抗てんかん剤「フィコンパ®」、中国において部分てんかんの単剤療法および小児適応の追加申請が受理

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗てんかん剤「フィコンパ®」(中国語表記:「卫克泰®」、一般名:ペランパネル)について、中国国家薬品監督管理局に、てんかんの部分発作に対する単剤療法および4歳以上の小児てんかんの部分発作に係る追加適応の申請が受理されたことをお知らせします。

 

 部分発作に対する単剤療法に係る追加申請は、グローバル(米国、欧州、中国など)で実施した部分発作(二次性全般化発作を含む)を有する12歳以上の患者様を対象とした併用療法の臨床第Ⅲ相試験(304試験、305試験、306試験および335試験)を用いて単剤療法の安全性および有効性を推定したサブグループ解析データに基づくものです。また、「フィコンパ」単剤療法の有効性および安全性を補足するデータとして、日本、韓国で実施した12歳から74歳の部分発作(二次性全般化発作を含む)を有する未治療のてんかん患者様を対象とした臨床第Ⅲ相試験(FREEDOM試験/342試験)の結果も提出しました。

 小児てんかんの部分発作に係る追加申請は、グローバルで実施した4歳以上12歳未満のコントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかんを対象とした「フィコンパ」併用療法の臨床第Ⅲ相試験(311試験)の結果に基づくものです。

 

 中国におけるてんかん患者様数は約900万人と推定されており、乳幼児期から高齢期まで、すべての年代で発病しますが、18歳以前と高齢期での発病が多いとされています。てんかん患者様の約30%では既存の抗てんかん剤による発作コントロールが十分にできておらず、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 

 「フィコンパ」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体を選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制します。本剤は中国において、12歳以上の部分発作(二次性全般化発作を含む)併用療法に対する承認を取得しています。

 

 当社は、てんかんを含む神経領域を重点疾患領域と位置づけています。今回の「フィコンパ」の中国における追加適応申請の受理を機に、世界のより多くの患者様に発作フリー(seizure freedom)をお届けする使命を追求し、てんかんの患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

  

以上

 

<参考資料>
  1. 1. 「フィコンパ」(一般名:ペランパネル、海外製品名「Fycompa」)について

 「フィコンパ」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合 AMPA 受容体拮抗剤です。「フィコンパ」は1日1回就寝前に経口投与するタイプの製剤です。日本では、錠剤と細粒剤の承認を取得しています。米国および欧州では、錠剤と経口懸濁液の承認を取得しています。

 本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は12歳以上のてんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。日本と米国と韓国においては4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法の承認を取得しています。欧州においては、小児てんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)および小児の特発性全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法に係る適応を追加申請しています。現在までに、世界で30万人を超える患者様に「フィコンパ」が処方されました(すべての適応症の合計)。

 本剤について、レノックス・ガストー症候群に伴うてんかん発作を有する患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(338試験)を実施しています。また、注射剤の開発も行っています。

 

  1. 2. 中国での部分てんかんの単剤療法に係る追加申請の基となる臨床第Ⅲ相試験について

 「フィコンパ」の中国における単剤療法に係る追加申請は、日本、中国、韓国などで実施した臨床第Ⅲ相試験(335試験2)の結果に加え、グローバル(米国、欧州、中国など)で実施した3つの臨床第Ⅲ相試験(3043、3054および306試験5)の単剤療法の安全性および有効性を推定したサブグループ解析データに基づくものです。

 335試験は、主にアジア地域の患者様における「フィコンパ」の有効性と安全性を評価することを目的として実施されました。また、304試験と305試験は、投与量範囲の決定を主目的とし、「プラセボ、実薬8mg、同12mg」の3群で実施されました。306試験は、最小有効量を把握することを主目的として、「プラセボ、実薬 2mg、同4mg、同8mg」の4群で実施されました。

 いずれの試験も1~3種類の抗てんかん剤治療を受けている部分発作を有する12歳以上の患者様を対象とした多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験として実施されました。335試験の主要評価項目は「発作頻度変化率」であり、304、305、306試験の主要評価項目は欧州承認用の「50%レスポンダーレート(50% responder rate、部分発作回数が観察期間と比べて50%以上改善した症例の割合)」および米国承認用の「発作頻度変化率(percentage change in seizure frequency)」でした。各試験の結果は下記の通りです。

  

1)335試験

  • 「発作頻度変化率」:プラセボ投与群の-10.8%に対し、「フィコンパ」 4mg投与群で-17.3%(p=0.223)、8mg投与群で-29.0%(p=0.0003)、12mg投与群で-38.0%(p<0.00001)
  • 有害事象(上位3つ):浮動性めまい、傾眠、鼻咽頭炎

2)304試験

  • 50%レスポンダーレート:プラセボ投与群の26.4%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で37.6%(p=0.0760)、12mg投与群で36.1%(p=0.0914)
  • 発作頻度変化率:プラセボ投与群の-21.0%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で-26.3%(p=0.0261)、12mg投与群で-34.5%(p=0.0158)
  • 有害事象(上位6つ):浮動性めまい、傾眠、神経過敏、頭痛、転倒、運動失調

3)305試験

  • 50%レスポンダーレート:プラセボ投与群の14.7%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で33.3%(p=0.0018)、12mg投与群で33.9%(p=0.0006)
  • 発作頻度変化率:プラセボ投与群の-9.7%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で-30.5%(p=0.0008)、12mg投与群で-17.6%(p=0.0105)
  • 有害事象(上位4つ):浮動性めまい、疲労、頭痛、傾眠

4)306試験

  • 50%レスポンダーレート:プラセボ投与群の17.9%に対し、「フィコンパ」 2mg投与群で20.6%(p=0.4863)、4mg投与群で28.5%(p=0.0132)、8 mg投与群で34.9%(p=0.0003)
  • 発作頻度変化率:プラセボ投与群の-10.7%に対し、「フィコンパ」 2mg投与群で-13.6%(p=0.4197)、4mg投与群で-23.3%(p=0.0026)、8 mg投与群で-30.8%(p<0.0001)
  • 有害事象(上位3つ):浮動性めまい、頭痛、傾眠
  1. 3. FREEDOM試験(342試験6)の概要

 FREEDOM試験(342試験)は日本と韓国で実施された、12歳から74歳の部分発作(二次性全般化発作を含む)を有する未治療のてんかん患者様を対象とした、「フィコンパ」の単剤療法の有効性および安全性を評価する非盲検非対照の臨床第Ⅲ相試験です。「フィコンパ」4mgまでを1日1回就寝前に経口投与(発作発生の場合8mgへ増量)しました。治療漸増期6週間、治療維持期26週間(4 mgから8 mgへ増量する場合、治療漸増期4週間および治療期26週間)、および継続期からなる治療期から構成されます。本試験では、89人の対象患者様に「フィコンパ」が単剤投与され、評価対象の患者様73人において4 mgで治療維持期26週間における発作の完全消失の割合が有効性基準*を上回り、主要評価項目を達成しました。また、4 mgおよび8 mgを合わせた中間結果においても有効性基準を上回っています。本試験で確認された有害事象(発生頻度10%以上)は浮動性めまい、傾眠、上咽頭炎、頭痛であり、これまでの「フィコンパ」の安全性プロファイルと同様でした。

 

*本試験の有効性基準は、既存の抗てんかん薬の単剤療法の臨床試験成績などを参考に設定され、本試験の有効性評価対象73人の場合は、発作の完全消失割合が52.1%以上となります。

 

  1. 4. 311試験7の概要

 311試験はグローバル(米国、欧州、日本、韓国)で実施された、4歳以上12歳未満のコントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかん患者様180人を対象とした、他剤併用時における「フィコンパ」経口懸濁剤の安全性、忍容性および暴露量と有効性の関係を評価する非盲検の臨床第Ⅲ相試験です。治療期最長23週間(漸増期最長11週間、維持期最長12週間)、および継続期から構成されます。本試験では、1日1回就寝前に「フィコンパ」 2~16 mgまでを経口投与されました。主要評価項目として安全性および忍容性を評価し、有効性が12歳以上の患者様の場合と同様に得られることが示されました。本試験で確認された有害事象(発生頻度10%以上)は、傾眠、上咽頭炎、発熱、嘔吐、浮動性めまい、インフルエンザ、易刺激性であり、これまでの「フィコンパ」の安全性プロファイルと同様でした。

 

  1. 5. てんかんについて

 てんかんの患者様数は、中国で約900万人、日本で約100万人、米国で約340万人、欧州で約600万人、世界中で約6,000万人などの報告があります。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず1、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分発作と、約 4割を占める全般発作に大別されます。部分発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

 

  • 1

    “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed May 24, 2016, http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109

  • 2

    Nishida T, et al. Adjunctive perampanel in partial-onset seizures: Asia-Pacific, randomized phase III study. Acta Neurol Scand. 2018;137:392–399.

  • 3

    French JA, et al. Adjunctive perampanel for refractory partial-onset seizures: randomized phase III study 304. Neurology 2012; 79, 589-596

  • 4

    French JA, et al. Evaluation of adjunctive perampanel in patients with refractory partial-onset seizures: results of randomized global phase III study 305. Epilepsia 2013; 54, 117-125.

  • 5

    Krauss GL, et al. Randomized phase III study 306: adjunctive perampanel for refractory partial-onset seizures. Neurology 2012; 78, 1408-1415.

  • 6

    Yamamoto, Takamichi et al. Efficacy and safety of perampanel monotherapy in patients with focal-onset seizures with newly diagnosed epilepsy or recurrence of epilepsy after a period of remission: The open-label Study 342 (FREEDOM Study). Epilepsia, 2020; 5, 274-284.

  • 7

    Fogarasi, Andras et al. Open-label study to investigate the safety and efficacy of adjunctive perampanel in pediatric patients (4 to <12 years) with inadequately controlled focal seizures or generalized tonic-clonic seizures. Epilepsia. 2020; 61, 125-137.