抗がん剤H3B-8800(スプライシングモジュレーター)について、Roivantと独占的ライセンス契約を締結

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、当社の米国研究子会社H3 Biomedicine Inc.が創製し、スプライシングモジュレーターとして開発中の 抗がん剤H3B-8800について、Roivant Sciences Ltd.(Nasdaq: ROIV、本社:英国ロンドン、 以下 Roivant)の子会社にグローバルにおける研究、開発、製造、販売に関する独占的権利を供与するライセンス契約を締結したことをお知らせします。
 

 H3B-8800(Roivantの開発品コード:RVT-2001)は、H3 Biomedicine Inc.で創製された経口投与可能な低分子のSplicing Factor 3B subunit 1 (SF3B1)モジュレーターです。遺伝情報からタンパク質を合成する過程においては、タンパク質合成に不要なメッセンジャーRNA(mRNA)の塩基配列であるイントロンを取り除くスプライシングが行われます。一部の血液および固形がんでは、このスプライシング因子をコードする遺伝子に変異が認められます。SF3B1は、スプライシング因子において特に頻度の高い遺伝子変異です1、2。本剤はSF3B1に結合し、がんにおける異常なmRNAスプライシングを調節することで抗腫瘍効果を発揮することが非臨床の研究モデルで示されています3。現在当社とH3 Biomedicine Inc.が、SF3B1遺伝子変異を有する骨髄異形成症候群の患者様を対象とした臨床第Ⅰ相試験を米国、欧州で実施中です。

 本契約に伴い、当社は契約一時金を受領するとともに、開発、薬事の進捗に応じたマイルストンペイメントおよび上市後には売上収益に応じた一定のロイヤルティを受領する予定です。

  
 Roivantは、独自のビジネスモデルを持つバイオ医薬品企業であり、多様な領域において効率的な臨床開発を行う「Vants」という子会社を設立しています。当社は、Roivantとの本ライセンス 契約により、本剤の価値が最大化されることを期待しています。当社は、引き続き最先端のがん研究に基づく創薬を加速し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。
 
以 上
 
<参考資料> 

1. H3 Biomedicine, Incについて

 H3 Biomedicine, Incは、米国マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするバイオファーマであり、統合データベースに基づいたデータサイエンス、ヒューマンバイオロジー、最新の有機合成化学を活用したプレシジョンメディシンである次世代抗がん剤の探索研究および開発を通じ、患者様に貢献することをめざしています。H3 Biomedicineは、2010年12月にエーザイ株式会社の米国事業会社であるEisai Inc.の子会社として設立されました。H3 Biomedicineは、パイプラインの長期かつ継続的な充足をめざし、グローバル製薬企業としての能力とリソースを有する当社から必要な研究開発費とノウハウの提供を受けて緊密に連携しています。

 H3 Biomedicineの詳細情報は、www.h3biomedicine.comをご覧ください。

 

2. Roivantについて

 Roivantは、有効な治療法のないあらゆる疾患を事業機会と捉え、患者様に対する医療提供の向上を使命としています。自社プラットフォームから機敏性と高い専門性を有するバイオファーマ・ヘルステクノロジー企業「Vants」を複数立ち上げ、独創的な方法による技術確立と人材育成を行うことにより、変革をもたらす医薬品をより早く開発しています。

 詳細については、www.roivant.comをご覧ください。

 
 
  • 1

    Yoshida, et al. (2011). Frequent pathway mutations of splicing machinery in myelodysplasia. Nature 478(7367): 64-69. doi: 10.1038/nature10496.

  • 2

    Seiler, et al. (2018). Somatic Mutational Landscape of Splicing Factor Genes and Their Functional Consequences across 33 Cancer Types. Cell Reports 23(1): 282-296.e4. doi: 10.1016/j.celrep.2018.01.088.

  • 3

    Seiler, et al. (2018). H3B-8800, an orally available small-molecule splicing modulator, induces lethality in spliceosome-mutant cancers. Nature Medicine 24(4): 497-504. doi: 10.1038/nm.4493.