中等度から重度のCOVID-19感染患者様に対する治療薬創出を目指す革新的アダプティブデザインによる臨床試験(REMAP-COVID)を開始エーザイ創製のエリトラン(E5564)が複数の国際臨床試験サイトで評価される最初の免疫調節療法治験薬として選定

Global Coalition for Adaptive Research

エーザイ株式会社

     

 Global Coalition for Adaptive Research(米国、カリフォルニア州、ロサンゼルス、以下 GCAR)と エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、このたび、University of Pittsburgh Medical Center(米国、ペンシルベニア州、ピッツバーグ、以下 UPMC)と共同でCOVID-19による入院患者様に対する複数の治療薬の効果を確認する革新的なアダプティブプラットフォーム臨床試験*であるREMAP-CAP(A Randomized, Embedded, Multifactorial, Adaptive Platform trial for Community-Acquired Pneumonia)のサブスタディーとなるREMAP-COVIDを実施することをお知らせします。

 

 エーザイ創製のTLR4(Toll-Like Receptor 4)拮抗剤エリトランがREMAP-COVIDにおける免疫調節療法としての最初の評価対象治験薬に選定され、中等度のCOVID-19患者様に対して有効性が評価されます。本試験はUPMCヘルスシステム下の病院および米国内の複数の医療センターで実施され、今後、日本を含むグローバルなREMAP-COVIDネットワークの臨床試験サイトにも実施施設を拡大する予定です。エリトランの安全性プロファイルは、重症セプシスを対象として実施した大規模な臨床第Ⅲ相試験で確認されています。エリトランは、様々な炎症誘発性メディエーターの過剰産生と放出によって引き起こされるサイトカインストームを抑制し、COVID-19患者様の肺や他の臓器の損傷から保護することが期待されます。

 

 Department of Critical Care Medicine at the University of PittsburghおよびUPMCの准教授でREMAP-CAP:COVIDの米国の治験責任医師であるChristopher Seymour, M.D. MSCは、「私たちは、エーザイと共同で、この有望な治験薬候補に対する臨床試験を開始することを大変嬉しく思います。従来の臨床試験とは違い、アダプティブデザインを用いることで、患者様の安全性に最大限配慮しながら、臨床試験の結果をより早く得られる可能性が高くなります。REMAP-COVIDは、COVID-19に有効な治療法を、可能な限り安全、迅速かつ効果的に見出す最適な研究です」と述べています。

 

 エーザイ ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサーである Lynn Kramer, M.D.は、「エーザイは、この前例のないCOVID-19のパンデミックと闘うため、本共同イニシアチブに参加できることを誇りに思っています。当社の免疫調節療法薬剤TLR4拮抗剤エリトランについて、単独、もしくは他の薬剤との併用で、COVID-19入院患者様に対する有効性が評価されることを嬉しく思います。私たちは、ヒューマン・ヘルスケア理念のもと、世界中の患者様、そのご家族、および医療関係者に貢献していきます」と述べています。

 

 REMAP-CAPは、非パンデミックとパンデミックの双方の状況において重症肺炎に対する最適な治療法を見出すように設計されています。今回のCOVID-19拡大に伴いREMAP-CAPは当初の目的通り、パンデミックモード(REMAP-COVIDサブスタディー)に移行し、治験計画にCOVID-19をターゲットとした治験薬投与群を追加し、COVID-19患者様の組み込みを行います。本試験は、多施設共同、無作為化、標準療法および複数の実薬を用いた、並行群間比較臨床試験で、主要評価項目は投与後21日間における臓器不全未発症の期間で、エリトランは入院患者様に対するREMAP-COVIDの免疫調節療法として評価されます。

 

 REMAP-CAPは、世界の主要な救命救急医療の治験医師のほか、パンデミックおよび感染症の集団発生、ウイルス、免疫、救急医療の専門家、およびベイズ統計学者によって主導されています。大規模国際プラットフォームであるREMAP-CAPには、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの218拠点で1100人以上の患者様が既に登録されています。この重要な研究は、アダプティブプラットフォーム臨床試験の統計的設計のリーダーであるBerry Consultantsと共同で実施されており、各国政府、および直近に米国の治験施設へ100万ドル(Translational Breast Cancer Research Consortiumを通じて)の資金提供を行ったThe Breast Cancer Research Foundationをはじめとする世界中の非営利団体からサポートされています。

 

 Robert J. Margolis Professor of Business, Medicine, and Policy および founding Director of the Duke-Margolis Center for Health Policy at Duke University であるMark McClellan, M.D. Ph.D.は、「既存の関連知識を駆使したCOVID-19に対するREMAP研究戦略の要は、ウイルスに対する複数の治療法の安全性と有効性を迅速かつ同時に評価するためのプラットフォームです。COVID-19に対する臨床試験を通して、我々は様々なことを学ぶことができるようになります」と説明しています。

 

 GCARのCEOであるMeredith Buxton, Ph.D. MPHは、「GCARは、この国際的な取り組みに参加し、米国地域調整センターとして機能するピッツバーグ大学と並んで、米国でREMAP-CAP:COVIDのトライアルスポンサーとして参加することを光栄に思います。この重要な取り組みをサポートするために、我々のプラットフォーム試験における豊富な経験を活用できることを嬉しく思います。アカデミア、業界、慈善団体の主要なパートナーと協力することで、COVID-19患者様に最適な治療オプションの発見に努めます」と述べています。

 

 REMAP-CAPおよびREMAP-COVIDサブスタディーに関する詳細な情報は、www.remapcap.orgをご確認ください。Twitterアカウント@remap_capでも情報を公開しています。(英語のみ)

 

* アダプティブプラットフォーム臨床試験:より有効性が高いと予想される治療群への割付比率をアダプティブに変えることが可能な臨床試験デザイン

 

以上

     

お問合せ先

  • GCAR

    Rachel Rosenstein-Sisson, rrosenstein.sisson@gcaresearch.org,

    TEL:+1 818-398-134 (米国)

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  1. <参考資料>
  2. 1. Global Coalition for Adaptive Research(GCAR)について

 Global Coalition for Adaptive Research(GCAR)は501(c)(3)、医師、臨床研究者、擁護団体、慈善団体、バイオ医薬品、保健当局、およびその他の医療関係者と協力して、稀で致命的な病気の治療法の発見と開発を促進するために、マスタープロトコルやプラットフォームトライアルを含む革新的で複雑なトライアルのスポンサーを務める非営利組織です。GCARは、最初の主要な取り組みとして、生命を脅かす危険性があり、最も一般的な原発性脳腫瘍の一種である神経膠芽腫(GBM)患者様向けの国際的な適応型プラットフォーム試験であるGBM AGILEを後援しています。GCARは、最近のCOVID-19で入院した患者様をはじめ、患者様に利益をもたらす他の革新的なコラボレーションをサポートするように拡張しています。この取り組みにおいて、GCARはREMAP-CAPアダプティブプラットフォームトライアル(www.remapcap.org)のCOVIDに特有のコンポーネントであるREMAP-COVIDの米国における治験スポンサーとして機能し、パンデミック肺炎の最適な治療法を決定するように設計されています。

 GCARの詳細は、www.gcaresearch.orgをご覧ください。Twitterアカウント@GCAResearchFacebookでも情報を公開しています。

 

  1. 2. エーザイについて

 エーザイ株式会社は、本社を日本に置く研究開発型グローバル製薬企業です。患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jp をご覧ください。

 

  1. 3. UPMC(University of Pittsburg Medical Center)について

 210億ドルの医療提供者であり保険会社であるピッツバーグに本拠を置くUPMCは、患者様中心で高い費用対効果に対し、説明責任を果たしうるケアの新しいモデルを創造しています。ペンシルベニア州で最大の非政府雇用者であるUPMCは、90,000人を超える従業員、40の病院、700の診療所と外来施設、およびペンシルベニア西部で最大の医療保険会社である380万人の保険サービス部門を統合しています。直近の会計年度において、UPMCは、地域の最も脆弱な市民へのケアを含め、地域社会に12億ドルの利益を貢献し、連邦、州、地方税で5億8700万ドルを支払いました。UPMCは、University of Pittsburgh Schools of the Health Sciencesと緊密に連携して、自身のinnovation and commercialization arm、UPMC Enterprises、およびUPMC Internationalを通じて、臨床、管理、および技術的スキルを世界中で提供しています。US News&World Reportは、UPMC Presbyterian Shadysideを毎年恒例のHonor Roll of America’s Best Hospitalsにランク付けし、UPMC Children's Hospital of PittsburghをHonor Roll of America’s Best Children’s Hospitalsにランク付けしています。詳細については、UPMC.comをご覧ください。

 

  1. 4. エリトラン(E5564)について

 エリトランは、細菌が持つエンドトキシンの活性本体であるLipid Aの化学構造アナログで、天然物有機合成技術を駆使した、エーザイ創製のTLR4(Toll-Like Receptor 4)拮抗剤です。重症セプシスの治療薬として開発され、大規模な臨床第Ⅲ相試験を含む14の臨床試験でエリトランの安全性は確認されています。サイトカインストームの原因となる多種のサイトカイン産生シグナルの最上流に位置するTLR4の活性化を阻害することで、COVID-19による炎症や重症化を抑えることが期待されています。