米国神経学会年次総会にて神経領域の開発品・製品に関する最新データを発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2021年4月17日から22日までバーチャルで開催される「米国神経学会(American Academy of Neurology)年次総会:AAN2021」において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemab(開発品コード:BAN2401)、デュアルオレキシン受容体拮抗剤レンボレキサント(製品名「デエビゴ®」、海外製品名「Dayvigo®」)および抗てんかん剤ペランパネル(製品名「フィコンパ®」、海外製品名「Fycompa®」)に関する最新データを発表しますのでお知らせします。

 

 主な発表としては、lecanemabについて、早期アルツハイマー病(AD)を対象として実施した臨床第Ⅱ相試験(201試験)の非盲検継続投与期における脳内アミロイド量の変化とアミロイド関連画像異常(ARIA-E(浮腫))に関する予備的解析結果を口頭発表します。レンボレキサントに関しては、不眠症の治療において、ゾルピデムからレンボレキサントへ移行する際の用量を評価する試験の結果、また、ペランパネルについて、早期併用療法や単剤療法を含むグローバルでの実臨床使用経験の統合解析結果のポスター発表などが予定されています。

 

 当社は、神経領域を重点疾患領域と位置づけており、革新的な治療薬を一日も早く創出し、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患において、当事者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

      

■アルツハイマー病/認知症領域 口頭発表演題

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化合物
口頭発表番号
セッション
発表演題・予定日時(現地時間:米国東部夏時間)

lecanemab
S19-001
老化と認知症

早期アルツハイマー病の被験者を対象としたBAN2401 臨床第Ⅱb相201試験非盲検継続投与期における最初の12カ月間の治療期間における脳内アミロイドおよびARIA-E所見に対する予備的解析
4月20日(火) 14:00~15:00

    

■アルツハイマー病/認知症領域 ポスター発表演題

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化合物
ポスター番号
セッション
発表演題

lecanemab
P1-017
老化と認知症

Clarity AD試験のベースライン時の被験者特性:早期ADを対象としたBAN2401のプラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、18カ月投与、臨床第Ⅲ相試験

   

■不眠症領域 ポスター発表演題

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化合物
ポスター番号
セッション
発表演題

不眠症一般
P26-005
不眠症と治療選択肢

不眠症の治療と路上での運転パフォーマンス:系統的文献レビュー

レンボレキサント
P26-007
不眠症と治療選択肢

不眠症の治療のためのゾルピデムからレンボレキサントへの移行の際の用量評価:多施設非盲検パイロット試験

レンボレキサント
P26-008
不眠症と治療選択肢

試験開始時に臨床的に重大な倦怠感を有する被験者における12カ月にわたる倦怠感の重症度および睡眠評価に対するレンボレキサントの効果

レンボレキサント
P26-009
不眠症と治療選択肢

レンボレキサントによる睡眠潜時および睡眠維持の結果に関する12カ月にわたるレスポンダープロファイル

レンボレキサント
P26-010
不眠症と治療選択肢

不眠症の患者様が報告した睡眠に関する苦痛と日常機能への支障に対するレンボレキサントの効果

   

■てんかん領域 ポスター発表演題

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化合物
ポスター番号
セッション
発表演題

ペランパネル
P7-001
てんかん・
臨床神経生理学

PROVE506試験:過去の臨床試験への研究サイトの参加に基づいた、患者様のリアルワールドの臨床ケアにおけるペランパネルの臨床第Ⅳ相試験の事後分析

ペランパネル
P7-007
てんかん・
臨床神経生理学

部分発作(POS)を伴うてんかん患者様における初回併用療法としてのペランパネル低用量および高用量の有効性と安全性:FAME試験の事後分析

ペランパネル
P7-008
てんかん・
臨床神経生理学

二次性全般化発作(SGS)を含む部分発作(POS)を伴うてんかん患者様の発作フリーを達成するための初期漸増期後のペランパネル単剤療法:臨床第III相試験342試験(FREEDOM)の事後解析

ペランパネル
P7-009
てんかん・
臨床神経生理学
311試験における部分発作(POS)または強直間代発作(PGTCS)を伴う小児てんかん患者様のメンタルヘルスに関するペランパネル併用療法の長期評価

ペランパネル
P7-010
てんかん・
臨床神経生理学

部分発作(POS)または強直間代発作(PGTCS)を伴う小児てんかん患者様(4〜12歳)におけるペランパネル併用療法による長期(1年)発作フリー:311試験の事後解析

ペランパネル
P7-018
てんかん・
臨床神経生理学
ELEVATE410試験の初期結果:部分発作もしくは強直間代発作を伴う4歳以上のてんかん患者様を対象とした単剤療法または初回併用療法としてのペランパネの臨床第Ⅳ相試験
ペランパネル
P7-019
てんかん・
臨床神経生理学
ミオクローヌスおよび欠神発作に対するペランパネル併用療法の有効性と安全性:332試験、311試験、232試験における成人、青年、および小児患者様の事後統合解析
ペランパネル
P7-020
てんかん・
臨床神経生理学
てんかんの治療のためのペランパネル単剤療法:臨床試験と実臨床におけるエビデンス
ペランパネル
P7-021
てんかん・
臨床神経生理学
日常診療で治療されたてんかん患者様におけるペランパネルの有効性と忍容性:グローバル統合分析研究
ペランパネル
P7-109
てんかん・
臨床神経生理学
ペランパネル併用療法を受けている部分発作(POS)または強直間代発作(PGTCS)を伴う小児てんかん患者様における健康状態の効用値
ペランパネル
P7-111
てんかん・
臨床神経生理学
焦点性および全般性発作を伴うてんかん患者様におけるペランパネル単剤療法:実臨床での経験
ペランパネル
P 7-117
てんかん・
臨床神経生理学
臨床診療で治療された焦点性および全般性発作を伴うてんかん患者様のための早期併用療法としてのペランパネル
ロルカセリン
P7-017
てんかん・
臨床神経生理学
MOMENTUM(304試験):ドラベ症候群(DS)患者様を対象としたロルカセリン併用療法の多施設共同、臨床第III相試験、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群間試験

        

■バイオジェン アルツハイマー病/認知症領域 ポスター発表演題

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化合物
ポスター番号
セッション
発表演題
アデュカヌマブ
P1-013
老化と認知症

EMBARK試験:適格なAD被験者におけるアデュカヌマブの長期的な安全性と有効性を評価するための臨床第Ⅲb相、非盲検、単一群、安全性試験 (アンコール)

 ポスター発表は、学会期間中、学会ホームページにていつでも閲覧可能です。

以上
 

<参考資料>

1.エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェン・インク(本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、以下バイオジェン)は、AD治療剤の共同開発・共同販売に関して、幅広い提携を行っています。抗Aβプロトフィブリル抗体lecanemab(開発品コード:BAN2401)についてはエーザイ主導のもとで、抗Aβ抗体アデュカヌマブについてはバイオジェン主導のもとで、グローバルでの承認取得に向けた開発をそれぞれ進め、承認取得後は米国、欧州、日本といった主要市場で共同販促を行います。

 

2.Lecanemab(開発品コード:BAN2401)について

 Lecanemabは、BioArctic AB(本社:スウェーデン)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。Lecanemabは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、世界で初めて後期臨床試験として臨床症状評価による進行抑制と脳内Aβ蓄積量の減少を統計学的有意差をもって達成し、疾患修飾効果を示しました。エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)の非盲検投与延長試験および早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。また、プレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)も実施中です。National Institutes of Health、National Institute on Agingは、AHEAD 3-45試験(A45 TrialおよびA3 Trial)に資金を提供しています。エーザイとバイオジェンはlecanemabの共同開発・共同販促に関する契約を締結しています。

 

3.レンボレキサント(日本製品名:「デエビゴ」、海外製品名:「Dayvigo」)について

 レンボレキサントは、当社創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられており、不眠障害をはじめとする睡眠覚醒治療薬としての開発を進めています。米国において2020年6月に入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその両方を伴う成人の不眠症の適応で、製品名「Dayvigo」として新発売し、日本において2020年7月に、不眠症の適応で、製品名「デエビゴ」として新発売しました。カナダ、オーストラリアなどの国や地域において新薬承認申請中です。

 

4.ペランパネル(日本製品名:「フィコンパ」、海外製品名:「Fycompa」)について 

 ペランパネルは、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。現在、ペランパネルは、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は12歳以上のてんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど70カ国以上で承認を取得しています。日本と米国においては4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法の承認も取得しています。欧州においては、4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)および7歳以上のてんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法についても承認を取得しています。ペランパネルは1日1回就寝前に経口投与するタイプの製剤です。日本では、錠剤と細粒剤の承認を取得しています。米国および欧州では、錠剤と経口懸濁液の承認を取得しています。注射剤の開発も行っています。

 

5. ロルカセリンについて

 ロルカセリンは、選択的に脳内のセロトニン2C受容体を刺激することにより、GABA作動性抑制性インターニューロンを活性化し、GABAを介したシナプス抑制を増加させることでドラベ症候群患者様の発作抑制を期待しています。米国では肥満症治療剤適応の承認を取り下げましたが、ドラベ症候群の患者様団体から要請を受けたことから、延長アクセスプログラムによる薬剤提供を継続し、ドラベ症候群に関する承認取得をめざす臨床第Ⅲ相試験が進行中です。米国食品医薬品局(FDA)からドラベ症候群に関する希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

 

6. アデュカヌマブ(開発コード:BIIB037)について

 アデュカヌマブはADの治療薬候補として開発されたモノクローナル抗体です。臨床試験データに基づき、ADによるMCIおよび軽度ADにおいて、アデュカヌマブは、疾患の原因となる病態生理に作用し、認知機能の低下(悪化)を抑制し、金銭管理、家事(掃除、買い物、洗濯など)や単独での外出などの日常生活動作におけるベネフィットが得られると期待されます。承認された場合、アデュカヌマブは、AD当事者様の疾患の経過に本源的な変化をもたらす初めての治療薬となります。アデュカヌマブは、共同開発ライセンス契約に基づきNeurimmune社から導入されました。2017年10月より、バイオジェンとエーザイは全世界的にアデュカヌマブの開発ならびに製品化を共同で実施しています。