「レンビマ®」(レンバチニブ)、「キイトルーダ®」(ペムブロリズマブ)との併用療法について、進行性腎細胞がん一次療法として台湾において承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、このたび、自社創製のチロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法による進行性腎細胞がん一次療法としての適応で、台湾において承認を取得したことをお知らせします。本承認は、「レンビマ」の「キイトルーダ」との併用療法による、アジアにおける進行性腎細胞がんに対する初めての承認となります。

 

 本承認は、進行性腎細胞がんの一次治療を対象とした臨床第Ⅲ相CLEAR(307)試験/KEYNOTE-581試験の結果に基づいています。本試験結果は、2021年2月に開催された米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム2021での発表と同時にthe New England Journal of Medicineに掲載されました1。本試験では、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、有効性主要評価項目である無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)、並びに重要な有効性副次評価項目である全生存期間(Overall Survival: OS)と奏効率(Objective Response Rate: ORR)について、対照薬のスニチニブに対する統計学的に有意な改善を示しました。本併用療法のPFSは中央値が23.9カ月であり、スニチニブの9.2カ月と比較して、増悪または死亡のリスクを61%減少させました(HR=0.39 [95%信頼区間(Confidence Interval: CI): 0.32–0.49]; p<0.0001)。また、本併用療法は、OSについて、スニチニブと比較して、死亡のリスクを34%減少させました(HR=0.66 [95%CI: 0.49–0.88]; p=0.0049)。加えて、本併用療法の確定ORRは71%(95%CI: 66-76)(n=252)であり、スニチニブは36%(95%CI: 31-41)(n=129)でした。本併用療法の完全奏効(Complete Response: CR)率は16%、部分奏効(Partial Response: PR)率は55%であり、スニチニブのCR率は4%、PR率は32%でした2。なお、試験の本併用療法投与群で高頻度に確認された有害事象(全グレード、上位 5 つ)は、疲労、下痢、筋骨格系障害、甲状腺機能低下症、高血圧でした2

 

 腎がんの罹患者数は2020年には、世界で43万人以上と推定され、約18万人が亡くなったとされています3。台湾では2018年に1,400人以上が新たに診断され、600人以上が亡くなられたと推定されています4。腎細胞がんは、腎臓における最も発生頻度の高いがんで、腎がんの約9割を占めています5。腎細胞がんは、多くの場合、他の腹部疾患の画像診断時に偶発的に発見されます6。腎細胞がん患者様の約30%は、診断時に転移が確認され、約40%の患者様は局所性腎細胞がんに対する一次外科治療後に再発すると報告されています7,8。生存率は診断時のステージによって大きく変わりますが、転移性腎細胞がんの5年生存率は12%であり、予後の悪い疾患です8

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた画期的な新薬創出をめざしています。当社は、「レンビマ」によるがん治療の可能性を引き続き追求し、世界のがん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

*「レンビマ」について、当社は、2018年3月にMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)とグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携契約を締結しています。「キイトルーダ」はMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corpの登録商標です。

 

以上

 

<参考資料> 

1.「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性を示しました。

 現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど75カ国以上で承認を取得しており(米国では、局所再発、転移性、または進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応)、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しています(米国では、一次治療薬としての切除不能な肝細胞がんに係る適応)。日本においては、単剤療法として胸腺がんに係る適応も取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています(米国では、血管新生阻害剤1レジメン治療後の成人の進行性腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応)。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。米国と欧州では、成人の進行性腎細胞がん一次治療における「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で、承認を取得しています。さらに、治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がんに対する「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で米国において承認を取得しています。また、同様の適応でカナダ、オーストラリアなど10カ国以上で承認を取得しています(条件付き承認を含む)。条件付き承認を取得している国では、別途検証試験における臨床的有用性の検証と説明が求められます。欧州では、治療ラインに関わらず、プラチナ製剤を含む前治療中またはその後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な成人の進行性または再発性子宮内膜がんにおける「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で、承認を取得しています。日本では、がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌の適応で承認を取得しています。

 

2. CLEAR試験(307/KEYNOTE-581試験)について

 本承認は、明細胞型や、その他の肉腫様型、乳頭状型などの組織学的特徴を含む進行性腎細胞がんの一次治療を評価する、1,069人の患者様が参加された多施設共同、非盲検、無作為化、の臨床第Ⅲ相CLEAR試験 (307)/KEYNOTE-581試験(ClinicalTrials.gov, NCT02811861)の結果に基づいています。患者様はPD-L1の発現状態に関わらず、登録されました。活動性の自己免疫疾患、または免疫抑制が必要な健康状態の患者様は、本試験の登録から除外されました。無作為化の層別因子は、地域(北米および西欧、またはその他の地域)とMemorial Sloan Kettering Cancer Center (MSKCC)予後予測分類(低リスク、中リスク、または高リスク)でした。主要有効性評価項目はRECIST1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準)に基づく、独立中央画像判定によるPFSであり、得られたPFSの結果は、事前に規定したサブグループであるMSKCC予後予測分類のグループおよびPDL-1の発現状態によらず、一貫していました。重要な副次有効性評価項目は、OSとORRでした。

 患者様は、「レンビマ」(20 mg、1日1回経口投与)と「キイトルーダ」(200 mg、3週ごと静脈内投与を1サイクルとし最大で24カ月まで投与)の併用、「レンビマ」(18 mg、1日1回経口投与)とエベロリムス (5 mg、1日1回経口投与)の併用、または、対照薬であるスニチニブ単剤(50 mg、1日1回経口投与、4週間投与後、2週間休薬)のいずれかの投与群に1:1:1で割り付けられました。

 治験薬の投与は、許容できない毒性が出現するまで、またはRECIST1.1に基づく独立中央画像判定により、治験医師によって増悪とされるまで継続されました。「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、患者様が臨床的に病勢安定と診断され、治験医師によって臨床的有用性が認められる場合、RECISTで定義された増悪後も投与継続が認められました。「キイトルーダ」の投与は最大で24カ月まで継続されました。「レンバチニブ」は24カ月を超えて投与継続が認められました。腫瘍評価はベースラインおよび8週毎に行われました。

 

3.エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国とカナダ以外ではMSD)は、「レンビマ」のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」の併用療法における共同開発、共同製造、共同販促を行います。既に実施している併用試験に加え、両社は新たにLEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを開始しました。これにより、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は10種類以上のがんにおいて20を超える臨床試験が進行中です。

 台湾においては、「レンビマ」について、当社医薬品販売子会社である衛采製薬股份有限公司が販売し、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の現地支社と共同販促を行っています。