます

セッション・日時(中央ヨーロッパ夏時間)発表演題・演者
製薬企業シンポジウム 03 - Hall C
3月29日(水)
セッション: 17:20 - 19:20
Patient Clinical Care Pathway in AD:Dialogue Amongst Experts
演者:Alireza Atri、Sharon Cohen、Lutz Frölich

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェン・インクが共同商業化・共同販促を行います。

* プロトフィブリルは、75-5000Kdの可溶性Aβ凝集体です1

   

以上

 

<参考資料>

  1. 1.  レカネマブ(一般名、米国ブランド名:「LEQEMBI™」)について

 レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。レカネマブは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合し、脳内から除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。米国において、「LEQEMBI」は、2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得しました。LEQEMBIの適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。「LEQEMBI」による治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性のデータはありません。本適応症は、「LEQEMBI」で治療された当事者様で観察されたAβプラークの減少に基づき、迅速承認の下で承認されています。本迅速承認の要件として、検証試験による臨床的有用性の確認が必要となります。

 

 米国における処方情報はこちらから入手できます。

 

 Clarity AD試験は、主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しました。米国において、2023年1月6日に臨床第III相Clarity AD検証試験のデータに基づくフル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)をFDAに提出し、2023年3月3日に受理されました。本申請は優先審査に指定され、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデート(審査終了目標日)は2023年7月6日に設定されました。日本において、エーザイは、2023年1月16日に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認申請を行い、1月26日に厚生労働省より優先審査に指定されました。本申請においては、審査期間の短縮をめざし医薬品事前評価相談制度を活用しています。欧州においても、2023年1月9日に欧州医薬品庁(EMA)に販売承認申請(MAA)を提出し、1月26日に受理されました。中国においては、2022年12月に国家薬品監督管理局(NMPA)にBLAのデータ提出を開始し、2023年2月27日に優先審査に指定されました。

 

 レカネマブの皮下注射によるバイオアベイラビリティ試験は終了し、Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。

 2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。

 また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。

 

  1. 2.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

  1. 3.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

 

参考文献

1 Söderberg, L., Johannesson, M., Nygren, P. et al. Lecanemab, Aducanumab, and Gantenerumab — Binding Profiles to Different Forms of Amyloid-Beta Might Explain Efficacy and Side Effects in Clinical Trials for Alzheimer’s Disease. Neurotherapeutics (2022). https://doi.org/10.1007/s13311-022-01308-6. Accessed February 9, 2023