アルツハイマー病(AD)治療薬であるアミロイドを標的とするモノクローナル抗体に対するNational Coverage Determination (NCD)案について

 当社は、アルツハイマー病当事者様とその家族の想いとともにあり、このたびメディケア・メディケイド サービスセンター(CMS)が提案したNational Coverage Determination(NCD)案は、我々アルツハイマーコミュニティに極めて困難をもたらすものであると考えています。

 

 当社は、アルツハイマー病(AD)に対するアミロイドを標的とするモノクローナル抗体(抗Aβ抗体)について、Coverage with Evidence Development(CED:エビデンス構築を目的とした臨床試験での使用に対してのみ保険カバレッジをすること)を適用するというCMSの提案に強く反対します。すべての抗Aβ抗体を同一に扱い、重要な進行中の臨床試験を考慮せずメディケア受給者のアクセスを厳しく制限する本NCD案は、健康格差を拡大させることになり、支持することはできません。さらに、本NCD案が医薬品の安全性と有効性を審査決定する上での米国食品医薬品局(FDA)の役割、ならびにFDAの規制の自律性と科学的独立性に直接疑問を投げかけることになることを懸念します。

 

CEDは当事者様のアクセスを制限し遅延させます

抗Aβ抗体に対してCEDを要件とすることは、臨床医に大きな負担をもたらし、本治療に適合するメディケア受給者のアクセスを厳しく制限し、限られた一部の当事者様しか治療を受けることができなくなります。承認された薬剤のドラッグ アクセスにおいて大きな不公平が生ずることを懸念します。保険適応範囲を臨床試験の実施が要件となるCEDに制限し、さらに病院の外来患者に制限すると、治療を受けられる医療機関が限られた地域に集中し、治療のために移動する費用や支援を持っていない当事者様へのさらなる不平等の拡大が懸念されます。

 

CEDの適用はFDAプロセスと重複しています

当社は、今回のCEDの適用は、迅速承認制度の意義を損ない、またイノベーションを評価するFDAの役割を侵害する可能性があり、深刻な懸念を抱いています。今回のCMSの判断が、他の疾患に対する前例となるリスクを憂慮すべきであると考えています。迅速承認薬剤の中でなぜ深刻な疾患であるADに対する治療薬が唯一保険カバレッジを制限されるのか、また、この制限が、AD当事者様、介護者および広範な医療制度にどのような負の影響を及ぼすかは計り知れません。

 

CEDは開発中の薬剤に適用されるべきではありません

FDAによって承認されていない開発中の薬剤に対してNCDを介したCEDを適用することは、臨床試験データと承認内容を事前に判断することになり、恣意的であり、前例がありません。当社は、すべての抗Aβ抗体が同一であるという仮定に基づいて、これらの開発中の薬剤にCEDを適用する提案は誤りであると考えています。全く異なる第一世代の抗Aβ抗体の失敗した臨床試験結果に基づく知見を適用することも非科学的です。当社は、CED要件を現時点で開発中の薬剤に適用することは適切ではないと考えています。

 

 CMSが、ADに対する抗Aβ抗体のNCDの方針案を再検討することを強く求めます。

 

 当社のレカネマブは、臨床第Ⅱb相無作為化比較試験および非盲検長期継続投与試験において、複数の臨床エンドポイントにおける一貫した臨床症状の悪化抑制、および良好な安全性プロファイルを示しました。

 レカネマブは、神経毒性を有する可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの神経変性プロセスに寄与すると考えられているヒト化モノクローナル抗体です。2021年9月、迅速承認制度に基づき、アミロイド病理を有する早期ADに対するレカネマブの生物学的ライセンス(BLA)の段階的申請を開始し、2022年前半の申請完了を予定しています。加えて、検証用試験として早期ADを対象としたレカネマブの臨床第Ⅲ相Clarity AD試験を実施中で、1,795人の被験者登録を完了しており、2022年の秋に主要評価データを取得する予定です。

 

 30日間のオープンコメント期間中に当社は正式な見解を提出いたします。CMSの最終決定は2022年4月の予定です。本NCD案のリンクはこちらです。

 

以上