抗てんかん剤「Fycompa®」米国FDAより小児てんかんの部分発作に係る承認を新たに取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、米国子会社のエーザイ・インクが、自社創製の抗てんかん剤 「Fycompa®」(一般名:ペランパネル、日本製品名「フィコンパ®」)について、米国食品医薬品局(FDA)より、4歳以上の小児てんかん患者様の部分発作に係る承認を取得したことをお知らせします。本剤は、FDAより優先審査品目の指定を受けており、申請から約6カ月で承認を取得しました。

 

 今回新たに承認を取得したのは、「Fycompa」の「4歳以上の小児てんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法」に関する適応です。本承認は、小児てんかんの患者様を対象とした臨床第Ⅲ相試験(311試験)の中間解析結果および臨床第Ⅱ相試験(232試験)の結果に基づくものです。両試験において、「Fycompa」の安全性および有効性が小児てんかんの患者様でも同様に得られることが確認されました。

 

 「Fycompa」は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)ならびに強直間代発作に対する併用療法として、米国を含む世界各国で承認を取得しています。また、米国では、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法での承認も取得しています。今回の承認により、米国において、4歳から11歳までの部分発作(二次性全般化発作を含む)を有する小児てんかん患者様に対しても、「Fycompa」について単剤療法を含む新たな治療選択肢としてお届けすることが可能となりました。

 

 米国のてんかん患者様数は、総人口の1.2%にあたる約340万人(小児約47万人、成人約300万人)と報告されています1。てんかんは、年齢層に関係なく発症する可能性がありますが、特に小児と高齢者で発症率が高いといわれています。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず2、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 

 「Fycompa」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤であり、1日1回経口投与の錠剤です。また、米国では経口懸濁液の承認を取得し、販売しています。本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を高選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制します。「Fycompa」は、部分てんかんに係る併用療法の適応で、2012年に最初の承認を取得して以降、その後承認を得た全ての適応を通じて55カ国以上20万人を超える患者様に処方されています。

 

 当社は、てんかんを含む神経領域を重点疾患領域と位置づけており、「Fycompa」をグローバルに提供することで、より多くの患者様に発作フリー(seizure freedom)をお届けする使命を追求し、てんかんの患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

<参考資料> 


1.  「Fycompa」(一般名:ペランパネル、日本製品名「フィコンパ」)について

 「Fycompa」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。「Fycompa」は1日1回就寝前に経口投与するタイプの錠剤です。さらに、米国では経口懸濁液の承認を取得し、販売しています。

 本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は、全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど50カ国以上で承認を取得しています。

 

 米国での「Fycompa」の重要な安全性情報を含む本剤に関する詳細はウェブサイトをご参照ください。

    https://fycompa.com/

 

2. 311試験の概要

 311試験は、グローバル(米国、欧州、日本、アジア)で実施された、コントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかん患者様(4 歳以上12 歳未満)約160人を対象とする、多施設共同、非盲検、単群試験です(ただし日本においては、部分発作の患者様のみを対象)。他剤併用時における「Fycompa」経口懸濁液の安全性、忍容性および暴露量と有効性の関係を評価しました。

 「Fycompa」を1日1回2~16mgまで経口にて漸増投与し、23週間の治療期終了後、継続期にて長期の安全性を確認しました。なお、日本では部分発作を有する小児てんかん患者様を対象とし、「Fycompa」を1日1回2~12mgまで経口にて漸増投与しました。311試験の中間解析時点で認められた有害事象(頻度10%以上)は、傾眠、鼻咽頭炎、浮動性めまい、易刺激性でした。

 

3. 232試験の概要

 232試験は、グローバル(米国、欧州)で実施された、小児てんかん患者様(2 歳以上12 歳未満)50人を対象とする、多施設共同、非盲検、継続投与試験です。他剤併用時における「Fycompa」経口懸濁液の薬物動態、安全性、忍容性および有効性を評価しました。「Fycompa」を1日1回0.015mg/kgから最大0.18mg/kgまで経口にて漸増投与し、11週間の治療期終了後、継続期(41週間)にて長期の安全性を確認しました。232試験で認められた有害事象(頻度10%以上)は、発熱、疲労、嘔吐、易刺激性、傾眠、浮動性めまい、上気道感染症でした。

 

4. てんかんについて

 てんかんの患者様数は、米国で約340万人、日本で約100万人、欧州で約600万人、中国で約900万人、世界中で約6,000万人などの報告があります。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず2、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約 4割を占める全般てんかんに大別されます。部分てんかんの発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般てんかんの発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

 

1 Matthew M, et al. “National and State Estimates of the Numbers of Adults and Children with Active Epilepsy — United States, 2015” MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2017; 66: 821–825

2 “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed May 24, 2016, http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109