「レンビマ®」と「キイトルーダ®」の併用療法について、日本において進行性子宮体がんに係る適応追加を申請

エーザイ株式会社

MSD株式会社

    

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の日本法人であるMSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長: カイル・タトル、以下 MSD)は、このたび、エーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)とMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の併用療法について、日本において進行性子宮体がんに係る適応追加を申請したことをお知らせします。

 

 本申請は、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がん(日本においては子宮体がん)を対象とした臨床第Ⅲ相試験(309/KEYNOTE-775試験)結果に基づいており、本試験結果は、2021年3月に開催された米国婦人科腫瘍学会(SGO)で発表されました。本試験において、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、主要評価項目である無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)および全生存期間(Overall Survival: OS)、並びに副次評価項目である奏効率(Objective Response Rate: ORR)について、治験医師選択化学療法(ドキソルビシンまたはパクリタキセル)に対して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、主要評価項目および副次評価項目を達成しました。なお、本試験における本併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されている臨床試験のものと同様でした。

 

 「レンビマ」と「キイトルーダ」は、子宮体がんを予定される効能又は効果として、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されており、本申請は優先審査の対象となります。

 

 子宮体がんの罹患者数は、2020年には世界で41万7千人以上と推定され、約9万7千人が亡くなったとされています1。日本では2020年に1万7千人以上が新たに罹患し、3千人以上が亡くなったと推定されています2。子宮内膜がんは、子宮体がんにおけるもっとも発生頻度の高いがんで、9割以上を占めるとされています3。生存率は診断時のステージによって大きく変わりますが、転移性子宮内膜がんの5年生存率は17%であり、予後の悪い疾患です4

 

 エーザイとMSDは、2018年10月より日本において「レンビマ」の情報提供を通じた協業を実施しています。両社は引き続き協業を強化し、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法によるがん患者様への貢献を最大化していきます。

 

以上

  

 

本件に関する報道関係お問い合わせ先

<参考資料> 

1.「レンビマ」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性をもたらします。

 現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しており(米国では、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応)、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。さらに、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がんに対する「キイトルーダ」(一般名: ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))との併用療法に係る適応で米国、カナダ、オーストラリアなど10カ国以上で承認を取得しています(本承認は奏効率、奏効期間に基づく迅速承認であり、別途検証試験の実施が求められます)。日本においては、単剤療法として胸腺がんに係る適応も取得しています。

 

2.「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))について

 「キイトルーダ」は、自己の免疫力を高め、がん細胞を見つけて攻撃するのを助ける抗PD-1抗体です。「キイトルーダ」はPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体です。Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(米国とカナダ以外ではMSD)は業界最大のがん免疫療法臨床研究プログラムを行っており、現在1,400を超える「キイトルーダ」の臨床試験を実施し、幅広い種類のがんや治療セッティングを検討しています。「キイトルーダ」の臨床プログラムでは、さまざまながんにおける「キイトルーダ」の役割や、「キイトルーダ」による治療効果が得られる可能性を予測する因子について模索しており、さまざまなバイオマーカーの模索も行っています。

 日本では、「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」「がん化学療法後に増悪したPD-L1陽性の根治切除不能な進行・再発の食道扁平上皮癌」の効能又は効果について承認を取得しています。

 

3.309/KEYNOTE-775試験について

 本試験(ClinicalTrials.gov, NCT03517449)は、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がん(日本においては子宮体がん)を対象とした、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法を評価する、多施設共同、無作為化、非盲検の臨床第Ⅲ相試験です。2つの主要評価項目(デュアルプライマリーエンドポイント)はRECIST v1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準)に基づく盲検下独立中央画像判定によるPFSおよびOSです。副次評価項目は、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央画像判定によるORRおよび安全性/忍容性などです。827人の登録患者様のうち、697人がミスマッチ修復機構(mismatch repair proficient: pMMR)を有する患者様であり、130人がミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有する患者様でした。登録患者様は、「レンビマ」(20 mg、1日1回経口投与)/「キイトルーダ」(200 mg、3週ごと静脈内投与を1サイクルとし最大で35サイクル(約2年)まで投与)の併用、または治験医師選択化学療法(Treatment of Physician’s Choice: TPC、ドキソルビシン[60 mg/m2 3週ごと静脈内投与で総投与量500 mg/m2以下]またはパクリタキセル[4週を1サイクルとして80 mg/m2 週1回静脈内投与を3週連続し、1週間休薬])に1:1で割り付けられました。

 本試験は、全体集団(pMMRを有する患者様集団およびdMMRを有する患者様集団)ならびにpMMRを有する患者様集団において、RECIST v1.1に基づく盲検下独立画像判定によるPFSおよびOSの主要評価項目(デュアルプライマリーエンドポイント)、ならびにRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央画像判定によるORRの有効性副次評価項目を達成しました。患者様のフォローアップ期間の中央値は、全体集団およびpMMRを有する患者様集団において、11.4カ月でした。全体集団において、本併用療法(n=411)のPFSの中央値は、7.2カ月(95%CI: 5.7–7.6、イベント数=281)であり、TPC(n=416)の3.8カ月(95%CI: 3.6–4.2、イベント数=286)に対して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、がんの増悪または死亡のリスクを44%減少させました(HR=0.56 [95%CI: 0.47–0.66]; p<0.0001)。また、全体集団において、本併用療法のOSの中央値は、18.3カ月(95%CI: 15.2–20.5、イベント数=188)であり、TPCの11.4カ月(95%CI: 10.5–12.9、イベント数=245)に対して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、死亡のリスクを38%減少させました(HR=0.62 [95%CI: 0.51–0.75]; p<0.0001)。本試験における本併用療法の安全性プロファイルは、それぞれの単剤療法で確立している安全性プロファイルと同様でした。

 全体集団において、本併用療法の有効性副次評価項目であるORRは31.9%(95%CI: 27.4–36.6)であり、完全奏効(Complete Response: CR)率は6.6%、部分奏効(Partial Response: PR)率は25.3%でした。一方、TPCのORRは14.7%(95%CI: 11.4–18.4)、CR率は2.6%、PR率は12.0%でした(ORRに関するTPCとの差: 17.2パーセンテージポイント、p<0.0001)。奏効を示した患者様における奏効期間(Duration Of Response: DOR)の中央値は、本併用療法では14.4カ月(範囲: 1.6–23.7)であり、TPCでは5.7カ月(範囲: 0.0–24.2)でした。

 本試験成績は、全体集団とpMMRを有する患者様集団で同様でした。pMMRを有する患者様集団において、本併用療法は、PFSの中央値が6.6カ月(95%CI: 5.6–7.4、イベント数=247)であり、TPCの3.8カ月(95%CI: 3.6–5.0、イベント数=238)に対して、がんの増悪または死亡のリスクを40%減少させました(HR=0.60 [95%CI: 0.50–0.72]; p<0.0001)。また、本併用療法は、OSの中央値が17.4カ月(95%CI: 14.2–19.9、イベント数=165)であり、TPCの12.0カ月(95%CI: 10.8–13.3、イベント数=203)に対して、死亡のリスクを32%減少させました(HR=0.68 [95%CI: 0.56–0.84]; p=0.0001)。副次評価項目であるORRについて、本併用療法は30.3%(95%CI: 25.5–35.5)であり、CR率は5.2%、PR率は25.1%でした。一方、TPCは、ORR は15.1%(95%CI: 11.5–19.3)、CR率は2.6%、PR率は12.5%でした(ORRに関するTPCとの差: 15.2パーセンテージポイント、p<0.0001)。奏効を示した患者様において、本併用療法のDORの中央値は9.2カ月(範囲: 1.6–23.7)であり、TPCでは5.7カ月(範囲: 0.0–24.2)でした。

 全体集団において、投与中止に至った全グレードにおける有害事象(Treatment-emergent adverse events: TEAEs)は、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法(n=406)において、「レンビマ」は30.8%、「キイトルーダ」は18.7%、両薬剤は14.0%の患者様でみられました。一方、TPC(n=388)では8.0%の患者様においてTEAEsにより投与中止に至りました。あらゆる原因によるグレード5のTEAEsは、本併用療法では5.7%の患者様でみられ、TPCでは4.9%でした。グレード3以上のTEAEsは、本併用療法では88.9%の患者様でみられ、TPCでは72.7%でした。全グレードにおける最も一般的なTEAEs(発現率25%以上)は、本併用療法では、高血圧(64.0%)、甲状腺機能低下症(57.4%)、下痢(54.2%)、悪心(49.5%)、食欲減退(44.8%)、嘔吐(36.7%)、体重減少(34.0%)、疲労(33.0%)、関節痛(30.5%)、蛋白尿(28.8%)、貧血(26.1%)、便秘(25.9%)および尿路感染(25.6%)でした。TPCでは、貧血(48.7%)、悪心(46.1%)、好中球減少症(33.8%)、脱毛症(30.9%)および疲労(27.6%)でした。本併用療法の投与期間の中央値は231日(範囲: 1–817)であり、TPCでは104.5日(範囲: 1–785)でした。

 

4.エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は、「レンビマ」のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」との併用療法として、共同で開発、製造、販促を行います。

 既に実施している併用試験に加え、両社は新たにLEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを開始しました。これにより、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は14種類のがん(子宮内膜がん、肝細胞がん、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部扁平上皮がん、尿路上皮がん、胆道がん、大腸がん、胃がん、膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、トリプルネガティブ乳がん)における20を超える臨床試験が進行中です。

 

5.エーザイについて

 エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。当社はグローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、hhcの実現に向けて戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界中の約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

当社はhhcの理念のもと、サイエンス、臨床科学、患者様の視点から、顧みられない熱帯病、持続可能な開発目標(SDGs)を含む世界のアンメット・メディカル・ニーズに対して、革新的なソリューションの提供をめざします。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公開しています。

 

6.MSDについて

 MSD(Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、130年にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDはまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDは世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。MSDの詳細については、ウェブサイト(www.msd.co.jp )やFacebookTwitterYouTubeをご参照ください。

 

1  International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Corpus uteri Fact Sheet.” Cancer Today, 2020.

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/24-Corpus-uteri-fact-sheet.pdf

2  International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Japan Fact Sheet.” Cancer Today, 2020.

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/392-japan-fact-sheets.pdf

3 平成29年患者調査, 政府統計(e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/

4 American Cancer Society, “CANCER FACT & FIGURES 2020.”

https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/annual-cancer-facts-and-figures/2020/cancer-facts-and-figures-2020.pdf