DIAN-TUは優性遺伝アルツハイマー病に対する臨床試験において、抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体E2814を選定

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、当社が英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)と共同で創製した抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体E2814について、ワシントン大学医学部(米国セントルイス)により主導される優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する臨床試験において、抗タウ薬として最初の評価対象薬に選定されたことをお知らせします。

 

 アルツハイマー病(AD)を発症することがほぼ確実な遺伝子変異を有する方々は、多くは発症した親とほぼ同じ年齢である50代、40代、あるいは30代であっても症状を発現する(優性遺伝アルツハイマー病:DIAD)傾向があります。DIAN-TUは、DIADの発症を予防または進行を遅らせるための薬剤を評価する初めての試験として、アミロイドβ(Aβ)をターゲットとした治療薬の臨床試験を2012年に開始しました。また、Aβ凝集体からなるアミロイドプラークとともに、ADの主要な脳内病理の一つである神経原線維変化はタウの細胞内凝集体で、タウの伝播により脳内に広がると考えられています。今回、DIAN-TUは、タウをターゲットとする次世代プログラムとして、3種類の抗タウ薬を評価する臨床試験を計画しており、E2814はその最初の治験薬として選ばれました。これら治験薬のタウリン酸化ならびに凝集化への作用、神経損傷の軽減を含めたADの発症・進行に対する影響を検討することを目的としています。

 

 DIAN-TUのディレクター、治験責任医師でワシントン大学医学部のCharles F. and Joanne Knight Distinguished Professor of NeurologyであるRandall J. Bateman, M.D.は、「ADの発症において、Aβとタウの両方が疾患の進行に重要な役割を果たすことが分かってきました。これまでの私たちの研究から、いくつかの抗Aβ薬が生物学的効果を持っていることが示されました。今回の試験では、複数の抗タウ薬を用い、タウを標的とすることでADの進行を遅らせたり止めたりできるかどうかを検証します」と述べています。

 

 エーザイ ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.は、「画期的なDIAN-TUに参加できることを嬉しく思います。この研究が、我々の抗MTBRタウ抗体E2814に関する重要な知見を生み出し、アンメットニーズの高いADを患っている当事者様にベネフィットをもたらすことを期待しています。当社のヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念のもと、AD当事者様とその家族、医療従事者の皆様に貢献することをめざします」と述べています。

 

 当社は、神経領域を重点領域の一つと位置づけ、最先端の研究から革新的な創薬を行っており、引き続きADを含む認知症をはじめとするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患において、当事者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

    

<参考資料> 

  1. 1. The Dominantly Inherited Alzheimer Network(DIAN)について

 DIANは優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に焦点を置いた国際的な研究活動団体です。DIADは、稀な遺伝性遺伝子変異によって生じるADで、AD当事者様の総数の1%未満の方がこの病気を患っています。典型的には30代から50代にかけて、記憶消失や認知症を引き起こします。DIAN-TUの目標は、この病気、また可能性として、全ての型のADの治療または予防する解決策を見つけることです。DIAN-TUはDIANの臨床研究部門で、DIADを持つまたは危険因子のある方を対象とした介入治験のデザインと管理に特化している官民国際パートナーシップです。

 

  1. 2. E2814について

 E2814は抗MTBR(Microtubule binding region)タウ抗体です。E2814は、エーザイとユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。E2814は、孤発性ADを含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発され、臨床第Ⅰ相試験が実施中です。E2814は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。