抗てんかん剤「Fycompa®」の小児適応に関して欧州医薬品庁の医薬品委員会より承認勧告を受領

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、英国子会社であるエーザイ・リミテッドが提出していた自社創製の抗てんかん剤「Fycompa®」(一般名:ペランパネル、日本製品名:「フィコンパ®」)に関する小児適応の追加申請について、欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)の医薬品委員会(Committee for Medicinal Products for Human Use:CHMP)より承認勧告(positive opinion)を受領しましたので、お知らせします。本承認勧告は、部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法の適応において対象年齢を現在の12歳以上から4歳以上に、強直間代発作に対する併用療法の適応において対象年齢を現在の12歳以上から7歳以上に、それぞれ拡大することを内容とするものです。

 

 2019年2月にEMAに提出した追加申請は、グローバルで実施した小児てんかんを対象とした「Fycompa」併用療法の臨床第Ⅲ相試験(311試験)および臨床第Ⅱ相試験(232試験)の結果に基づいています。311試験では、コントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかんの患者様(4歳以上12歳未満)を対象とし、他剤併用時における「Fycompa」の安全性、忍容性および血中濃度と有効性の関係を評価しました。232試験では、小児てんかんの患者様(2歳以上12歳未満)を対象とし、他剤併用時における薬物動態、有効性および長期安全性を評価しました。

 

 「Fycompa」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体を選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制します。本剤は日本において、4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法、および12歳以上のてんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法の承認を取得しています。また、米国では、4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法および併用療法、および12歳以上の強直間代発作に対する併用療法に係る承認も取得しています。

 

 当社は、てんかんを含む神経領域を重点疾患領域と位置づけています。欧州においては、「Fycompa」をはじめとして複数のてんかん治療薬を取り揃えており、より多くの患者様に発作フリー(seizure freedom)をお届けする使命を追求し、てんかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

                

 <参考資料>

  1. 1. 「Fycompa」(一般名:ペランパネル、日本製品名:「フィコンパ」)について

 「Fycompa」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合 AMPA 受容体拮抗剤です。「Fycompa」は1日1回就寝前に経口投与するタイプの製剤です。日本では、錠剤と細粒剤の承認を取得しています。米国および欧州では、錠剤と経口懸濁液の承認を取得しています。

 本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は12歳以上のてんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。日本と米国においては4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法の承認も取得しています。現在までに、世界で30万人を超える患者様に「Fycompa」が処方されました(すべての適応症の合計)。

 本剤について、レノックス・ガストー症候群に伴うてんかん発作を有する患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(338試験)を実施しています。また、注射剤の開発も行っています。

 

  1. 2. 311試験1の概要

 311試験はグローバル(米国、欧州、日本、韓国)で実施された、4歳以上12歳未満のコントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかん患者様180人を対象とした、他剤併用時における「フィコンパ」経口懸濁剤の安全性、忍容性および暴露量と有効性の関係を評価する非盲検の臨床第Ⅲ相試験です。治療期最長23週間(漸増期最長11週間、維持期最長12週間)、および継続期から構成されます。本試験では、1日1回就寝前に「フィコンパ」 2~16 mgまでを経口投与されました。主要評価項目として安全性および忍容性を評価し、有効性が12歳以上の患者様の場合と同様に得られることが示されました。本試験で確認された有害事象(発生頻度10%以上)は、傾眠、上咽頭炎、発熱、嘔吐、浮動性めまい、インフルエンザ、易刺激性であり、これまでの「フィコンパ」の安全性プロファイルと同様でした。

 

  1. 3. 232試験2の概要

 232試験は、グローバル(米国、欧州)で実施された、小児てんかん患者様(2 歳以上12 歳未満)63人を対象とした、多施設共同、非盲検、継続投与試験です。他剤併用時における「Fycompa」経口懸濁剤の薬物動態、安全性、忍容性および有効性を評価しました。「Fycompa」を1日1回0.015 mg/kgから最大0.18 mg/kgまで経口にて漸増投与し、11週間の治療期終了後、継続期(41週間)にて長期の安全性を確認しました。232試験で認められた有害事象(頻度10%以上)は、発熱、疲労、嘔吐、易刺激性、傾眠、浮動性めまい、上気道感染症でした。

 

  1. 4. てんかんについて

 てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分発作と、約4割を占める全般発作に大別されます。部分発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

 てんかんの患者様数は、日本で約100万人、米国で約340万人、欧州で約600万人、中国で約900万人、世界中で約6,000万人などの報告があります。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず3、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。てんかんはすべての年代で発病しますが、18歳以前の小児期と高齢期での発病が多いとされています。小児てんかんの原因や臨床像は一様ではなく、その予後も極めて良い場合や難治が予測される場合もあり、その治療はそれぞれの患者様に特有の配慮が求められます。

 

  • 1

    A. Fogarasi et al. Open-label study to investigate the safety and efficacy of adjunctive perampanel in pediatric patients (4 to <12 years) with inadequately controlled focal seizures or generalized tonic-clonic seizures Epilepsia. 2020 Jan;61(1):125-137.

  • 2

    Ben Renfroe et al. Adjunctive Perampanel Oral Suspension in Pediatric Patients From ≥2 to <12 Years of Age With Epilepsy: Pharmacokinetics, Safety, Tolerability, and Efficacy J Child Neurol. 2019 Apr;34(5):284-294

  • 3

    “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed May 24, 2016, http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109

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