顧みられない熱帯病制圧に向けた官民パートナーシップ「キガリ宣言」に署名CEO内藤が顧みられない熱帯病制圧にコミットするグローバルリーダー100人に選任

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2022年6月23日にルワンダ共和国の首都キガリで開催された「マラリアと顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)に関するキガリ・サミット」において発表された「キガリ宣言」に署名し、世界保健機関(WHO)による「NTDsロードマップ(2021-2030)」の達成に向けて、今後もNTDs制圧支援を継続することを表明しました。当社は、NTDsの制圧がヒューマンヘルスケア(hhc)理念のもと取り組むべき重要なビジネス領域であると規定し、これにより「医療較差の是正」という社会善を成すことをめざしています(メッセージ動画はこちら)。

 また、キガリ宣言を記念して発表された「NTDs制圧にコミットするグローバルリーダー100人」に当社CEOの内藤晴夫が選任されました。

 

 NTDsは、WHOが「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している20の疾患のことを指します。2012年に、製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、WHO、米国国際開発庁(USAID)、英国国際開発省(DFID)、世界銀行、NTDsの蔓延国政府がグローバルヘルス分野における世界最大の国際官民パートナーシップを構築し、NTDs制圧に向けて共闘していくという共同声明「ロンドン宣言」を発表しました。製薬企業は、「ロンドン宣言」以降、これまでに140億人分もの高品質な治療薬を無償提供してきました。この間、国際官民パートナーシップによるNTDs制圧活動により、46カ国において1つ以上のNTDsの制圧を達成し、6億人に対するNTDs治療介入が完了するなど、多くの成果を達成しました。一方、世界では未だ17億人の人々がNTDsの感染リスクにさらされており、引き続きパートナーシップの一層の強化による共闘が求められています。

 

 「キガリ宣言」は、「ロンドン宣言」の後継となるNTDs制圧に関わるステークホルダーズのコミットメントです。「キガリ宣言」では、人々中心のアプローチによる、セクターを超えたパートナーシップにより、国連の持続可能な開発目標(SDGs)目標3.3に掲げるNTDs制圧ターゲット、ならびにWHOのNTDs ロードマップ(2021-2030)を達成し、2030年までに、2つのNTDsを根絶、100カ国において少なくとも1つのNTDsを制圧、そしてNTDsの治療介入を必要とする人を90%減らすことをめざしています。これにより、NTDsに伴う人々の苦しみや貧困、障害、偏見を減らすとともに、社会への参画の改善につながることが期待されます。

 

 当社は、2013年からNTDsの一つであるリンパ系フィラリア症(LF)に対する治療薬であるジエチルカルバマジン(DEC)錠を自社のインド・バイザッグ工場で製造し、WHOを通じこれまで29カ国に20.5億錠を供給してきました(2022年5月現在)。LFは、17カ国で制圧が達成され、感染者数は2000年と比較して74%減少した一方、8.6億人が未だ感染リスクにさらされています。当社は、DEC錠の無償提供を必要とする全ての蔓延国で制圧が達成されるまで継続することを表明しています。さらに、蔓延国における治療薬の集団投与(MDA)の実施支援や疾病啓発活動、衛生環境の整備など包括的なアプローチに取り組んでいます。

 さらに、当社は、国際研究機関等とのパートナーシップを通じてNTDsの新薬開発に積極的に取り組んでいます。公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)などからの助成金を活用し、リバプール熱帯医学校およびリバプール大学との新規フィラリア駆虫薬の共同開発や、Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi)とのパートナーシップによるマイセトーマやリーシュマニア症の新薬開発に対する共同開発などを行っています。

 

 当社は、hhc理念のもと、グローバルパートナーとの連携をさらに強化し、NTDsによる負担のない世界の実現をめざしてまいります。

 

以上

 

<参考資料> 

1.   顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)について

 「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases、NTDs)」とは、WHOが「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している20の疾患のことを指し、主に熱帯の貧困地域を中心に、世界で17億人もの方がNTDsの感染のリスクにさらされています。NTDsは貧困による劣悪な衛生環境などにより蔓延し、労働力や生産性の低下を招き、貧困から脱出できない原因にもなっています。重度の身体障害が残り、経済活動や社会生活に支障をきたす場合がある他、死に至ることもあり、開発途上国や新興国では経済成長の妨げともなりうる重大な課題の一つです。

 WHOにより、デング熱とチクングニア熱、狂犬病、トラコーマ、ブルーリ潰瘍、風土病性トレポネーマ症、ハンセン病、シャーガス病、アフリカ・トリパノソーマ症(睡眠病)、リーシュマニア症、条虫症・嚢虫症、メジナ虫症(ギニア虫症)、エキノコックス症(包虫症)、食物媒介吸虫症、リンパ系フィラリア症、オンコセルカ症(河川盲目症)、住血吸虫症、土壌伝播寄生虫症、マイセトーマ(菌腫)、疥癬、蛇咬傷の20種疾患がNTDsとして指定されています。

 

2.  顧みられない熱帯病に対するロンドン宣言(London Declaration on Neglected Tropical Diseases)について

 2012年1月30日、製薬企業13社*のCEO、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、WHO、米国国際開発庁(USAID)、英国国際開発省(DFID)、世界銀行、NTDsの蔓延国政府がロンドンに一堂に会し、NTDs10疾患**を制圧すべく共闘することを表明しました。グローバルヘルス分野における世界最大の国際官民パートナーシップとして、医薬品供給、物流、開発、インフラなどにおける課題に包括的に取り組み、より効果的にNTDs制圧を成し遂げることをめざし、46カ国において20のNTDsのうち1つ以上のNTDsの制圧を達成し、6億人に対するNTDs治療が完了するなど、多くの成果を達成しました。

* アッヴィ、アストラゼネカ、バイエル、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、エーザイ、グラクソスミスクライン、ギリアド、ジョンソンアンドジョンソン、メルク(Merck KGaA:ドイツ)、MSD、ノバルティス、ファイザー、サノフィ

** ギニア虫症、リンパ系フィラリア症、失明に至るトラコーマ、睡眠病(アフリカ・トリパノソーマ症)、ハンセン病、土壌伝播寄生虫症、住血吸虫症、オンコセルカ症(河川盲目症)、シャーガス病、リーシュマニア症

 

3.顧みられない熱帯病に対するキガリ宣言(Kigali Declaration on Neglected Tropical Diseases)について

 キガリ宣言は、2012年のロンドン宣言の後継としてNTDsの制圧に向けてステークホルダーズが共闘を誓うことを目的とし、2022年6月にルワンダ共和国の首都キガリにおいて、Commonwealth Heads of Government Meetingと同時開催された「マラリアとNTDsに関するキガリ・サミット」にて正式に発表されました。キガリ宣言において、WHOが主導するNTDsロードマップ2021-2030の達成に向けて、産官学民のパートナーシップを通じて、疾病・分野横断的アプローチの推進、ヘルスシステムの構築と資金調達を含む蔓延国における能力強化、NTDs治療薬・診断薬の研究開発の加速とそれらの供給の確保などの課題に取組み、包括的かつ持続可能な方法でNTDs制圧を成し遂げることをめざします。(「#NeglectedNoMore: 顧みられない熱帯病との闘いにおける歴史的なパートナーシップ」動画はこちらからご覧ください)。

 

4. リンパ系フィラリア症について

 リンパ系フィラリア症(LF)は、蚊を媒介として人に感染する顧みられない熱帯病(NTD)です。LFは、リンパ系機能障害により、足などの体の一部が肥大化し、激しい痛みや恒久的な障害だけでなく、外観の損なわれることによる社会的偏見を引き起こします。その結果、患者様は精神的、社会的、経済的損失を被ることになります。開発途上国を中心に世界で8.6億人が感染のリスクにさらされていると推定されています。DEC錠を含む3種類のLF治療薬の集団投与(mass drug administration: MDA)を実施することにより、LFを制圧することが可能です。

 

5. 当社のLF制圧を含む医薬品アクセス向上への取り組み

 当社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。当社が注力する社会善の一つに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧があり、それによる医療較差の是正の実現をめざしています。

 当社は、2010年から世界保健機関(WHO)やビル&メリンダ・ゲイツ財団などの世界のパートナーと共に、NTDsの一つであるリンパ系フィラリア症(LF)の制圧に向けて治療薬の無償提供や疾患啓発に取り組むとともに、Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi)やMedicines for Malaria Venture(MMV)などの国際的な非営利団体、あるいはLiverpool School of Tropical Medicine、ケンタッキー大学やブロード研究所などの研究施設とのパートナーシップにより、マイセトーマやLFなどのNTDsやマラリアなどの感染症に対する新薬開発を進めています(下表)。さらに、日本発の新薬創出によるグローバルヘルスへの貢献をめざす公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund: GHIT Fund)の設立のほか、世界知的所有権機関(WIPO)が主催するNTDs、マラリアや結核の治療薬開発のための国際共同事業「WIPOリサーチ(Re:Search)コンソーシアム」、結核に対する革新的な創薬をめざす「Tuberculosis Drug Accelerator」(TBDA)パートナーシップや非感染性疾患の予防と治療を推進するイニシアチブ「Access Accelerated(アクセス・アクセレレイテッド)」に参画しています。

 LFへの取り組みについて、当社は、集団投与(MDA)に用いられる高品質なDEC錠の安定供給が世界的に困難であった状況に鑑み、2010年11月に、2020年までに合計22億のDEC錠をWHOに無償で提供することに合意しました。2012年には、NTDs10疾患の制圧に向けたグローバルヘルス分野における過去最大の官民パートナーシップである「ロンドン宣言」に唯一日本企業として参画しました。2017年4月に行われた「ロンドン宣言」5周年イベントで、当社は、DEC錠が必要とされる全てのLF蔓延国において制圧が達成されるまで、2020年以降も継続してDEC錠を提供することを発表しました。

当社は、これまで29カ国に20.5億錠を提供しています(2022年5月現在)。さらに、当社は、WHOがMDAを円滑に実施するため、蔓延地域での疾患啓発活動にも協力しており、当社グループの社員がLF蔓延国の制圧担当者やその他現地の関係者と協力して早期制圧実現に向けた支援活動を行っています。

 

*1MRC: Medical Research Council (UK); *2DoD: Department of Defense (US); *3MMV: Medicines for Malaria Venture (Swiss); *4DHODH: dihydroorotate dehydrogenase; *5ASO: Anti-Sense Oligo-nucleotide


当社の医薬品アクセスへの取り組みの詳細は、当社サイト「医薬品アクセス」をご覧ください。
https://www.eisai.co.jp/sustainability/atm/index.html