レカネマブのARIA-E発現、皮下注射製剤に関する発表を含むエーザイのアルツハイマー病/認知症領域の開発品に関する最新データをアルツハイマー病協会国際会議2022(AAIC2022)において発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2022年7月31日から8月4日に米国カリフォルニア州サンディエゴおよびバーチャルで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2022において、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害および軽度AD(総称して早期AD)の治療薬として開発中の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発コード:BAN2401)の最新データを含む、当社のADパイプラインの研究成果について、口頭発表3題、ポスター発表18題を発表することをお知らせします。

 

 当社は、レカネマブについて、2022年7月5日(米国時間)、迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請(Biologics License Application: BLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査(Priority Review)の指定を受けたことを発表しました。PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)は2023年1月6日に定められました。レカネマブについては、現在、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験が進行中であり、2022年の秋に主要評価データを取得する予定です。FDAは、Clarity AD試験の結果について、レカネマブの臨床的有用性の検証試験として評価することに合意しています。

 

 AAICにおけるエーザイの主な発表内容は以下の通りです。

      • レカネマブによるARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫/浸出)発現に対する遺伝子型の影響 201コア試験におけるARIA-E発現率に及ぼすAPOE4遺伝子型の影響をモデリングシミュレーションで評価した結果と、非盲検長期投与試験におけるレカネマブ新規治療者における発現率との比較(Virtual Developing Topics:#69402)

      • レカネマブ皮下投与

      •  ◇
        • 健康成人を対象としたレカネマブの700mg単回固定用量皮下投与後の絶対的バイオアベイラビリティ、薬物動態、安全性および免疫原性を評価する試験結果 (ポスター/アブストラクト番号:#69438)
      •  ◇

        レカネマブの固定用量によるweekly皮下投与と体重に応じた10mg/kg bi-weekly 静脈内投与の同等性を示すことをめざしたモデリングおよびシミュレーション解析(ポスター/アブストラクト番号:#69429)

            • 当社の臨床試験における民族的・人種的多様性 早期ADを対象としたレカネマブの201試験、Clarity AD試験およびエレンベセスタットの MissionAD試験に関する米国の被験者登録における人種・民族グループの状況と適格基準による影響の検討 (ポスター/アブストラクト番号:#69198)

            • β-アミロイドアッセイによる脳内β-アミロイド病態の予測 当社とシスメックスの共同研究による完全自動化血漿中Aβ40、Aβ42イムノアッセイと、当該アッセイ法のアミロイドPETによる脳内Aβ病態に関する予測性能に関するデータ(ポスター/アブストラクト番号:#68727)

            • Dominantly Inherited Alzheimer Network (DIAN)による包括的なCSFタウ・プロファイリング 当社の抗タウ微小管結合領域(MTBR)抗体E2814を用いてMTBR-tauのプロファイリングを行い、脳脊髄液(CSF)中のMTBR-tauの変化時期、臨床的変化、認知機能、バイオマーカーの変化との相関を評価したワシントン大学医学部のDIAN-観察コホート登録者様の研究結果を口頭で発表します。(口頭発表:#65313)

           エーザイのAlzheimer's Disease and Brain Health、Deputy Chief Clinical OfficerであるMichael Irizarry M.D.は、「AAIC2022で発表するレカネマブのデータは、当社の抗Aβプロトフィブリル抗体に関する知識を深めるとともに、今秋に取得予定の検証用の臨床第Ⅲ相Clarity AD試験の主要評価データを理解する上でも重要です。さらに、当社が米国で実施する早期ADを対象とした臨床試験における民族的・人種的多様性の確保と、その登録比率を米国メディケアの人種構成比に近づけるための取り組みや、ADの早期診断に寄与する可能性のあるバイオマーカーに関するシスメックス社との共同研究についても紹介します」と、述べています。

               

          ■ エーザイ・口頭発表演題

          ※左右にスクロールできます

          開発品・トピック・セッション・
          発表時間(太平洋時間)
          口頭発表番号・タイトル・発表者

          E2814
          セッション: 新規データによる洗練された今後の研究
          7月31日(日)
          セッション時間: 14:15 - 15:30
          口頭発表時間: 14:15 - 14:25

          口頭発表番号:#65313
          Dominantly Inherited Alzheimer Network(DIAN)における包括的なCSFタウ・プロファイリングによる可溶性タウの病態生理段階の同定:
          DIAN-TU Tau NexGenプラットフォームにおける推測
          口頭発表者:K. Horie

          レカネマブ
          セッション: VDT-4-29 Developing Topics V
          8月3日(水)
          セッション時間:8:00 - 8:45
          口頭発表時間: 8:14 - 8:21

          Virtual Developing Topics: #69402
          レカネマブ投与当事者様におけるAPOE4遺伝子型のARIA-E発現率に与える影響のモデリング評価
          口頭発表者:L. Reyderman

          AD全般
          セッション:VO-5-12: バイオマーカー(イメージング以外)ADとDLBのプロテオミクス
          8月4日(木)
          セッション時間: 9:45 - 11:00
          口頭発表時間: 10:25 - 10:35

          口頭発表番号:#66599
          新規ペプチド駆動型グローバル・プロテオミクス・
          プラットフォームによるAD関連のユニークな
          ペプチドプロファイルの同定
          口頭発表者:S. Saxena

               

          ■ エーザイ・ポスター発表演題

          ※左右にスクロールできます

          開発品・トピック・セッション・
          発表時間(太平洋時間)
          アブストラクト番号・タイトル・発表者

          レカネマブ
          セッション: P1-01
          7月31日(日)12:30 - 14:15

          アブストラクト番号:#66289
          レカネマブ(BAN2401)注入に伴う反応と免疫原性:無作為化臨床第Ⅱ相試験および非盲検試験(OLE)の結果
          発表者:I. Landry他

          レカネマブ
          セッション: P1-13
          7月31日(日)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号:#68222
          AHEAD試験:プレクリニカルAD予防試験における
          多様な被験者募集のための戦略
          発表者:D. Molina-Henry他
          レカネマブ
          セッション: P1-16
          7月31日(日)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号:#69220
          レカネマブの長期投与を受けたAD当事者様の剖検例における
          神経病理学的所見
          発表者:L. Honig他
          レカネマブ
          セッション: P1-16
          7月31日(日)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号:#69429
          早期ADを対象としたレカネマブの皮下投与量選択
          発表者:S. Hayato他

          レカネマブ
          セッション: P2-16
          8月1日(月)12:30 - 14:15

          アブストラクト番号:#69438
          健康成人におけるレカネマブ単回固定用量皮下投与の
          絶対的バイオアベイラビリティ
          発表者:S. Rawal他

          レカネマブ
          バーチャル・ポスター
          7月31日(日)7:00 - 23:55
          アブストラクト番号:#65104
          HDX-MS(重水素交換質量分析)によるアミロイドβと
          レカネマブの相互作用特性の解析
          発表者:E. Yamauchi他
          レカネマブ
          セッション: P4-28
          8月3日(水)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号:#69405
          シミュレーション・モデリングによる早期ADにおける
          レカネマブの生涯における臨床的ベネフィット
          発表者:A. Monfared他
          レカネマブ・エレンベセスタット
          セッション: P1-16
          7月31日(日)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号:#69198
          早期ADを対象としたレカネマブおよびエレンベセスタットの
          プラセボ対照二重盲検臨床第Ⅱ相、臨床第Ⅲ試験における多様性
          発表者:J. Grill他
          E2511
          バーチャル・ポスター
          7月31日(日)7:00 - 23:55
          アブストラクト番号:# 62590
          新規低分子化合物TrkAバイアスド・ポジティブ・
          アロステリック・モジュレーターE2511:非臨床試験における
          コリン作動性神経のシナプス再生、コリン機能の活性化
          発表者:T. Tomioka他
          E2511
          バーチャル・オンデマンド
          アブストラクト番号:# 66208
          新規トロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)ポジティブ・
          アロステリック・モジュレーター(PAM)E2511の健康成人を対象としたファースト・イン・ヒューマン(FIH)
          単回・反復漸増投与(SAD/MAD)試験
          発表者:P. Aceves他
          AD全般
          セッション:P1-10
          7月31日(日)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号: # 65661
          退役軍人のAD当事者様における医療資源利用(HCRU)
          発表者:B. Aguilar他
          AD全般
          セッション:P1-06
          7月31日(日)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号:# 67811
          脳内アミロイドβ検出を目的とした血漿βアミロイドと
          pTau-181を用いたシグネチャーの生成と評価
          発表者:V. Devanarayan他
          AD全般
          セッション:P2-09
          8月1日(月)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号:# 65606
          米国退役軍人医療制度におけるADに対する臨床医判断と
          認知機能検査スコア間の疾患重症度分類の関係
          発表者: M. Li他
          AD全般
          セッション:P2-07
          8月1日(月)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号: # 68231
          MRIを用いた脳内アミロイドβ検出のAIベースツールの開発と
          その妥当性検証
          発表者: V. Devanarayan他
          AD全般
          セッション:P4-01
          8月3日(水)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号: # 59971
          Critical Path for Alzheimer’s Disease(CPAD)コンソーシアムによるAD臨床試験シミュレーションツール開発
          発表者: S. Sivakumaran他
          AD全般
          セッション:P4-07
          8月3日(水)12:30 - 14:15
          アブストラクト番号: # 68154
          ベースラインの局所タウ分布による軽度認知機能当事者様
          における急速な認知機能低下の予測
          発表者: A. Charil 他
          AD全般
          バーチャル・オンデマンド
          アブストラクト番号: # 63148
          ソーシャルメディア・ナラティブを通じたAD当事者様のペイシャント・ジャーニーにおける社会的スティグマの影響の理解
          発表者: A. Tahami Monfared他

                

          ■ シスメックス・エーザイ共同研究ポスター発表演題

          ※左右にスクロールできます

          トピック・セッション・
          発表時間(太平洋時間)
          アブストラクト番号・タイトル・発表者

          AD全般
          セッション:P4-21
          8月3日(水)12:30 - 14:15

          アブストラクト番号: # 68727
          高い特異性を持つ全自動血漿Aβアッセイは、センチロイド法を用いたアミロイドPETにより決定された
          脳内アミロイド病理を予測する
          発表者: K. Yamashita他

          以上

          <参考資料>

          1. 1.  レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について

           レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。現在、レカネマブは抗Aβ抗体で唯一漸増投与が不要な早期AD治療薬をめざして開発中です。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定したレカネマブ10mg/kg bi-weekly 18カ月静脈投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12カ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24カ月)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中です。

           

           現在、201試験の結果に基づき、早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。さらに、レカネマブの皮下注射製剤の臨床第Ⅰ相試験が進行中です。

           

          *   ADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標

          ** 投与12カ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上とする

           

          1. 2.  E2814について

           E2814は抗MTBR(Microtubule binding region)タウ抗体です。E2814は、当社とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。E2814は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。E2814は、孤発性ADを含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発され、臨床第Ⅰ相試験を実施中です。また、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit: DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床第Ⅱ/Ⅲ相Tau NexGen試験も実施中です。

           

          1. 3.  エレンベセスタットについて

           エレンベセスタットは、当社が創製したBACE(βサイトAPP切断酵素)阻害剤です。早期ADを対象としたエレンベセスタットの臨床第Ⅲ相試験(MISSION AD1、AD2)は、2019年9月に中止しました。

           

          1. 4.  E2511について

           E2511は、当社創製の新規低分子化合物で、神経成長因子(NGF)の細胞膜受容体tropomyosin receptor kinase A(TrkA)に直接結合し、ダメージを受けたコリン作動性神経の回復およびシナプス再形成を促すことを期待しています。臨床第Ⅰ相試験を実施中です。

           

          1. 5.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

           エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

           

          1. 6.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

           2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

           

          1. 7.  エーザイとシスメックスのコラボレーションについて

           エーザイとシスメックスは2016年2月に、認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約を締結しています。両社は、互いの技術・ナレッジを活用し、認知症の早期診断や治療法の選択、治療効果の定期的確認が可能な次世代診断薬の創出を目指します。