血液による簡便なアルツハイマー病診断法の創出に向けた学術報告2022年国際アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD™ 2022)における発表内容について

シスメックス株式会社

エーザイ株式会社

   

 シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長 CEO:家次 恒 以下「シスメックス」)とエーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤 晴夫)は、認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約に基づき、互いの技術・ナレッジを活用して認知症の早期診断や治療法の選択および治療効果の定期的確認が可能な次世代診断薬の創出を目指しています。

 このたび、2022年3月15日から20日までスペイン バルセロナで開催された2022年国際アルツハイマー・パーキンソン病学会(International Conference on Alzheimer’s & Parkinson’s Diseases: AD/PDTM 2022)において、全自動免疫測定装置HISCL™を用いた血漿Aβ1-42/Aβ1-40比の臨床評価について口頭発表を行いましたのでお知らせします。

   

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発表演題 Fully Automated Plasma Beta-Amyloid Immunoassays Predict Amyloid Pathology Defined by Amyloid PET
アミロイドPETにより定義されるアミロイド病理を予測する全自動血漿βアミロイド免疫測定法に関して
発表者

山下 和人1、三浦 雅央1、渡部 俊介1、石木 健吾1、有松祐治2、入野 康宏1、久保 俊子3、萩野 圭2、長井 耕太4、David Verbel5、小山 彰比古6、Shobha Dhadda7、新納 隼人8、岩永 茂樹1、佐藤 利幸1、吉田 智一9、岩田 淳10

1シスメックス株式会社 中央研究所(日本)、2シスメックス株式会社 ビジネスインキュベーション本部(日本)、3Sysmex R&D Center Americas, Inc. (米国)、4エーザイ株式会社 日本・アジア臨床開発部(日本)、5Biostatistics, Eisai Inc., Woodcliff Lake, NJ, (米国)、6Translational Science, Eisai Inc., Woodcliff Lake, NJ, (米国)、7Biostatistics and Project Operations, Eisai Inc., Woodcliff Lake, NJ, (米国)、8シスメックス株式会社 臨床戦略本部(日本)、9シスメックス株式会社(日本)、10東京都健康長寿医療センター 脳神経内科(日本)
発表形式 Virtual, On-Demand Oral
発表概要

 脳内のアミロイドβペプチド(Aβ)の沈着(アミロイド病理)はアルツハイマー病 (AD) を診断する上で重要な特徴であるとされています。Aβを標的とする疾患修飾療法 (DMT) について複数の臨床試験が実施され、最近では早期AD治療薬として抗Aβ抗体が米国食品医薬品局に迅速承認されました。そのような背景からも脳内アミロイド病理を検出するための簡便で費用対効果の高い診断法の必要性が高まっています。

 これまで当グループは、アミロイドPETの結果と血漿中のAβ1-42/Aβ1-40比(以下「血漿Aβ比」)が相関を示し、血液バイオマーカーによって脳内アミロイド病理を予測できる可能性があることを発表してきました※1。血漿Aβ比に関して臨床検体を用いた研究を進めてきました。本発表では全自動免疫測定装置HISCL(シスメックス製)を用いた血漿Aβ比に関し、軽度ADおよび軽度認知障害の臨床診断を受けた180例(Discovery Study)、191例(Validation study)において、センチロイド法※2によるアミロイドPETの判定結果との比較検証を行いました。

(結果)

  • Discovery studyにおいて、血漿Aβ比は、アミロイドPETの陰性群と比較して陽性群で有意に低値であり、アミロイドPETの判定結果を、感度 97.5%、特異度80.8%、AUC = 0.93 (0.90 – 0.97)と高い精度で予測することを確認しました。

  • Discovery studyにおいて、血漿Aβ比はセンチロイド値(CL)に対し相関性(スピアマン順位相関係数※3)-0.75 (P値<0.001)を示し、本アッセイが脳内のAβ沈着量を反映する可能性があることを示しました。また、血漿Aβ比が陽性、CLが陰性となった不一致例が複数例あることを確認しました。このような不一致例は、他の研究でも報告されており、陰性群と比較してアミロイドPETが陽性化する可能性が高いと報告されています※4。このことから、全自動免疫測定装置HISCLで測定した血漿Aβ比も、アミロイドPETでは検出できないより早期の脳内アミロイド病理を反映している可能性が示唆されました。  

  

 全自動免疫測定装置HISCLでの血漿Aβ1-42、Aβ1-40の測定は、血液を用いた侵襲度の低い検査であり、日常の臨床診療の場で容易に活用でき、血漿AβはADの早期診断、治療選択および治療効果モニタリングに貢献できる可能性があると考えています。

【注釈】

  • ※1
     第18回技術説明会(2021、 シスメックス)
  • ※2

     Klunk WE et al, Alzheimer’s Dementia (2014)

  • ※3

     2つの量的データ分布から2つのデータ間の関連性の強さを示すもの。本解析では、順位データから求められる相関の指標であるスピアマン順位相関係数を算出している。

  • ※4

     Schindler SE et al, Neurology,93, e1647-e1659(2019) 

以上

 

本件に関するお問い合わせ先

  • シスメックス株式会社

    IR・広報部

    TEL:078-265-0508

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120