BAN2401について、早期アルツハイマー病を対象とした臨床第Ⅲ相試験を開始

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体BAN2401について、早期アルツハイマー病(AD)を対象としたグローバルな臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD/301試験)が開始されたことをお知らせします。BAN2401について、当社はバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、以下 バイオジェン)と共同開発を行っています。

 

 Clarity ADは、アミロイドの脳内蓄積が確認されたアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI due to AD)および軽度アルツハイマー病(総称して早期AD)患者様1,566人を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。臨床第Ⅱ相試験(201試験)結果に基づく規制当局とのミーティングを踏まえ、BAN2401の申請に必要な1本の臨床第Ⅲ相試験が開始されました。実薬群は、BAN2401 10 mg/kgバイウィークリー投与の1用量であり、被験者はプラセボ投与群または実薬群の1:1に割り付けられます。プライマリーエンドポイントは、ベースラインから投与18カ月までのCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の変化とし、キーセカンダリーエンドポイントとして、アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADCOMS(Alzheimer’s Disease Composite Score)およびADAS-cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale)のベースラインから投与18カ月までの変化が設定されています。

 

 当社は、世界的に大きな課題となっているアルツハイマー病に対する革新的な治療薬を一日も早く創出し、アンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

 

以上

<参考資料> 

1. BAN2401について

 BAN2401は、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アルツハイマー病に対するヒト化モノクローナル抗体です。アルツハイマー病を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有する可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去するモノクローナル抗体です。本抗体による治療アプローチは、疾患病理への作用と症状の進行抑制が期待されています。エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。また、2014年3月に、エーザイとバイオジェンは、本剤に関する共同開発・共同販促契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。

 

2. 臨床第Ⅱ相試験(201試験)について  

 本試験は、BAN2401の有効性及び最適投与レジメンをより効率的に見出すため、中間解析の結果によってより可能性の高い投与群への割付比率をアダプティブに変えるなどの試験途中のデザイン変更を自動的に可能とするベイジアン アダプティブ ランダム化デザインを用い、バイオマーカーによるアミロイド陽性を確認したプロドローマルおよび軽度アルツハイマー病(総称して早期アルツハイマー病)に対するBAN2401の安全性、忍容性、有効性を評価するプラセボ対照、二重盲検、並行群間比較臨床第Ⅱ相試験です。本試験では、プラセボと実薬5投与量群を用い、16回の早期成功を判断する中間解析、12カ月時点でのADCOMSに基づく解析(プライマリーエンドポイント)、18カ月時点での包括的な最終解析(セカンダリーエンドポイント)によって、BAN2401の有効性に関する評価と用量反応性の検討を行いました。実薬群では、2.5 mg/kgバイウィークリー(2週間に1回)(52人)、5 mg/kgマンスリー(月1回)(51人)、5 mg/kgバイウィークリー(92人)、10 mg/kgマンスリー(253人)、10 mg/kgバイウィークリー(161人)の5用量5群に割り付けられました。バイオマーカー評価として、アミロイドPETによる脳内Aβ蓄積、脳脊髄液中のAβ総量などを測定し、有効性評価(臨床)として、ADCOMS、CDR-SB、ADAS-cogを測定しました。

 201試験結果の詳細は、2018年7月に開催されたアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference: AAIC2018)および2018年10月に開催されたアルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer's Disease: CTAD2018)において発表しています。

 現在、本試験に登録されていた患者様を対象として、BAN2401最高用量(10 mg/kgバイウィークリー)を投与する非盲検継続試験を実施中です。

 

3. バイオアークティック(BioArctic AB.)について     

 バイオアークティックは、スウェーデンに拠点を置き、アルツハイマー病、パーキンソン病のような神経変性疾患の疾患修飾治療や信頼性の高いバイオマーカー・診断薬の開発にフォーカスしたバイオファーマです。また、同社は、完全脊髄損傷に対する治療法の開発も行っています。このようにバイオアークティックは、高いアンメット・メディカル・ニーズがある領域での革新的な治療の創出にフォーカスしています。バイオアークティックは、スウェーデンのウプサラ大学による革新的な研究に基づき、2003年に設立されました。大学との共同研究を重視するとともに、アルツハイマー病領域ではエーザイ、パーキンソン病領域ではAbbVieとの戦略的グローバルパートナーシップを形成しています。プロジェクトのポートフォリオは、グローバル企業とのパートナーシップにより資金提供されたプロジェクトとライセンスを企図した社内プロジェクトの組み合わせです。バイオアークティックは、Nasdaq Stockholm Mid Cap(STO:BIOA B)に上場しています。バイオアークティックに関する詳細については、www.bioarctic.comをご覧ください。