第12回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)においてアルツハイマー病/認知症領域の開発品に関する最新データを発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2019年12月4日から7日まで米国カリフォルニア州サンディエゴで開催される第12回アルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer's Disease: CTAD)において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体BAN2401、オレキシン受容体拮抗剤レンボレキサントを含む当社のアルツハイマー病/認知症パイプライン、ならびに血液を用いたアルツハイマー病(AD)診断法に関する最新データについて、口頭発表3演題とポスター8演題の発表を行いますのでお知らせします。当社は、BAN2401について、バイオジェン・インク (本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)と共同で開発しています。また、血液を用いた簡便なAD診断法については、シスメックス株式会社(本社:兵庫県、以下 シスメックス)と共同で開発しています。

 

 BAN2401については、世界で初めて後期臨床試験として臨床症状および脳内Aβ蓄積の両エンドポイントで疾患修飾効果を示した臨床第Ⅱ相試験(201試験)の非盲検延長試験開始時の早期AD患者様の脳内Aβ蓄積減少の持続性について口頭発表します。また、現在進行中の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD:301試験)の試験デザインや進行状況に関する発表を行います。

 

 睡眠と覚醒を調整する薬剤として開発中のレンボレキサントについては、アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験(202試験)について、追加解析結果の発表を予定しています。

 

 シスメックスと共同開発している血液による簡便なAD診断法の創出については、シスメックスのタンパク測定プラットフォームである全自動免疫測定装置HISCL™シリーズを用いた自動化タンパク質アッセイシステムなどの最新データを発表します。

 

 当社は、アルツハイマー病/認知症領域分野における35年以上の創薬活動の経験を基盤に、包括的なアプローチによる創薬研究を通じて、認知症の予防と治癒の実現をめざしています。革新的な治療薬を一日も早く創出し、アンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

     

■ 口頭発表演題

※左右にスクロールできます

開発品・演題番号発表演題・予定日時(現地時間:太平洋標準時)
BAN2401
Session No. LB10
BAN2401投与終了後のアミロイド蓄積減少の持続性:早期アルツハイマー病患者様におけるアミロイド蓄積状態の201試験コア期と非盲検継続期の間での予備的比較
12月5日(木)11:15-11:30
エレンベセスタット
Session No. LB16
NeuraceqとTau PET tracer [18F]PI-2620を用いた、エレンベセスタット MISSION AD試験ベースライン時における脳内アミロイドとタウの関係
12月6日(金)8:30-8:45
BAN2401
(BioArctic社の発表)
Session No. OC29
BAN2401とアデュカヌマブのAβ種に対する結合活性の違い
12月7日(土)11:30-11:45

 

■ ポスター発表演題

※左右にスクロールできます

開発品/評価方法・ポスター番号発表演題・予定日時(現地時間:太平洋標準時)
レンボレキサント
P3
ネットワーク解析および機械学習法を用いたアルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害におけるレンボレキサントの有効性評価
12月4日(水)~12月5日(木)
エレンベセスタット
P24
認知機能タスクフォース:エレンベセスタットMISSION ADで早期アルツハイマー病患者様の認知機能スクリーニングの効率を改善する新規アプローチ
12月4日(水)~12月5日(木)
エレンベセスタット
P46
エレンベセスタットMISSION AD臨床第III相試験におけるアミロイド陽性被験者様の特徴
12月4日(水)~12月5日(木)
血液診断
P75
全自動イムノアッセイシステム(HISCL™シリーズ)で測定した血漿Aβ1-42/Aβ1-40比によるアミロイド病理の予測
12月4日(水)~12月5日(木)
血液診断
P81
免疫親和性法による濃縮とLC-MS / MSによる血漿アミロイドベータ測定の臨床的有用性
12月4日(水)~12月5日(木)
臨床評価
P136
アルツハイマー病コンポジットスコア(ADCOMS)を用いた早期アルツハイマー病の診断
12月6日(金)~12月7日(土)
エレンベセスタット
P149
エレンベセスタットグローバル臨床第III相試験MISSION ADにおける同程度のMMSEスコアを持つ早期アルツハイマー病患者様のアジアおよびアジア以外の国々の比較
12月6日(金)~12月7日(土)
BAN2401
P179
早期アルツハイマー病を対象としたBAN2401:18ヵ月間投与した際の安全性と有効性を検証することを目的とした、非盲検継続期を設けたプラセボ対照、二重盲検、並行群間比較試験
12月6日(金)~12月7日(土)

以上


<参考資料>

1. BAN2401について

 BAN2401は、BioArctic ABとエーザイの共同研究から創製された、アルツハイマー病(AD)に対するヒト化モノクローナル抗体です。ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有する可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去するモノクローナル抗体です。本抗体による治療アプローチは、疾患病理への作用と症状の進行抑制が期待されています。エーザイは、本抗体について、2007年12月にBioArctic ABとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。現在、早期ADを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)が進行中です。

 

2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関して、幅広い提携を行っています。抗Aβプロトフィブリル抗体BAN2401についてはエーザイ主導のもとで、抗Aβ抗体アデュカヌマブについてはバイオジェン主導のもとで、グローバルでの承認取得に向けた開発を進め、承認取得後は米国、欧州(EU)、日本といった主要市場で共同販促を行います。

 

3. レンボレキサントについて

 レンボレキサントは、エーザイ創製の新規低分子化合物で、脳内で覚醒に関与するオレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。レンボレキサントは、オレキシン1および2受容体双方を阻害しますが、ノンレム睡眠の抑制にも関与するオレキシン2受容体への親和性がより強く、結合が早いことから、速やかな入眠および十分な睡眠維持効果が期待されます。レンボレキサントは、臨床試験の結果から、原発性のみならず、うつ病などに併発する不眠障害への有効性が示唆されています。本剤は、不眠障害に係る適応で、米国(2018年12月)、日本(2019年3月)、カナダ(同年8月)において、それぞれ新薬承認申請を行っています。また、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験を行っています。

 

4. エーザイとシスメックスとの提携について

 エーザイとシスメックスは2016年2月に、認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約を締結しています。両社は、互いの技術・ナレッジを活用し、認知症の早期診断や治療法の選択、治療効果の定期的確認が可能な次世代診断薬の創出を目指します。

  HISCL™ (ヒスクル)はシスメックス株式会社の商標です。