第14回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)において早期AD治療薬候補レカネマブの臨床第Ⅱb相における臨床、バイオマーカー、安全性に関する結果を含むADパイプラインの最新データを発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2021年11月9日から12日に米国マサチユーセッツ州ボストンおよびバーチャルで開催される第14回アルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer’s Disease Conference:CTAD)において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品 コード:BAN2401)に関する口頭発表6演題をはじめとする当社の広範なアルツハイマー病(AD)パイプランの研究成果について、合計10演題(うち5演題がlate breaker口頭発表)を発表することをお知らせします。なお、当社は、レカネマブについて、2021年9月に迅速承認制度に基づき、米国食品医薬品局(FDA)に早期AD治療薬として生物製剤ライセンス申請の段階的申請を開始しました。

 

 エーザイのニューロロジービジネスグループDeputy Chief Clinical OfficerであるMichael Irizarry医学博士は、「当社がCTADで発表する知見は、早期ADの治療におけるレカネマブの潜在的な役割とともに、脳内Aβプラークの除去と血液バイオマーカーの変化、臨床結果の関係についての重要な科学的洞察を提供するものです。私たちは、患者様とそのご家族にソリューションをお届けするというコミットメントを果たすべく、レカネマブおよびAβ以外を治療標的とする治療薬候補をできるだけ早く進展させるよう取り組んでいます」と述べています。

 

 ADは、これまで認知、機能、行動の症状を緩和することに重点が置かれてきましたが、疾患の生物学的メカニズムの理解が大きく進んだことにより、当社の開発パイプライン製品は、Aβ、タウ、神経変性など、疾患の複数の根本病理に基づく治療をめざしています。

 

 エーザイ株式会社の常務執行役であり、ニューロロジービジネスグループ プレジデント兼グローバルADオフィサーであるIvan Cheungは、「レカネマブについては、迅速承認制度に基づくFDAへの生物製剤ライセンス申請の段階的申請開始に加えて、検証試験としての臨床第Ⅲ相Clarity AD試験への1,795人の被験者登録の完了、皮下注射剤臨床第Ⅰ相試験の開始、そしてプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相AHEAD 3-45試験の進行など、本剤と当社ADフランチャイズにとって極めて重要な時期を迎えています。私たちは、レカネマブをはじめとする当社の強固なADパイプラインが、ADを患っている人々にもたらす可能性に期待しています」と述べています。

 

 レカネマブの早期AD治療薬としての可能性を示唆する深い科学的洞察についての主な発表演題は以下の通りです。

  • ラウンドテーブル:レカネマブの最新データの発表と、3名の著名な教授であるJeffrey Cummings, M.D、D.Sc、Randall J. Bateman, M.D、Christopher H. van Dyck, M.Dによる幅広いADコミュニティーに有用な議論(Roundtable 5)
  • 口頭発表:早期ADにおけるレカネマブの臨床第Ⅱ相POC試験(201試験)の複数の統計的手法による有効性評価結果の一貫性(LB9)

  • 口頭発表:プレクリニカルADを対象としたレカネマブの臨床第Ⅲ相AHEAD 3-45試験における血漿バイオマーカースクリーニングの導入(LB4)
  • 口頭発表:早期ADを対象としたレカネマブの臨床第Ⅲ相Clarity AD試験におけるベースラインデータ特性の概要(ROC22)

      

■ エーザイの治療薬候補および研究の発表

※左右にスクロールできます

トピック、セッション、
発表時間(米国標準東部時間)
演題、発表者

レカネマブ

口頭発表(会場) Roundtable 5
11月10日(水)午後2:00 – 2:30

血漿Aβ42/ 40比と脳アミロイドPET SUVrの変化との相関、ならびに安全性に関するレカネマブの臨床効果の評価:早期ADを対象とした臨床第Ⅱ相POC試験(201試験)のコア試験および非盲検継続投与試験

発表者: C. Swanson、J. Cummings、R. Bateman、C. van Dyck

レカネマブ

口頭発表(会場) LB9
11月11日(木)午前11:20 – 11:35

早期ADに対するレカネマブの臨床第Ⅱ相POC試験(201試験)の複数の統計的手法による有効性評価結果の一貫性

発表者: DA Berry

レカネマブ

口頭発表(会場) LB4
11月11日(木)午前9:35 – 9:50

AHEAD 3-45試験における血漿バイオマーカースクリーニングの導入

発表者: R. Sperling

レカネマブ

口頭発表(バーチャル) ROC22
11月12日(金)午前8:00~(オン・デマンド)

Clarity AD試験のベースライン特性:早期ADに対するレカネマブ(BAN2401)の評価を目的とした臨床第Ⅲ相18カ月間、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較試験

発表者: C. Swanson

レカネマブ

口頭発表(バーチャル) ROC23
11月12日(金)午前8:00~(オン・デマンド)

Clarity AD試験の被験者適格性を決定する段階的アプローチ:早期ADを対象としたレカネマブ(BAN2401)10 mg/kg Biweeklyの安全性と有効性を評価する臨床第Ⅲ相プラセボ対照、二重盲検試験

発表者: M. Gee

一般

  
ポスター (会場) P42

定量的医薬品開発ツール生成に向けたCPADとのプレコンペティティブ、データ共有によるAD医薬品開発の加速

発表者: S. Sivakumaran他

一般

  
ポスター (リモート) RP27

患者様、介護者、医療専門家の間でのADの遺伝子検査に関する意思決定と反応

発表者: A. Tahami 他

一般

  
ポスター (リモート) RP4

代替物語を用いた再生課題によるスクリーニング効率の改善

発表者: T. Doherty他

一般

口頭発表(バーチャル) LBR8
11月9日(火)午前8:00~(オン・デマンド)

MissionAD試験サンプルを用いたC2N PrecivityAD™テストによる脳Aβ病理の予測

発表者: D. Verbel

一般

口頭発表(バーチャル) LBR9
11月9日(火)午前8:00~(オン・デマンド)

MCIと早期AD における[18F] PI-2620 PETを用いた タウ沈着の評価:MissionADタウサブスタディ

発表者: S. Bullich

 

■ 主要なバイオジェンの発表演題

※左右にスクロールできます

開発品・ポスター番号発表演題・予定日時(米国東部時間)

アデュカヌマブ

口頭発表(バーチャル) LBR2
11月9日(火)午前8:00~(オン・デマンド)

EMERGE、ENGAGEおよびPRIMEからのEMBARK再投与
試験参加者のベースラインデータ

発表者: S. Cohen

アデュカヌマブ

口頭発表(バーチャル) LBR4
11月9日(火)午前8:00~(オン・デマンド)

ICARE ADサイトに対するベースラインおよびARIAモニタリングに向けた標準化MRI取得プロトコルの定義

発表者: T. Benzinger

アデュカヌマブ

口頭発表(会場) Roundtable 8
11月11日(木)午後5:15~

ENGAGEとEMERGE試験における患者様の血漿ptau181のアデュカヌマブによる用量および時間依存性変化

発表者: O. Hanson

一般

   
ポスター(会場) LP22

ADによる軽度認知障害および軽度AD認知症を対象とする治験および治療法の人種的および民族的多様性に関する最新の米国有病率推定値

発表者: N. Maserejian他

     

以上

      

<参考資料>

1.レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について

 レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定した18カ月投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12カ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24カ月)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中です。

 エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2014年3月に、エーザイとバイオジェンはレカネマブに関する共同開発・共同販促に関する契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)のOpen-Label Extension試験および早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。また、2020年7月に、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で開始しました。AHEAD 3-45試験は、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。

 

* ADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標

** 投与12カ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上とする

 

2.アデュカヌマブについて

 アデュカヌマブは、ヒトモノクローナル抗体で、共同開発ライセンス契約に基づき2007年にNeurimmune社から導入されました。2017年10月より、バイオジェンとエーザイは全世界的にアデュカヌマブの開発ならびに製品化を共同で実施しています。

 

3.エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、アルツハイマー病治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。レカネマブについては、エーザイ主導のもとで共同開発を進めます。

   

4.エーザイとバイオアークティックによるアルツハイマー病領域の提携について

 2005年以来、バイオアークティックはAD治療薬の開発と商品化に関してエーザイと長期的な協力関係を築いてきました。2007年12月にレカネマブの商品化契約を締結し、2015年5月にAD用抗体レカネマブバックアップの開発・商品化契約を締結しました。エーザイは、AD向け製品の臨床開発、市場承認申請、商品化を担当しています。 バイオアークティックには、ADにおけるレカネマブの開発コストはありません。