エーザイとPurdue Pharma、「レンボレキサント」の不眠障害を対象とした2つめのピボタル臨床第Ⅲ相試験(SUNRISE 2試験)において良好なトップライン結果を取得長期の有効性・安全性評価において、主要評価項目ならびに副次評価項目を達成

エーザイ株式会社
Purdue Pharma L.P.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とPurdue Pharma L.P.(本社:米国コネチカット州、President and CEO:Craig Landau、以下 Purdue Pharma)は、このたび、睡眠と覚醒を調整する薬剤として開発中のレンボレキサントに関して、長期の有効性および安全性評価を目的とする臨床第Ⅲ相試験(SUNRISE 2試験/303試験)のプラセボを対照とした6カ月時点の解析において、良好なトップライン結果を得たことをお知らせします。なお、本試験は、最終の12カ月まで継続し、詳細な解析結果は、2019年内の学会等で発表する予定です。

 本試験は、入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその双方を伴う18歳から88歳の不眠障害患者様900人以上を対象に、就床から入眠までに要した時間(睡眠潜時:主要評価項目)、睡眠効率および中途覚醒時間(副次評価項目)について、プラセボを対照として、患者様の主観評価による睡眠日誌を用いて評価しました。
 本試験の結果、レンボレキサントは、事前に規定した有効性に関する主要評価項目およびすべての副次評価項目を達成し、プラセボ対照の6カ月時点において、レンボレキサント(5mg、10mg)投与群は、入眠および睡眠の維持について、プラセボ投与群と比較して、統計学的に有意な優越性が確認されました。さらに、レンボレキサント(5mg、10mg)投与群は、不眠重症度質問票を用いて評価した日中の機能についても、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な改善が確認されました。
 安全性について、発現率がレンボレキサント投与群で5%を超えかつプラセボ投与群よりも高かった有害事象は、傾眠、頭痛、インフルエンザでした。有害事象による試験中止は、レンボレキサント5mg投与群はプラセボ投与群と同等の頻度でしたが、レンボレキサント10mg投与群はより高頻度でした。

 レンボレキサントの臨床試験における Principal Investigator で National Sleep Foundation の 前 Chairman of the Board である Russell Rosenberg, Ph.D, D.ABSM は、「不眠の問題を抱える患者様を約30年間治療してきた臨床医および研究者として、不眠の治療は、患者様が速やかにぐっすり眠れ、すっきりと目覚めることができ、かつ日中の機能低下や長期投与による効果減弱の課題から解放されて、初めて治療が成功したと言えます。今回のSUNRISE 2試験の速報結果は、慢性的な不眠に悩まれている多くの患者様の新たな治療の選択肢につながるものと考えます。」と述べています。

 今回のSUNRISE 2試験の結果は、本年3月に発表した、ゾルピデム徐放性製剤に対する優越性を 評価した臨床第Ⅲ相試験 (SUNRISE 1 試験/304試験)、夜間覚醒時および翌朝起床後の姿勢安定性(転倒リスクの予測因子)や翌朝の自動車運転能力について評価した主要な安全性試験とともに、レンボレキサントの有効性と安全性に関する知見をさらに強化するものです。

 エーザイニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーである Lynn Kramer, M.D.は、「レンボレキサントを通じて、不眠障害をはじめとする睡眠覚醒障害に悩む多くの患者様に、自然な入眠とその睡眠の維持に加え、長期間にわたって効果が持続する、睡眠と覚醒を調整する薬剤をお届けすることができると考えています。今回のSUNRISE 2試験の速報結果では、レンボレキサントは、入眠と睡眠維持について、投与6カ月間にわたる有効性が確認されました。我々は、これらの結果をもとに、新たな治療選択肢を必要とする睡眠覚醒障害、不眠障害の患者様にレンボレキサントを一日も早くお届けできるよう、当局への申請に向けた準備を進めてまいります」と述べています。

 レンボレキサントは、患者様が眠れないという根本原因に直接作用すると考えられています。オレキシン神経伝達に作用するレンボレキサントは、外部刺激による覚醒能力を減退することなく、睡眠と覚醒を調整します。

 Purdue PharmaのChief Medical OfficerであるMarcelo Bigal, M.D.,Ph.Dは、「睡眠覚醒の調整機能は不眠障害の患者様をはじめ人々の健康維持に重要であり、私たちはエーザイとのパートナーシップのもと、睡眠覚醒障害に悩む様々な患者様に貢献できるようレンボレキサントの価値を探求し続けていきます」と述べています。

 エーザイ創製のレンボレキサントは、エーザイとPurdue Pharmaが共同開発を行っています。進行中の臨床試験については、clinicaltrials.govをご覧ください。

 以上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

<参考資料>

1. レンボレキサントについて

 レンボレキサントは、エーザイ創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。不眠障害では、オレキシンが関与する睡眠・覚醒の制御機構が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により自然な睡眠の誘発や睡眠維持をはかることができる可能性があります。

 エーザイとPurdue Pharmaはレンボレキサントを不眠障害をはじめとする睡眠覚醒障害治療剤としての開発を進めています。加えて、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害を対象とした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

 

2. SUNRISE 2 試験(303試験)について1

 SUNRISE 2試験は、グローバルで実施された、18歳から88歳の不眠障害患者様971人の成人男女を対象とした、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、12カ月間の臨床第Ⅲ相試験です(スクリーニングおよび2週間のプラセボ投与期間、52週間の投与期間、2週間のフォローアップ期間を含む)。本試験では、最初の6カ月間は、患者様の自宅において、毎晩の就寝直前に、レンボレキサント 5mg、10mgまたはプラセボの錠剤が投与されました。主要評価項目として、プラセボ対照の6カ月投与後における主観評価による睡眠潜時を、レンボレキサント両投与群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。主な副次評価項目としては、プラセボ群との比較におけるレンボレキサント両群の投与6カ月後の主観評価による睡眠効率および中途覚醒時間を評価しました。

 

3. 睡眠障害について

 人口調査によると、全世界において、予想より多くの睡眠障害の患者様が報告されています2。不眠障害は、入眠困難、睡眠維持またはその両方に苦しむことが特徴です。睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、疲労、集中困難、そして易刺激性を引き起こす可能性があります3,4。不眠障害はもっとも一般的な睡眠障害であり、約10%の方が不眠障害の症状を有しています2,3

 よい睡眠は、脳を含む全身の健康維持に不可欠です。慢性的な睡眠不足は、高血圧、糖尿病、肥満、うつ病、心臓発作、脳卒中のみならず、気分や行動にも悪影響を含む、広い範囲での健康への影響との関連性が示唆されています4,5

動物および人での試験結果によると、睡眠と炎症マーカーの間には関連性がある事が示唆されています2,6。また、睡眠と死亡率、多くの病気、病気のリスク因子に関しても、7-8時間の最適な睡眠時間と関連があると言われています2,6。不眠症について、女性は男性に比べて、約1.4倍罹患率が高いとの報告もあります7

 高齢者に関しても、不眠症の罹患率が高いことが知られています。老化による、睡眠の乱れ、頻繁な起床、早朝の起床などによる睡眠パターンの変化により、不眠症に至ることがあります8

 

4. エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、本社を日本に置く研究開発型グローバル製薬企業です。患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「がん」「神経領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 当社はグローバル製薬企業として世界の患者様へ貢献することを使命としており、開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

5. Purdue Pharma L.P.について

 Purdue Pharma L.P.とその米国における関連会社は、コネチカット州スタンフォード市に本社を置く、株式非上場企業です。Purdue Pharmaは、患者様とプロバイダーに、革新的な医薬品を提供することを目的とするネットワーク関連企業の一翼を担っています。当社のリーダーシップおよび従業員は、医療や生活にプラスの影響を与える高品質な製品や教育リソースの提供を通じて、医療従事者、患者様および介護者の方々に貢献することをめざしています。Purdue Pharmaの詳細情報は、http://www.purduepharma.com/をご覧ください。

         

 

  1. 1 Eisai Inc. Long-term study of lemborexant in insomnia disorder (E2006-G000-303). Available from https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02952820. NLM identifier: NCT02952820.

    2 Ferrie JE, et al. Sleep epidemiology – a rapidly growing field. Int J Epidemiol. 2011;40(6):1431–1437.

    Ohayon MM, et al. Epidemiology of insomnia: what we know and what we still need to learn. Sleep Med Rev. 2002;6(2):97-111.

    4 Institute of Medicine. Sleep disorders and sleep deprivation: An unmet public health problem. Washington, DC: National Academies Press. 2006.

    5 Pase MP, Himali JJ, Grima NA, et al. Sleep architecture and the risk of incident dementia in the community. Neurology. 2017;89(12):1244-1250.

    6 Trenell MI, et al. Sleep and metabolic control: waking to a problem? Clin Exp Pharmacol Physiol. 2007;34:1-9.

    7 Zhang B, Wing, YK. Sex differences in insomnia: a meta-analysis. Sleep. 2006;29(1):85-93.

    8 Ohayon MM, et al. Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals: developing normative sleep values across the human lifespan. Sleep. 2004;27:1255-1273.

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