「レンビマ®」(レンバチニブ)、中国において分化型甲状腺がんに係る適応追加申請が受理

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、当社創製の経口マルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、中国国家薬品監督管理局に新たに分化型甲状腺がんに係る適応追加申請を行い、受理されたことをお知らせします。本適応追加申請は、中国において、2018年9月に承認取得した肝細胞がんに係る適応に次ぐ2つ目の適応となります。

 

 今回の申請は、主にグローバルで実施した放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんを対象としたSELECT試験(303試験)1の結果に基づいています。SELECT試験において、「レンビマ」投与群はプラセボ投与群に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間 (progression free survival: PFS)を統計学的に有意に延長しました(p<0.001、「レンビマ」18.3カ月vsプラセボ3.6カ月(中央値)、ハザード比0.21(99%信頼区間 = 0.14-0.31))。中国においては、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験(308試験)を実施中ですが、SELECT試験の結果を用いることで、より早期の申請が可能となりました。

 

 中国では、毎年新たに約19万人が甲状腺がんと診断され、約8,600人が亡くなっていると推定されています2。甲状腺がんの多くは治療可能ですが、進行した甲状腺がんの治療選択肢は限られているため、未だアンメット・メディカル・ニーズが高い疾病の一つです。

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社は、「レンビマ」によるがん治療の可能性を引き続き追求し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

 

*「レンビマ」について、当社は、2018年3月にMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)とグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携契約を締結しています。

 

以上

  

<参考資料>  

1. 「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗腫瘍免疫活性をもたらします。また、作用機序に関する非臨床研究モデルで示されているとおり、がん微小環境における「レンビマ」と抗PD-1モノクローナル抗体による相乗作用の結果、「レンビマ」と抗PD-1モノクローナル抗体の併用による抗腫瘍活性は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法の抗腫瘍活性を上回ることが示されました。

 現在、「レンビマ」は、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州など55カ国以上、肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど50カ国以上、腎細胞がん(二次治療)に対する「エベロリムス」との併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど50カ国以上、さらに子宮内膜がんに対する「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法に係る適応で米国、オーストラリア、カナダの3カ国で承認を取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。

 

  1. 2. 甲状腺がんについて

 甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がんとして分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3~5%)、髄様がん(頻度:1~2%)があります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、これらの治療に適さない少数の患者様もいます。

 

  1. 3. SELECT試験について

 SELECT(Study of E7080 “LEnvatinib” in differentiated Cancer of the Thyroid)試験は、過去13カ月以内に画像診断により病勢進行が確認され、VEGFRを標的とする治療歴が1レジメン以内である放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんの患者様を対象に、「レンビマ」(24mg)またはプラセボを1日1回経口投与する(「レンビマ」投与:プラセボ投与 = 2:1)、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験として実施されました。本試験では、主要評価項目として両群の無増悪生存期間(progression free survival: PFS)について比較が行われ、また、副次評価項目として、奏効率(完全奏効率および部分奏効率の割合)、全生存期間および安全性が評価されました。本試験には欧州、米州および日本を含むアジア地域の100以上の施設が参加し、392人の患者様が登録されました。

 本試験の結果、「レンビマ」投与群はプラセボ投与群に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間を統計学的に有意に延長しました(p<0.001、「レンビマ」18.3カ月vsプラセボ3.6カ月(中央値)、ハザード比0.21(99%信頼区間 = 0.14-0.31))。また、「レンビマ」投与群の奏効までの期間の中央値は2.0カ月と投与開始から早期での効果を示しました。さらに「レンビマ」は、プラセボに対して統計学的に有意に高い奏効率(完全奏効および部分奏効の割合)を示しました(p<0.001、「レンビマ」64.8% vsプラセボ1.5%)。特に「レンビマ」投与群では、完全奏効が1.5%(4例)確認されました(プラセボ投与群では0例)。「レンビマ」投与群における主な副作用は、高血圧、下痢、疲労・無力症、食欲減退、体重減少、悪心でした。

 なお、中国において、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験(308試験)を実施中です。

 

4. エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国とカナダ以外ではMSD)は、「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における共同開発、共同販促を行います。

 併用療法については、既に実施している複数のがんを対象とした臨床試験に加え、6種のがんにおける11の適応取得を目的とした新たな臨床試験をLEAP臨床プログラム(LEnvatinib And Pembrolizumab)として実施します。また、LEAP臨床プログラムでは、さらに6種のがんを対象としたバスケット型試験も実施します。

 

「キイトルーダ」はMerck & Co., Inc. Kenilworth, NJ, USAの子会社であるMerck Sharp & Dohme Corpの登録商標です。

 

 

1 Schlumberger M, et al. Lenvatinib versus Placebo in Radioiodine-Refractory Thyroid Cancer. N. Engl. J. Med. 2015; 372, 621–630

2 GLOBOCAN2018: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2018. http://globocan.iarc.fr/