「レンビマ®」(レンバチニブ)と「キイトルーダ®」(ペムブロリズマブ)の併用療法が全身治療歴のある進行性子宮内膜がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験において、化学療法と比較して統計学的に有意な全生存期間、無増悪生存期間および奏効率の改善を示す進行性子宮内膜がんを対象としたレンビマとキイトルーダの併用療法の臨床第Ⅲ相試験における、全生存期間についての初めての解析結果

エーザイ株式会社

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.

 

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)は、このたび、エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)の併用療法について、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験(309試験/KEYNOTE-775試験)の全生存期間(Overall Survival: OS)と無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)の二つの主要評価項目および奏効率(Objective Response Rate: ORR)の副次評価項目を達成したことをお知らせします。これらのポジティブな結果は、Intention-To-Treat(ITT)集団ならびにミスマッチ修復機能(mismatch repair proficient: pMMR)を有するサブグループにおいて得られました。ITT集団には、pMMRまたは高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)/ミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有する子宮内膜がん患者様が含まれます。

 

 独立データモニタリング委員会による解析の結果、本併用療法は、OS、PFSおよびORRについて、治験医師選択化学療法(ドキソルビシンまたはパクリタキセル)に対する統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。なお、本併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されている臨床試験のものと同様でした。

 両社は、本試験のデータに基づく販売承認申請をめざし、世界各国の当局と協議を行います。本試験の結果の詳細については、今後の学会で発表する予定です。

 

 Merck & Co, Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. Research Laboratories, Oncology Clinical Research のAssociate Vice PresidentであるGregory Lubiniecki博士は、「進行性子宮内膜がん患者さんは、高い死亡率と初回全身治療後の治療選択肢が限られる状況に直面しています。本試験結果は、進行性子宮内膜がんにおいて、免疫療法を含む併用療法が化学療法に対して統計学的に有意なOS、PFSおよびORRの改善を示した初めてのデータです。Merck & Co, Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.とエーザイは、引き続き「キイトルーダ」と「レンビマ」の併用療法の研究開発に注力し、子宮内膜がんのようなアンメットニーズの高い疾患に対する新たな治療法の創出に取り組んでいきます」と述べています。

 

 エーザイ株式会社の執行役 オンコロジービジネスグループ チーフメディスンクリエーションオフィサー兼チーフディスカバリーオフィサーである大和隆志博士は、「今回の309試験/KEYNOTE-775試験の結果は我々を勇気づけるものであり、進行性子宮内膜がんの患者様に希望をもたらすとともに、111試験/KEYNOTE-146試験の進行性子宮内膜がんコホートで得られた知見をさらに裏付けるものです。LEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)プログラムから創出される臨床データが増えるにつれて、メルク社とのコラボレーションの成果や、本併用療法に期待される患者様ベネフィットに自信を深めています。我々を信頼して、本試験にご協力いただいた患者様と医療従事者の皆様に感謝いたします」と述べています。

 

 309試験/KEYNOTE-775試験は、111試験/KEYNOTE-146試験の検証試験です。「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、2019年に111試験/KEYNOTE-146試験結果に基づき、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応なMSI-Hを有さない、またはdMMRを有さない子宮内膜がんにおける適応について、米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得しています。本迅速承認は奏効率および奏効期間の結果に基づいており、FDA Oncology Center of Excellenceが主導する複数国の当局による同時申請・審査に向けた国際的な枠組みであるProject Orbisによる初めての承認となりました。Project Orbisのもと、本適応について、カナダ保健省(Health Canada)から条件付き承認を、オーストラリア医療製品管理局(Australian Therapeutic Goods Administration)から暫定的承認をそれぞれ取得しました。

 

 両社は、LEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを通じて、進行性子宮内膜がんの一次治療として「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法を評価する臨床第Ⅲ相試験(LEAP-001試験)を含む13種類のがんにおける20の臨床試験を進めています。

 

以上

  

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.

    Media Relations

    Pamela Eisele: +1(267) 305-3558

    Rebecca Newberry: +1(484) 678-2952

<参考資料>

309試験/KEYNOTE-775試験について

本試験(ClinicalTrials.gov, NCT03517449)は、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がんを対象とした、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法を評価する、多施設共同、非盲検、無作為化の臨床第Ⅲ相試験です。2つの主要評価項目(デュアルプライマリーエンドポイント)はOS、およびRECISTv1.1に基づく盲検下独立中央画像判定によるPFSです。副次評価項目は、RECISTv1.1に基づく盲検下独立中央画像判定によるORR、および安全性/忍容性です。827人の登録患者様のうち、697人がMSI-Hを有さない、またはpMMRを有する患者様であり、130人がMSI-Hを有する、またはdMMRを有する患者様でした。登録患者様は、「レンビマ」(20mg、1日1回経口投与)/「キイトルーダ」(200mg 3週ごと静脈内投与を1サイクルとし最大で35サイクル(約2年)まで投与)の併用、または治験医師選択化学療法(ドキソルビシン(60 mg/m2 3週ごと静脈内投与で総投与量500 mg/m2以下)またはパクリタキセル(4週を1サイクルとして80 mg/m2 週 1 回静脈内投与を 3週連続し、1 週間休薬))に1:1で割り付けられました。

 

子宮内膜がんについて1,2,3,4,5

子宮内膜がんは、子宮の内層に発生し、子宮における最も発生頻度の高いがんです。子宮内膜がんの罹患者数は2018年において、世界で38万2千人以上と推定され、約9万人が亡くなったとされています(これらの見積もりは子宮内膜がんに加えて子宮肉腫の数が含まれており、子宮内膜がんは子宮体がんの90%以上を占めるとされており、子宮内膜がんのみの数はこの数よりもやや少ないと考えられます)。日本では2018年に約1万6千人が新たに子宮体がんと診断され、約2千5百人が亡くなられたとされています。米国では2020年に約6万6千人以上が新たに子宮体がんと診断され、約1万3千人が亡くなると推定されています。進行性または転移性子宮内膜がん(stage IV)の5年生存率は約17%と推計されています。

 

レンビマ(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性をもたらします。

現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、アジアなど65カ国以上で承認を取得しており、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。さらに、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high:MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を有さない子宮内膜がんに対するペムブロリズマブとの併用療法に係る適応で米国、オーストラリア、カナダなどで承認を取得しています(本承認は奏効率、奏効期間に基づく迅速承認であり、別途検証試験の実施が求められます)。

 

キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)100mgについて

「キイトルーダ」は、自己の免疫力を高め、がん細胞を見つけて攻撃するのを助ける抗PD-1抗体です。「キイトルーダ」はPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体です。 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は業界最大のがん免疫療法臨床研究プログラムを行っており、現在1,300を超える「キイトルーダ」の臨床試験を実施し、幅広い種類のがんや治療セッティングを検討しています。「キイトルーダ」の臨床プログラムでは、さまざまながんにおける「キイトルーダ」の役割や、「キイトルーダ」による治療効果が得られる可能性を予測する因子について模索しており、さまざまなバイオマーカーの模索も行っています。

 

 

エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(米国とカナダ以外ではMSD)は、  「レンビマ」のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」の併用療法における共同開発、共同製造、共同販促を行います。

既に実施している併用試験に加え、両社は新たにLEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを開始しました。これにより、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は13種類のがん(子宮内膜がん、肝細胞がん、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部扁平上皮がん、尿路上皮がん、胆道がん、大腸がん、胃がん、膠芽腫、卵巣がん、トリプルネガティブ乳がん)における20の臨床試験が進行中です。

 

エーザイのがん領域における取り組みについて

エーザイは、がん領域において、真の患者様ニーズが満たされておらず、かつ当社がフロントランナーとなり得る機会(立地)として、「ハラヴェン」(一般名:エリブリンメシル酸塩)や「レンビマ」での経験知を活かした「がん微小環境」とRNAスプライシングプラットフォーム等を用いた「ドライバー遺伝子変異とスプライシング異常」を標的とした抗がん剤の開発にフォーカスしています。これらの立地から新たな標的や作用機序を有する革新的新薬を創出し、がんの治癒の実現に向けて貢献することをめざしています。

 

エーザイについて

エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。当社はグローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、hhcの実現に向けて戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界中の約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

当社はhhcの理念のもと、サイエンス、臨床科学、患者様の視点から、顧みられない熱帯病、持続可能な開発目標(SDGs)を含む世界のアンメット・メディカル・ニーズに対して、革新的なソリューションの提供をめざします。

エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公開しています。

 

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のがん領域における取り組みについて

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.では、画期的な科学を革新的ながん治療薬に変換して世界中のがん患者さんを助けることに取り組んでいます。当社のオンコロジー事業にとって、がんと闘う人々を助けることは私たちの情熱であり、がん治療薬へアクセスしやすくすることは私たちの責任です。また、がん領域における取り組みの一環として、医薬品業界で一二を争う急成長を遂げている開発プログラムにより、30種類以上のがんに対するがん免疫療法の可能性を模索しています。また、引き続き戦略的買収を通じて、ポートフォリオを強化し、進行がんの治療を改善する可能性をもつ有望ながん治療薬候補の開発を最優先に進めています。当社のオンコロジー臨床試験について詳しくは、当社ウェブサイトをご覧ください。

 

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.について

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国とカナダ以外の国と地域ではMSD)は、125年以上にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。当社はまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けており、世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。詳細については当社ウェブサイトやMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のTwitterFacebookInstagramYouTubeLinkedInをご参照ください。

 

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の将来に関する記述

このニュースリリースには、米国の1995年私的証券訴訟改革法(the Private Securities Litigation Reform Act of 1995)の免責条項で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの記述は、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の経営陣の現時点での信条と期待に基づくもので、相当のリスクと不確実性が含まれています。新薬パイプラインに対する承認取得またはその製品化による収益を保証するものではありません。予測が正確性に欠けていた場合またはリスクもしくは不確実性が現実化した場合、実際の成果が、将来に関する記述で述べたものと異なる場合も生じます。

リスクと不確実性には、業界の一般的な状況および競争環境、金利および為替レートの変動などの一般的な経済要因、最近の新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的蔓延、医薬品業界の規制やヘルスケア関連の米国法および国際法が及ぼす影響、ヘルスケア費用抑制の世界的な傾向、競合他社による技術的進歩や新製品開発および特許取得、承認申請などの新薬開発特有の問題、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による将来の市況予測の正確性、製造上の問題または遅延、国際経済および政府の信用リスクなどの金融不安、画期的製品に対するMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の特許権やその他の保護の有効性への依存、特許訴訟や規制措置の対象となる可能性等がありますが、これらに限定されるものではありません。

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は、新たな情報、新たな出来事、その他いかなる状況が加わった場合でも、将来に関する記述の更新を行う義務は負いません。将来に関する記述の記載と大きく異なる成果を招くおそれがあるこの他の要因については、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.に関するForm 10-Kの2019年度年次報告書および米国証券取引委員会(SEC)のインターネットサイト(www.sec.gov)で入手できるSECに対するその他の書類で確認できます。

 

1Henley et al. 2018: https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/mm6748a1.htm

2Cancer Research Institute website, accessed 10/29/2020: https://www.cancerresearch.org/immunotherapy/cancer-types/uterine-endometrial-cancer

3American Cancer Society, Facts & Figures 2020 pdf: https://www.cancer.org/research/cancer-facts-statistics/all-cancer-facts-figures/cancer-facts-figures-2020.html

4国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(人口動態統計): https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html

5American Cancer Society website, accessed 10/29/2020: https://www.cancer.org/cancer/endometrial-cancer/detection-diagnosis-staging/survival-rates.html