切除不能肝細胞がんに対する一次療法としてのレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法に関し、米国FDAより審査完了通知を受領

エーザイ株式会社

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.

 

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)は、このたび、当社のレンバチニブメシル酸塩(製品名:「レンビマ®」、以下 レンバチニブ)およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(製品名:「キイトルーダ®」)併用療法の米国における切除不能肝細胞がん一次療法を適応とした迅速承認申請について、米国食品医薬品局(FDA)から審査完了通知(Complete Response Letter: CRL)を受領したことをお知らせします。

 

 本迅速承認申請は、単群試験で臨床的意義のある有効性を示した116/KEYNOTE-524試験(臨床第Ⅰb相試験)の結果に基づいて行いました。本試験データに基づき2019年7月にはFDAよりブレイクスルーセラピーの指定を受け、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)にて最終結果の報告がされています。本申請のPDUFA(Prescription Drugs User Fee Act) アクション・デート(審査終了目標日)に先立ち、他の併用療法が全生存期間データを有するランダム化比較試験に基づき承認されました。その結果、CRLでは、「本申請は、全身性の前治療歴のない切除不能または転移性の進行性肝細胞がんに対するレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法が既存の治療法に対して意義のある優位性を示すエビデンスを提示していない」とされました。116/KEYNOTE-524試験に基づく本申請が迅速承認の条件を満たさなくなったことを受け、両社は、本併用療法の有効性および臨床上のベネフィットに関する十分なエビデンスを示すための臨床試験の推進を含め、今後の適切な対応についてFDAと協議します。なお、両社は既に、進行性肝細胞がんに対する一次療法としてのレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法を評価する臨床第Ⅲ相試験(LEAP-002試験)を進めており、患者様登録も完了しています。

 今回のCRL受領は、レンバチニブおよびペムブロリズマブの現在承認されている適応症に影響を与えるものではありません。

 

 当社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は現在、本併用療法に関し、LEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを通じて13種類のがんにおける18の臨床試験を進めています。

 

以上

   

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

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  • Merck & Co., Inc. Kenilworth., N.J., U.S.A.

    Media Relations

    Pamela Eisele: +1(267) 305-3558

    Michael Close: +1(267) 305-1211

<参考資料>

1. 116/KEYNOTE-524試験について

 本試験は、切除不能な肝細胞がん患者様に対する非盲検、単群の臨床第Ⅰb相試験です。申請には、全身投与治療歴のない100人の患者様の解析結果が用いられました。レンバチニブは体重によって12 mg(60㎏以上)または8 mg(60㎏未満)を1日1回経口投与し、ペムブロリズマブは3週ごと200 mgを静脈内投与しました。主要評価項目として、独立画像判定(Independent Imaging Review: IIR)に基づく腫瘍径の変化を効果判定に用いた従来の評価基準(RECIST1.1)、ならびに腫瘍壊死領域を効果判定に加えた評価基準(mRECIST)を用い、奏効率 (Objective Response Rate: ORR)と奏効期間(Duration Of Response: DOR)を評価しました。また、副次評価項目は無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)、無増悪期間(Time To Progression: TTP)、全生存期間(Overall Survival: OS)でした。データカットオフ時点(2019年10月31日)でのフォローアップ期間(中央値)は10.6カ月(95%信頼区間 (CI): 9.2-11.5)でした。その時点で37人の患者様は投与を継続しており(両薬剤継続34人、レンバチニブのみ継続3人)、投与継続期間(中央値)は7.9カ月(範囲: 0.2カ月~31.1カ月)でした。

 主要評価項目の最終解析の結果、RECIST1.1に基づく独立画像判定では、ORRは36%(95% CI: 26.6-46.2)であり、そのうち完全奏効が1%、部分奏効が35%でした。また、DOR(中央値)は12.6カ月(95% CI: 6.9カ月-NE(推定不能))でした。mRECISTに基づく独立画像判定では、ORRは46%(95% CI: 36.0-56.3)であり、そのうち完全奏効が11%、部分奏効が35%でした。また、DOR(中央値)は8.6カ月(95% CI: 6.9カ月-NE)でした。

 治療関連の有害事象(Treatment-Related Adverse Events: TRAEs)により6%の患者様でレンバチニブとペムブロリズマブの投与を中止しました。同様に14%の患者様でレンバチニブの投与を、10%の患者様でペムブロリズマブの投与を中止しました。グレード3以上の有害事象は67%(グレード3: 63%、グレード4: 1%, グレード5: 3%)の患者様で認められました。グレード4の有害事象(1例)は白血球および好中球の減少でした。治療との関連が否定できない死亡が3例認められ、内訳は急性呼吸不全/急性呼吸窮迫症候群1例、腸管穿孔1例、肝機能異常1例でした。本併用療法の主な有害事象(20%以上)は、高血圧(36%)、下痢(35%)、疲労(30%)、食欲減退(28%)、甲状腺機能低下症(25%)、手掌足底発赤知覚不全症候群(23%)、体重減少(22%)、発声障害(21%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加(20%)、蛋白尿(20%)でした。

 

2.レンバチニブメシル酸塩について

 レンバチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、レンバチニブは、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗腫瘍免疫活性をもたらします。また、作用機序に関する非臨床研究モデルで示されているとおり、がん微小環境におけるレンバチニブと抗PD-1抗体による相乗作用の結果、レンバチニブと抗PD-1抗体の併用による抗腫瘍活性は、レンバチニブおよび抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法の抗腫瘍活性を上回ることが示されました。

 現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しており、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。さらに、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high:MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を有さない子宮内膜がんに対するペムブロリズマブとの併用療法に係る適応で米国、オーストラリア、カナダなどで承認を取得しています(本承認は奏効率、奏効期間に基づく迅速承認であり、別途検証試験の実施が求められます)。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。

 

3.ペムブロリズマブについて

 ペムブロリズマブは、自己の免疫力を高め、がん細胞を見つけて攻撃するのを助ける抗PD-1抗体です。ペムブロリズマブはPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体です。 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は業界最大のがん免疫療法臨床研究プログラムを行っており、現在1,200を超えるペムブロリズマブの臨床試験を実施し、幅広い種類のがんや治療セッティングを検討しています。ペムブロリズマブの臨床プログラムでは、さまざまながんにおけるペムブロリズマブの役割や、ペムブロリズマブによる治療効果が得られる可能性を予測する因子について模索しており、さまざまなバイオマーカーの模索も行っています。

 

4. エーザイのがん領域の取り組みについて

 エーザイは、がん領域において、真の患者様ニーズが満たされておらず、かつ当社がフロントランナーとなり得る機会(立地)として、「ハラヴェン®」(一般名:エリブリンメシル酸塩)や「レンビマ」で経験知のある「がん微小環境」とRNAスプライシングプラットフォーム等を用いた「ドライバー遺伝子変異とスプライシング異常」を標的とした抗がん剤の開発にフォーカスしています。これらの立地から新たな標的や作用機序を有する革新的新薬を創出し、がんの治癒の実現に向けて貢献することをめざしています。

 

5. エーザイについて

 エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。当社はグローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、hhcの実現に向けて戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界中の約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 当社はhhcの理念のもと、サイエンス、臨床科学、患者様の視点から、顧みられない熱帯病、持続可能な開発目標(SDG)を含む世界のアンメット・メディカル・ニーズに対して、革新的なソリューションの提供をめざします。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公開しています。

 

6. Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のがん領域における取り組み

 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.では、画期的な科学を革新的ながん治療薬に変換して世界中のがん患者さんを助けることに取り組んでいます。オンコロジー事業にとって、がんと闘う人々を助けることは私たちの情熱であり、がん治療薬へアクセスしやすくすることは私たちの責任です。また、がん領域における取り組みの一環として、医薬品業界で一二を争う急成長を遂げている開発プログラムにより、30種類以上のがんに対するがん免疫療法の可能性を模索しています。また、引き続き戦略的買収を通じて、がん免疫療法のポートフォリオを強化し、進行がんの治療を改善する可能性をもつ有望ながん治療薬候補の開発を最優先に進めています。当社のオンコロジー臨床試験について詳しくは、当社ウェブサイトをご覧ください。

 

7. Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.について

 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国とカナダ以外の国と地域ではMSD)は、125年以上にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。当社はまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けており、世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。詳細については当社ウェブサイトやMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のTwitterFacebookInstagramYouTubeLinkedInをご参照ください。

 

8. Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の将来に関する記述

 このニュースリリースには、米国の1995年私的証券訴訟改革法(the Private Securities Litigation Reform Act of 1995)の免責条項で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの記述は、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の経営陣の現時点での信条と期待に基づくもので、相当のリスクと不確実性が含まれています。新薬パイプラインに対する承認取得またはその製品化による収益を保証するものではありません。予測が正確性に欠けていた場合またはリスクもしくは不確実性が現実化した場合、実際の成果が、将来に関する記述で述べたものと異なる場合も生じます。

 リスクと不確実性には、業界の一般的な状況および競争環境、金利および為替レートの変動などの一般的な経済要因、最近の新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的蔓延、医薬品業界の規制やヘルスケア関連の米国法および国際法が及ぼす影響、ヘルスケア費用抑制の世界的な傾向、競合他社による技術的進歩や新製品開発および特許取得、承認申請などの新薬開発特有の問題、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による将来の市況予測の正確性、製造上の問題または遅延、国際経済および政府の信用リスクなどの金融不安、画期的製品に対するMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の特許権やその他の保護の有効性への依存、特許訴訟や規制措置の対象となる可能性等がありますが、これらに限定されるものではありません。

 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は、新たな情報、新たな出来事、その他いかなる状況が加わった場合でも、将来に関する記述の更新を行う義務は負いません。将来に関する記述の記載と大きく異なる成果を招くおそれがあるこの他の要因については、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.に関するForm 10-Kの2019年度年次報告書および米国証券取引委員会(SEC)のインターネットサイト(www.sec.gov)で入手できるSECに対するその他の書類で確認できます。

 

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