抗がん剤「レミトロ®点滴静注用300μg」(一般名:デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え))
日本において、末梢性T細胞リンパ腫および皮膚T細胞性リンパ腫に係る効能効果で新発売

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は本日、日本において「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」、「再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫」を効能効果とする、抗がん剤「レミトロ®点滴静注用300μg」(一般名:デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え))を新発売したことをお知らせします。本剤は、2021年3月23日に製造販売承認を取得し、5月19日に薬価収載されました。

 

 「レミトロ」は、インターロイキン-2(IL-2)とジフテリア毒素の部分配列からなる融合タンパク質であり、腫瘍細胞表面上のIL-2受容体と特異的に結合します。細胞内に移行したジフテリア毒素断片がタンパク質合成を阻害し、細胞死を誘導することで抗腫瘍効果を示すと考えられています。

 

 日本における「レミトロ」の承認は、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-Cell Lymphoma: PTCL)および皮膚T細胞性リンパ腫(Cutaneous T-Cell Lymphoma: CTCL)の患者様を対象に国内で実施された、本剤の有効性と安全性などを評価する多施設共同、非盲検、単群の臨床第Ⅱ相試験(205試験)などの結果に基づくものです。

 205試験の結果、PTCLおよびCTCL患者様全体(36人)の奏効率(Objective Response Rate: ORR)は、36.1%(95%信頼区間(CI): 20.8-53.8)であり、事前に設定した閾値奏効率を統計学的に有意に上回り、主要評価項目を達成しました。PTCL(17人)およびCTCL(19人)のORRは、それぞれ41.2%(95%CI: 18.4-67.1)、31.6%(95%CI: 12.6-56.6)でした。

 本試験で認められた上位5つの主な有害事象(Treatment-emergent adverse events)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加(89.2%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加(86.5%)、低アルブミン血症(70.3%)、リンパ球減少症(70.3%)、発熱(51.4%)でした。

 なお、本剤の承認条件に従い、製造販売後、一定の症例数に達するまでの間、投与された全ての患者様を対象に特定使用成績調査(全例調査)を実施します。

 

 厚生労働省の調査によると、日本におけるPTCLの患者様数は6,000人未満、CTCLの患者様数は4,000人未満と推計されています1。両疾患とも予後不良となる場合や治療が難しい場合があり、依然としてアンメット・メディカル・ニーズが極めて高い疾患です。「レミトロ」は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高い医薬品として評価されています。当社は、本剤について日本のほかアジアにおける独占的な開発および販売権を有しています。

 

 当社は、日本において「レミトロ」を再発または難治性のPTCLおよびCTCL治療の新たな選択肢としてお届けするとともに本剤の承認条件として定められている特定使用成績調査(全例調査)を適切に実施し、適正使用を推進してまいります。引き続き当社は、本剤によるがん治療の可能性を追求し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以 上

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 <参考資料>

1. 製品概要

製品名: レミトロ®点滴静注用300μg

一般名: デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)

効能・効果: 再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫

      再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫

用法・用量:通常、成人にはデニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)として1日1回9μg/kgを1時間かけて5日間点滴静注した後、16日間休薬する。この21日間を1サイクルとして、最大8サイクル投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。

薬価: レミトロ点滴静注用300μg 1瓶85,610円
包装: レミトロ点滴静注用300μg 1バイアル

 

2. 「レミトロ点滴静注用300μg」(一般名:デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え))について

 本剤は、インターロイキン-2(IL-2)とジフテリア毒素の部分配列からなる融合タンパク質です。本剤は腫瘍細胞表面上のIL-2受容体と特異的に結合し、細胞内に移行したジフテリア毒素断片がタンパク質合成を阻害することによって、細胞死を誘導し抗腫瘍効果を示すと考えられています。

 当社は、本剤について日本とアジアにおける独占的な開発および販売権を保持しています。

 

3. 臨床第Ⅱ相試験(205試験)について

 205試験は、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-Cell Lymphoma: PTCL)および皮膚T細胞性リンパ腫(Cutaneous T-Cell Lymphoma: CTCL)の患者様を対象に国内で実施された、デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)の有効性と安全性などを評価する多施設共同、非盲検、単群の臨床第Ⅱ相試験です。本試験に参加された患者様については、治験実施医療機関とは独立した中央病理診断委員会により、最終的な病理組織学的診断が確定されました。参加患者様の病理組織型は、PTCL17人、CTCL19人、その他の悪性リンパ腫1人でした。有効性については、PTCLおよびCTCLの36人で評価され、安全性については、参加患者様37人にて評価されました。本剤は、3週間を1サイクルとして、9μg/kg/dayを1時間かけて1日目から5日目の連続5日間、最大8サイクル点滴静注で投与されました。本試験では、主要評価項目を奏効率とし、その信頼区間の下限値が事前に規定した閾値を上回ることを基準として、本剤の有効性が評価されました。

 

4. 末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)について

 PTCLは、T細胞非ホジキンリンパ腫の一種で、中悪性度に分類されます。進行期になってから発見されることが多く、リンパ節の腫れやしこり、発熱、大量の寝汗、体重減少などの症状がみられます。PTCLのうち、未分化リンパ腫キナーゼ(Anaplastic Lymphoma Kinase: ALK)陽性未分化大細胞リンパ腫は、20~30歳代で発症し、予後が良く治癒しやすいという特徴がありますが、その他の病型では60歳前後に発症することが多く、予後不良となる場合や治療が難しい場合があり、依然として、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患の一つです。日本におけるPTCLの患者様数は6,000人未満と推計されています1

 

5. 皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)について

 CTCLは、さまざまな病型を持つ皮膚原発性の非ホジキンリンパ腫の一種です。免疫機構に関与するリンパ球の一つであるT細胞の一部ががん化して、皮膚病変が起こり、疼痛や掻痒感などによって患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させます。CTCLは、一般的に悪性度の低いリンパ腫ですが、緩徐に進行し、数年から十数年かけて腫瘍期へと進展します。腫瘍期に移行した場合は悪性度が高くなり、予後不良となるため、依然としてアンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患の一つです。日本におけるCTCLの患者様数は4,000人未満と推計されています1

 

6.「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」について

 「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」は、日本では承認されていない医薬品や適応(未承認薬・適応外薬)について、医療上の必要性を評価するとともに、公知申請への該当性や承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認すること等により、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発促進に資することを目的とする厚生労働省内に設置された検討会議です。

 

 1 平成29年の人口動態統計・患者調査(厚生労働省大臣官房統計情報部)