パーキンソン病治療剤「エクフィナ®」(一般名:サフィナミドメシル酸塩)韓国において承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、韓国子会社であるエーザイ・コリア・インクが、パーキンソン病治療剤「エクフィナ®」(一般名:サフィナミドメシル酸塩、以下サフィナミド)について、「運動症状の日内変動を有する特発性パーキンソン病患者に対するレボドパ含有製剤との併用療法」の適応で、韓国当局(韓国食品医薬品安全処)より承認を取得したことをお知らせします。韓国においては、2019年7月に新薬承認申請を行っており、本承認は、アジア(日本を除く)における最初の承認となります。

 

 本承認は、運動症状の日内変動を有するパーキンソン病患者様を対象に海外(韓国を含む)で実施された、レボドパ併用下においてサフィナミドを1日1回24週間経口投与したときの有効性・安全性をプラセボと比較した二重盲検臨床第Ⅲ相試験(SETTLE試験)等の成績に基づいています1

 SETTLE試験では、主要評価項目として投与24週後における1日平均オン時間(症状が抑えられている時間)のベースラインからの変化量について評価しました。サフィナミド群はプラセボ群に対して0.96時間(95%信頼区間: 0.56, 1.37、p<0.001)増加し、統計学的に有意なオン時間の延長を示しました。サフィナミド群で確認された主な副作用(上位3つ)は、ジスキネジア、悪心および傾眠でした。

 

 当社は、サフィナミドについて、Meiji Seikaファルマ株式会社(本社:東京都、以下 Meiji)と2017年3月に締結したライセンス契約に基づき、日本における独占的販売権とアジアにおける独占的開発・販売権を保有しています。日本においては、Meijiが2019年9月に製造販売承認を取得し、当社が同年11月に販売を開始しています。

 

 パーキンソン病の患者様数は、韓国で約15万人と推計されています。パーキンソン病は、既存の薬剤では十分に症状のコントロールができない場合があることから、新たな治療選択肢が必要とされており、韓国においては希少難治性疾患に指定されているアンメット・メディカル・ニーズの高い疾病です。

 当社は、「エクフィナ」をパーキンソン病の新たな治療選択肢として韓国の患者様にお届けするとともに、日本およびアジアにおけるパーキンソン病患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

 

以上

   

<参考資料>

1. 「エクフィナ」(一般名:サフィナミドメシル酸塩 以下、サフィナミド)について

 サフィナミドは、選択的なモノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害作用により、分泌されたドパミンの分解を抑制してドパミンの脳内濃度維持を助けます。また、ナトリウムイオンチャネル阻害作用を介したグルタミン酸放出抑制作用を有することから、本剤は、ドパミン作動性作用と非ドパミン作動性作用を併せもつ新たなパーキンソン病治療剤として期待されています。

 サフィナミドは、Newron Pharmaceuticals S.p.A.(本社:イタリア、ミラノ)が創製・開発し、2011年にMeijiとの間で日本およびアジアにおける独占的な開発、製造および販売に関するライセンスについて合意しています。当社は、2017年3月にMeijiと締結したライセンス契約に基づき、日本における本剤の独占的販売権とアジア*における独占的開発・販売権を保有します。サフィナミドは、「Xadago」の製品名で欧州(15カ国)、米国、オーストラリア等で販売されており、カナダでは「Onstryv」の製品名で販売されています。

 

*  韓国、台湾、ブルネイ、カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、シンガポール、香港、マカオ

 

2. 臨床第III相試験(SETTLE試験)について1

 SETTLE試験は、海外で実施されたプラセボ対照、二重盲検並行群間比較の臨床第Ⅲ相試験です。運動症状の日内変動を有するパーキンソン病患者様を対象に、レボドパ併用下においてサフィナミドを1日1回24週間経口投与したときの有効性および安全性をプラセボと比較しました。サフィナミド群では、50 mgから投与を開始し、忍容性に問題のない場合は、100 mgに増量しました。主要評価項目は、24週後における1日平均オン時間(症状が抑えられている時間)のベースラインからの変化量とし、サフィナミド群のプラセボ群に対する優越性を検証しました。主要評価項目について、サフィナミド群はプラセボ群に対して0.96時間(95%信頼区間: 0.56, 1.37、p<0.001)増加し、統計学的に有意なオン時間の延長を示しました。本試験の副作用発現率は、プラセボ群:27.6%、サフィナミド群:28.5%であり、サフィナミド群で確認された主な副作用(上位3つ)は、ジスキネジア、悪心および傾眠でした。

 

3. パーキンソン病について

 パーキンソン病は、ドパミン神経系の変性・脱落により、脳内の神経伝達物質であるドパミンが減少することで、手足の震え、筋肉の固縮、小刻みな歩行などの運動障害を生じる神経変性疾患です。韓国におけるパーキンソン病患者様数は約15万人と推計されています(社内推計)。アジアにおける患者様数は約300万人2、日本における患者様数は20万人と推定されています3。高齢化に伴い、患者様数は年々増加する傾向にあります4。パーキンソン病治療剤としては、脳内で不足したドパミンを補うレボドパが広く利用されます。しかし病気の進行に伴い、レボドパの効果持続時間が短くなり、次の服薬前にパーキンソン病の症状が現れることがあります(ウェアリング・オフ現象)。ウェアリング・オフ現象の改善には、レボドパと異なる作用機序の薬剤が併用されます。

 

1  Schapira AH et al. Assessment of Safety and Efficacy of Safinamide as a Levodopa Adjunct in Patients With Parkinson Disease and Motor Fluctuations: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2017;74(2):216-224

2  E Ray Dorsey et al. Global, regional, and national burden of Parkinson’s disease, 1990–2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016 Lancet Neurol. 2018;17:939–53

3  日本神経学会 パーキンソン病診療ガイドライン2018

4  難病情報センター http://www.nanbyou.or.jp/