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- 2022年8月4日
エーザイ株式会社
バイオジェン・インク
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下 バイオジェン)は、このたび、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害および軽度AD(総称して早期AD)の治療薬として開発中の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について、エーザイが皮下注射製剤およびApoE4遺伝子型によるアミロイド関連画像異常(ARIA-E:浮腫/浸出)発現のモデリング・シミュレーションに関する最新知見を、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催されているアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2022において発表したことをお知らせします。
エーザイによる主要な発表は以下の通りです。
アブストラクト番号 #69438:健康成人におけるレカネマブ単回固定用量皮下投与の絶対的バイオアベイラビリティ
本試験は、健康成人を対象とした非盲検並行群間比較臨床第Ⅰ相試験で、30人の被験者を10mg/kg静脈内投与群に、29人の被験者(うち日本人5人)を700mg単回固定用量皮下投与群に無作為に割り付けました。レカネマブの単回皮下投与時の絶対的バイオアベイラビリティは49.7%(90%CI: 43.54 - 56.83)でした。皮下投与後のCmax(最高血中濃度)は、投与72時間後に観察され、静脈内投与の4分の1のレベルでした。このことは、約1時間かけて投与する静脈内投与に比べ、皮下投与後の吸収が比較的遅いことが反映された結果と考えられます。レカネマブの半減期は約7日であり、皮下投与と静脈内投与でほぼ同じ結果でした。有害事象の発現率は、皮下投与と静脈内投与で同様でした。中和抗体はいずれの投与でも観察されませんでした。日本人5人と日本人以外の薬物動態はほぼ同様でした。
アブストラクト番号 #69429: 早期ADを対象としたレカネマブの皮下投与量選択
本解析では、レカネマブの10㎎/kg bi-weekly静脈内投与とweekly固定用量皮下投与との同等性を評価するために、レカネマブへの暴露量をモデリングおよびシミュレーションしました。その結果、720㎎weekly皮下投与が、10㎎/kg bi-weekly静脈内投与と、同等の暴露量(AUC)であり、アミロイドPET SUVr(standardized uptake value ratio)によって測定される脳内アミロイドの減少も同程度の有効性である可能性が示されました。一方、暴露-反応モデルから、ARIA-Eの発現率とCmaxは相関していることが示されており、皮下投与後のCmaxが低いことから、レカネマブの皮下投与におけるARIA-Eの発現率は、静脈内投与に比較して低くなることが予想されます。
Virtual Developing Topics発表 アブストラクト #69402/セッションVDT-4-29:レカネマブ投与当事者様におけるApoE 4遺伝子型のARIA-E発現率に与える影響のモデル評価
本解析では、臨床第Ⅱ相201コア試験の結果を用いて、ApoE 4遺伝子型がARIA-Eに及ぼす影響をモデリング・シミュレーションによって検討しました。モデルの予測値は、臨床第Ⅱ相201非盲検長期投与試験(OLE試験)で新たにレカネマブ 10 mg/kg bi-weekly投与を開始した被験者で観察されたARIA-E発現率と比較されました。
暴露-ARIA-Eモデルにおいて、臨床第Ⅱ相201コア試験の結果を用いてApoE4遺伝子型の影響を3つのカテゴリー共変量(ホモ接合体保持者、ヘテロ接合体保持者、非保持者)として解析した結果、ApoE 4遺伝子型(ホモ接合体保持者)は有意な共変量であり、ARIA-E発現率は定常状態におけるCmaxと最も強い相関がありました。一方、ApoE 4非保持者とヘテロ接合体保持者の間で、ARIA-E発現率に統計的な有意差は見られませんでした。レカネマブ 10 mg/kg bi-weekly投与した際のARAI-Eの発現率は、ApoE 4ホモ接合体保持者では22.5%、ヘテロ接合体保持者では6.8%、ApoE 4非保持者では5.4%と予測されました。OLE試験で、新たにレカネマブ 10 mg/kg bi-weekly投与を開始したAPOE4ホモ接合体保持者のARIA-E発現率は25%(4人中1人)であり、モデルでの予測22.5%と同等でした。ARIAは、アミロイドをターゲットとする治療法に関連する有害事象であり、治療中のモニタリングと管理が不可欠です。
エーザイのAlzheimer's Disease and Brain Health、Deputy Chief Clinical OfficerであるMichael Irizarry M.D.は、「ペイシェントジャーニーをシンプルにし、ヒューマン・ヘルスケア(hhc)ミッションを達成するため、エーザイは、当事者様が自宅で使用することが可能なレカネマブの皮下注射製剤の開発をめざしています。今回当社が発表した皮下投与のバイオアベイラビリティ、および静脈内投与との比較に関する新たなデータは、現在実施中の臨床第Ⅲ相Clarity AD試験OLEにおける適切な皮下投与量を決定するために使用されました。また、ApoE 4遺伝子型がARIA-E発現に及ぼす影響を検討したこれまでのモデリングを発展させ、レカネマブの臨床試験においてARIA-Eの発現に最も影響を受ける当事者様集団についての理解を一層深めました。2022年の秋に主要評価データ取得が予定されている臨床第Ⅲ相Clarity AD試験のデータをもとに、モデルをアップデートしてまいります」と述べています。
バイオジェンのHead of Neurodegenerative Research UnitであるDominic Walshは、「私たちは、引き続きADの患者さんの治療法に関する情報を提供し、新しい治療法の開発をさらに進めていきます。皮下投与は、将来、患者さんや介護者の方にとって使いやすい選択肢となる可能性があり、この剤形についてエーザイと共同開発を続けてまいります」と述べています。
エーザイは、レカネマブについて、2022年7月5日(米国時間)、迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請(Biologics License Application: BLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査(Priority Review)の指定を受けたことを発表しました。PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)は2023年1月6日に定められました。レカネマブについては、現在、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験が進行中であり、2022年の秋に主要評価データを取得する予定です。FDAは、Clarity AD試験の結果について、レカネマブの臨床的有用性の検証試験として評価することに合意しています。
以上
本件に関する報道関係お問い合わせ先
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エーザイ株式会社
PR部
TEL:03-3817-5120
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バイオジェン・インク
パブリック アフェアーズ
<参考資料>
- 1. レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について
レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。現在、レカネマブは抗Aβ抗体で唯一漸増投与が不要な早期AD治療薬をめざして開発中です。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定したレカネマブ10mg/kg bi-weekly 18カ月静脈投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12カ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24カ月)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中です。
現在、201試験の結果に基づき、早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。さらに、レカネマブの皮下注射製剤の臨床第Ⅰ相試験が進行中です。
* ADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標
** 投与12カ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上とする
- 2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
- 3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
- 4. エーザイ株式会社について
エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公開しています。
- 5. バイオジェン・インクについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のひとつです。バイオジェンは多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する最初で唯一の治療薬を提供しています。また、生物製剤の高い技術力を活かしてバイオシミラーの製品化を行い、業界内で最も多様な神経科学領域のパイプラインに注力し、進展させており、アンメットニーズが高い疾患領域の患者さんの治療水準に変化をもたらしています。
2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives ™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。
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