レンボレキサント、ピボタル臨床第Ⅲ相試験における有効性・安全性データについて米国睡眠学会のAdvances in Sleep and Circadian Scienceで発表患者様の主観評価による6カ月解析結果において、入眠および睡眠維持について有意な改善を示す

エーザイ株式会社
Purdue Pharma L.P.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とPurdue Pharma L.P.(本社:米国コネチカット州、President and CEO:Craig Landau、MD、以下 Purdue Pharma)は、このたび、睡眠覚醒障害のひとつである不眠障害の適応で開発中のレンボレキサントについて、長期の有効性および安全性評価を目的とする臨床第Ⅲ相試験(SUNRISE 2試験/303試験)の6カ月時点の解析結果について、2019年2月1日から4日まで米国フロリダ州クリアウォータービーチにて開催されている米国睡眠学会のAdvances in Sleep and Circadian Scienceにおいて発表したことをお知らせします。

SUNRISE 2試験は、入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその双方を伴う18歳から88歳の不眠障害患者様949人(うち約28%は65歳以上)を対象にグローバルで実施された、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、12カ月間の臨床第Ⅲ相試験です。最初の6カ月は、レンボレキサント5mg、10mgまたはプラセボを投与し、睡眠潜時(主要評価項目)、睡眠効率および中途覚醒時間(睡眠維持効果、副次評価項目)について、患者様の主観評価による電子睡眠日誌を用いて評価しました。

本試験の6カ月時点の解析結果において、レンボレキサントは5mg群、10mg群のいずれにおいても、主要評価項目および主な副次評価項目について、プラセボ群と比較して統計学的に有意な改善が確認されました。各評価項目の結果は以下の通りです。 
主要評価項目 
●主観的睡眠潜時(就床から入眠までに要した時間)のベースラインからの短縮時間(中央値)について、プラセボ群:11.43分に対し、レンボレキサント5mg群:21.81分、レンボレキサント10mg群:28.21分であり、統計学的に有意な短縮が確認されました(いずれの用量群もp<0.0001)。 
主な副次評価項目 
●主観的睡眠効率(就床時間に対する全睡眠時間の割合)のベースラインからの変化(平均値*)について、プラセボ群:9.64%に対し、レンボレキサント5mg群:14.19%(p=0.0001)、レンボレキサント10mg群:14.31%(p<0.0001)であり、統計学的に有意な改善が確認されました。 
●主観的中途覚醒時間のベースラインからの短縮時間(平均値*)について、プラセボ群:29.28分に対し、レンボレキサント5mg群:46.75分(p=0.0005)、レンボレキサント10mg群:41.95分(p=0.0105)であり、統計学的に有意な短縮が確認されました。
 *最小二乗平均

確認された有害事象のほとんどは軽度から中等度でしたが、重篤な有害事象の発現率は、レンボレキサント5mg群:2.2%、レンボレキサント10mg群:2.9%およびプラセボ群:1.6%であり、このうち薬剤投与に関連して発現したと判断されたのは1例のみでした。 
 また、レンボレキサントのいずれかの用量群において発現率が5%を超え、かつプラセボ群よりも高かった有害事象は、傾眠、頭痛およびインフルエンザでした。有害事象による試験中止は、レンボレキサント5mg群(4.1%)はプラセボ群(3.8%)と同等でしたが、レンボレキサント10mg群はより高頻度(8.3%)でした。

エーザイ ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーである Lynn Kramer, M.D.は、「今回の解析結果から、不眠障害治療薬としてレンボレキサントの開発を進める上で要となる、新たな臨床知見を得ました。今後の学会等で12カ月の解析結果について発表することを楽しみにしています。患者様が夜間にぐっすりと眠り、翌朝にすっきりと目覚められる薬剤をお届けすることは、私たちの長年の願いです」と述べています。

SUNRISE 2試験は、エーザイとPurdue Pharmaが不眠障害を対象に、レンボレキサントの安全性および有効性を評価した2つのピボタル臨床第Ⅲ相試験のうちの1つです。これらの試験結果に基づき、不眠障害の適応で、2018年12月27日に米国食品医薬品局(FDA)に新薬承認申請を提出しています。日本では2018年度中に申請予定です。

Purdue PharmaのHead of Research & Development and Regulatory AffairsであるJohn Renger, Ph.Dは、「今回のSUNRISE 2試験の6カ月時点の解析結果は大変興味深く、入眠と睡眠維持の両方について、患者様の主観評価による改善を示すものです。堅牢な臨床第Ⅲ相試験であるSUNRISE 2試験において、より寝つき良く、ぐっすりと眠ることができるというレンボレキサントの効果を患者様が主観的に実感できるという、期待すべき結果が確認されました」と述べています。

レンボレキサントは、オレキシン神経伝達に作用し、外部刺激による目覚めには影響することなく、覚醒を制御することによって睡眠と覚醒を調整すると考えられており、エーザイとPurdue Pharmaは、不眠障害をはじめとする複数の睡眠覚醒障害治療薬としての開発を共同で行っています。不眠障害に係る適応のほか、軽度、中等度アルツハイマー病/認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験を実施しています。
 進行中の臨床試験については、clinicaltrials.govをご覧ください。

両社は、新たなアンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

<参考資料>

1. レンボレキサント(開発コード:E2006)について

 レンボレキサント (開発コード:E2006)は、エーザイ創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられています。

 

2. SUNRISE 2試験(303試験)について1 

 SUNRISE 2試験は、グローバルで実施された、18歳から88歳の不眠障害患者様949人を対象とした、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、12カ月間の臨床第Ⅲ相試験です。SUNRISE 2試験は、2週間のプラセボ投与期間を含む最長35日間の観察期、および6カ月のプラセボ対照投与期間と6カ月の実薬のみの投与期間と2週間のフォローアップ期間からなる治療期から構成されます。本試験では、患者様の自宅において、毎晩の就寝直前にレンボレキサント 5mg、10mgまたはプラセボの錠剤が投与されました。また、最初の6カ月間にプラセボが投与された患者様は、後半6カ月はレキボレキサント 5mgまたは10mgが投与されました。最初に実薬を投与された患者様は、後半6カ月においても継続して実薬が投与されました。

 主要評価項目として、プラセボ対照の6カ月投与後における主観評価による睡眠潜時を、レンボレキサント両投与群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。主な副次評価項目としては、6カ月投与後の主観評価による睡眠効率および中途覚醒時間について、レンボレキサント両群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。

   

3. 不眠障害について

 複数の人口調査によると、全世界において、以前考えられていたより多くの睡眠障害の患者様が報告されています2。不眠障害はもっとも一般的な睡眠障害であり、全世界で成人の約30%の方が不眠障害の症状を有しています2、3。不眠障害は、睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、入眠困難、睡眠維持またはその両方に苦しむことが特徴であり、疲労、集中困難、易刺激性を引き起こす可能性があります4、5

 よく眠ることは、脳を含めた健康にとても重要です。睡眠不足は、高血圧、事故によるけが、糖尿病、肥満、うつ病、心臓発作、脳卒中、認知症のリスクを増やすことに加え、気分や行動に対する悪影響など、幅広い健康への影響との関連性が示唆されています4、6

 動物および人での試験結果によると、睡眠は病気のリスク因子、多くの病気、死亡率との関連性が示されており7、最適な睡眠時間は7-8時間と言われています8

 不眠障害について、女性は男性に比べて約1.4倍罹患率が高いとの報告もあります9。高齢者も、不眠障害の罹患率が高いことが知られています。老化による、睡眠の乱れ、頻繁な起床、早朝の起床などによる睡眠パターンの変化により、不眠障害に至ることがあります10

 

4. エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

5. Purdue Pharma L.P.について

 Purdue Pharma L.P.は、医療従事者、患者様および介護者の方々の日々進化するニーズを満たす医薬品の開発・提供に取り組んでいます。当社は医師主導で設立および運営しており、高品質の医薬品を提供することに加え、患者様にイノベーションをお届けするべく国、地域、地方に貢献することをめざしています。株式非公開企業である当社は、独自の研究開発と戦略的パートナーシップを通じて、新薬および新技術のパイプラインの充足を追求します。

         

  1. Eisai Inc. A long-term multicenter, randomized, double-blind, controlled, parallel-group study of the safety and efficacy of lemborexant in subjects with insomnia disorder (E2006-G000-303). (Clinicaltrials.gov Identifier NCT02952820). 2018. Unpublished data on file.
  2. Ferrie JE, et al. Sleep epidemiology – a rapidly growing field. Int J Epidemiol. 2011;40(6):1431–1437.
  3. Roth T. Insomnia: definition, prevalence, etiology and consequences. J Clin Sleep Med. 2007;3(5 Suppl):S7–S10.
  4. Institute of Medicine. Sleep disorders and sleep deprivation: An unmet public health problem. Washington, DC: National Academies Press. 2006.
  5. Ohayon MM, et al. Epidemiology of insomnia: what we know and what we still need to learn. Sleep Med Rev. 2002;6(2):97-111.
  6. Pase MP, Himali JJ, Grima NA, et al. Sleep architecture and the risk of incident dementia in the community. Neurology. 2017;89(12):1244-1250.
  7. 7 Cappuccio FP et al. Sleep and cardio-metabolic disease. Curr Cardiol Rep. 2017;19:110.
  8. 8 Cappuccio FP et al. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Sleep. 2010;33(5):585-592.
  9. 9 Roth T, et al. Prevalence and perceived health associated with insomnia based on DSM-IV-TR; International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, tenth revision; and Research Diagnostic Criteria/International Classification of Sleep Disorders, second edition criteria: results from the America Insomnia Survey. Biol Psychiatry. 2011;69:592– 600.
  10. 10 Crowley, K. Sleep and sleep disorders in older adults. Neuropsychol Rev. 2011;21(1):41-53.